CTSHとは Change in Tariff Sub Headingの略です。
前回解説した関税分類変更基準(CTC)の一つで
非特恵受益国の原料のHSコードと
特恵受益国の完成品のHSコードの頭6桁が変更する加工が
行われれば特恵受益国の生産品として
特恵関税の対象貨物として扱われます。
※経済産業省セミナースライドより引用
上記の例では日本が締約国へ自動車用シートを輸出するケースです。
締約国で完成する「自動車シート」のHSコードは9401.20であり
A国から調達する「革製自動車部品」のHSコードは9401.90となります。
自動車用のシートの一部には日本産の部品が含まれますが
これは締約国である日本で調達した物ですので
品目別分類規則を考慮する必要はありません。
そしてA国から調達した原料は日本で製品になりHSコードが変化します。
9401.90から9401.20への変化はHSの頭6桁が変更となっております。
これによりCTSHが満たされた貨物という事になりますので
第三国の原料が使われていたとしても
全て締約国である日本で作られたものとみなされ、
輸出先の国での輸入者は特恵関税適用対象の貨物となります。
今回のようなHSコードの号(Sub Heading)の変更が必要という事は
指定された加工の条件が一番易しいという事になります。
例:ヘッドフォンの場合
日タイEPAにおいてタイ側での輸入時にヘッドフォン(HS:851830)の
関税削減が可能かどうかを検討してみます。
日タイEPAの原産地規則を確認すると「第8518.10号から第8518.50号まで
の各号の産品への当該各号以外の号の材料からの変更」とある事から
非原産材料を使用した場合はCTSH(HS6桁変更)ルールを満たす必要が
あります。
この場合、ヘッドフォンの部品(HS:8519.90)を非締約国から調達してヘッ
ドフォン(HS:851830)を日本にて製造した場合に輸出先であるタイ側で関
税削減が可能かどうかが問題になります。
日タイEPAにおけるヘッドフォンの品目原産地規則はCTSH(号の変更)
となっている為、非原産材料と完成品であるヘッドフォンのHSコード
の頭6桁が異なればよいという事になる為、それぞれのHSコードを比
較してみます。
ヘッドフォン :8519.90
ヘッドフォン部品:8518.30
上記2点を比較するとHSコードを6桁で区切った場合に90と30が異なっ
ているのがわかります。これによって締約国内にて十分な加工が行われ
たとみなされ、非締約国から調達したヘッドフォン部品を使用してヘッ
ドフォン本体を日本にて製造した場合は日タイEPAの品目別原産地規則
を満たし、タイ側で関税削減の対象となり得ます。