世界各国の税関が通関手続きにブロックチェーンを使う方針にあります
通関手続きにブロックチェーン技術を使用する事によって
得られるメリットを紹介します。
目次
情報の共有
輸出者、輸入者、船社、銀行、倉庫、税関、空港、監査等
流通に係る全ての関係者間にて正確な情報を共有する事が可能
中間管理者が不要
貿易取引では非常に多くの中間管理者(仲介者)を要します。
例えば税関、経済産業省、厚生省、農林水産省、特許庁などの政府機関や
銀行、船社、生産者、加工者、運送会社等様々です。
こういった中間管理者が多く存在する事によって一つの取引が
非常に複雑になり、コストも発生し、情報漏洩のリスクもあります。
他にも貨物の所有権証明や決済の有無、事実証明、知的財産権の証明
許可、承認、ライセンス、原産地証明の信頼性の管理等
貿易取引には大きな障害がいくつもあります。
これらを解決する技術がブロックチェーンです。
以下の動画2つが非常にわかりやすかったのでご参考にしてください。
接続障害に強い
日本の通関システムはNACCSによって行われ
流通に係る機関、関係者に情報が共有されております。
この形態はNACCSセンターが各情報の中間管理者となっておりますが
ブロックチェーン技術の分散台帳システムは
複数の関係者によって過去の情報から未来の情報に繋げていく形になり、
より強固な情報共有が可能になるでしょう。
そしてブロックチェーンはP2Pという技術を使用する事から
接続障害のトラブルはほぼ皆無と言えます。
NACCSは過去に大規模なサーバーダウンが起こしています。
2010年12月10日(金)15時48分頃から19時56分に
かけて約4時間全国的な原因不明のNACCS接続障害が起こりました。
動かさなくてはならない貨物が山ほどある中で
NACCSサーバーが完全に接続不可となった事から
当事者、荷主等貨物を動かせない方は一時パニック状態になりました。
多くの通関士、荷主、もちろん税関にも多大な影響を与えました
当時を振り返ると中央サーバーに依存する貿易システムに恐怖しました。
ブロックチェーン技術は分散台帳でデータ管理を行っておりますので
NACCSのシステムとブロックチェーンが連携する事によって
今までとは異なる安全なシステムを確立できるかもしれません。
公開鍵暗号技術による情報の保護
ブロックチェーン技術は強力な暗号システムを使用する為
情報の漏洩の危険性が少ないと考えられております。
通関に使用する書類等もブロックチェーンに組み込む事によって
公開鍵暗号技術により安全に運用されます。
トレーシング
輸出入貨物の原産地規則を満たすかどうかの確認に
トレーシングという作業があります。
これは輸出者が一次製品をいつ、どこから、いくらで調達したか等
を詳しく遡って調べる必要があり、
検認や税関からの確認等で膨大な作業を要求される事があります
当然これらは取引前に確認する必要がありますが
その複雑さ故、後から調べなおす事が困難になる場合が多いです。
ブロックチェーンであればこういったトレーシングも
正確に再調査する事が可能です。
費用
決済費用、書類発行のコスト、信用状等のコスト等
様々な分野でのコストダウンが可能
スピード
B/L、原産地証明書等の書類の発行から輸出先への到達に
数日から10日ほどかかるのが現状のようですが
ブロックチェーンであればこういった原本を要する書類も
信頼性が高い事から電子媒体での処理が可能になります。
この他にも多くのメリットがありますが
導入に至るまでにはまだ乗り越えなければいけない課題もあります。
こういった技術は数年後には実現可能になるかと思いますので
今後ブロックチェーンに関する情報も発信していこうと思います。
小澤 太佑 says
ブロックチェーン技術の応用により
例えばBOPビジネスで途上国から日本へ製品を輸送する際に、関税などの点検を今よりスムーズに行えるということでしょうか。
(今では、輸出物の確認の為に関税で製品がストップしてしまい、輸入に時間がかかってしまうケースがある)
わかりづらくて申し訳ございません、よろしくお願い致します。
河副太智 says
コメントありがとうございます。
現在多くの国でブロックチェーン技術を利用して通関にかかる時間を短縮するべく
様々な実証が行われております。
貿易と関税6月号でブロックチェーン技術と貿易円滑化についての解説があり、そこでIoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業の概要が記載されておりますので宜しければご覧になってみてください。
BOPビジネスにおいてどのような貨物を輸出しているかにもよりますが、法令順守の確認においては
今までのような書面やPDF等での確認よりもずっと早く効率的で正確なデータのやり取りができ、
現物確認作業等の手間も減少するのではないかと考えます。
実用化まではまだ時間がかかるかと思いますが、着実に実現に向かっていると思います。
河副