「ベトナムに輸出する貨物だけどFTA関税率って何%?」
「インドネシアは二つのFTAがあるけどどっちが関税率が低いの?」
「タイとマレーシアの原産地規則はどっちが緩いの?」
このような問いに対し即座に回答を出すのは困難ですが
今回紹介するツールはこの問いに対する情報を瞬時に表示してくれます。
目次
RULES OF ORIGIN FACILITATOR
基本的に輸出先でのFTA関税率を調べるには以下の手順が必要です。
1,課税対象となる貨物のHSコードを特定
2,輸出国と輸入国の間にFTAが存在するかどうか
3,相手国での関税率、FTA関税率、原産地規則を協定文から確認
4,更に別のFTAが存在するかどうかを確認
5,別のFTAがあればどちらが関税率、原産地規則において有利か検討
という非常に複雑な調査を要します。
こういった調査にかかる時間を大幅に短縮してくれるのが
RULES OF ORIGIN FACILITATORというツールです。
WTO(世界税関機構)とWTOとITCの3つの機関が合同で開発した
関税削減の為のツールです。
上記画面は日本がタイから鳥卵(HS0408.11)を輸入する場合は
どの協定が使えて関税率は何%になるかを一覧表示しています。
教示してくれる情報
このツールには世界中のFTA協定文が収録されており、
HSコードをベースに以下の情報を一瞬で抽出する事ができます。
■関税率(基本,WTO税率)
■一般特恵関税
■FTA/EPA関税率
■原産地規則
■各条文へのリンク
■その他関連情報
また、Self-assessment Toolという機能が追加される予定で、
特定の貨物が本当に特恵関税適用対象になるかどうかをもう少し
詳しい視点から確認できるようになるそうです。
何に役立つのか
便利な点は複数の国の情報をまとめて出力できるので
例えば以下のような場合に役に立ちます。
〇A国とB国からの輸出先で両方のFTA関税率を比較検討したい場合
〇C国とD国間での貿易ではどの(いくつの)FTA協定が使えるのか
〇E国とF国ではどちらの原産地規則がクリアしやすいか
などの情報を横一列に並べて様々な情報を比較する事ができます。
協定別に関税率比較
以下の画面はHSコード210690の品目をタイからマレーシアに
輸出する場合に使えるFTAの協定を表示しています。
AANZFTAを利用すればFTA関税率は20%から13%に下げる事ができる
という事がわかりますが、
もう一方のAFTA(Regional Froup ASEAN)のFTAでは
関税率が20%から0%となっているのでより安く輸出できる事がわかります。
同じ国から同じ国に輸出していても使用するFTAが違うと税率も変わります。
この例ではもし何も知らずにAANZFTAを使用し続けると損害となる危険性があります。
原産地規則が変わらず税率だけが変化するのであれば、
関税率の安い協定を使用したほうが良いのは言うまでもありません。
(原産地証明書のフォームが変わる程度の変化で済むのであれば)
こういった事に気づくことができるのもRULES OF ORIGIN FACILITATORの
良いところです。
協定別に原産地規則比較
以下の例は複数の国からマレーシアに輸出した場合のFTA関税率適用条件となる
原産地規則の比較です。
輸出する国によって原産地規則が変わる事も良くあります。
この例の場合ASEAN-KoreaFTAを利用した場合のマレーシア原産地規則は
少々厳しめですが他2つの原産地規則は優しめだという事が一覧からわかります。
(関税率は別として)
このようにしてどの国から一次製品(原料)を調達すれば輸出先での原産地規則を
満たしやすいかという事を検討する事ができます。
利用方法
利用方法はとてもシンプルです。
トップページ左側にあるメニューに3つの項目を入力するだけです。
EXPORT FROMには輸出国名をリストから選択します。
輸出国は複数選択する事が可能です。
次にIMPORT TOに輸入国名をリストから選択します。
輸入国は一度に一つだけ選択する事ができます。
最後にPRODUCT NAME OR HS CODEで
該当貨物の名称かHSコードを6桁指定で入力します。
最後にSERCHを押せば検索結果が表示されます。
利用上の注意
RULES OF ORIGIN FACILITATORの良いポイントを紹介しましたが
全世界のFTA/EPAの協定文、関税率、原産地規則を一つのプログラムに
まとめるというのは非常に複雑かつ困難な作業であり、
正確に全てを把握しているのかというと実際はまだ発展中かと思う部分もあります。
実際にいくつかのHSを指定して各国のFTA/EPAを調べてみましたが
実際の協定文にある項目が欠けている物もいくつか確認できましたので
このツールだけで全てを決定するというのはお勧めできません。
ネット上に無数に広がるFTA/EPAのスパゲッティボウル状態の協定文を
横断的に確認した上で最終的にはご自身の目で各協定文を確認し、
輸出先の税関から事前教示を書面で発行してもらう事を強くお勧めします。
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