輸入においても輸出先国でも原産地規則においてはHSコードの選定
は最も重要なものです。
万が一HSコードの選定を誤って原産地証明書を取得した場合
予想外の関税を支払わされる羽目になります。
そこで輸出者等原産地証明書作成者はHSの選定については
慎重にならざるを得ません。
しかし、多くの輸出者は自身で正確なHSコードを選定するのは
非常に困難かと思われます。
輸入の場合であれば日本の税関にあらかじめ事前教示を行い、
HSの選定を行った上で、輸出者に対しHS選定の打ち合わせを
すれば、日本において原産地証明書のHSが違うという事で
無効になるという事はよほどの事がない限りないでしょう
しかし、日本から輸出をして原産地証明書を相手国に送り、
相手国で特恵関税を適用させるという場合は事情が異なります。
輸出のケースでも日本の税関にHSコード選定に対し
事前教示を行う事は可能ですが、
ここには大きな落とし穴が存在します。
日本の税関が判断したHSコードと海外の税関が判断するHSコードは
異なる事もあります。
HSコードとはWCO(世界税関機構)によってWTO加盟国で制定され、
共通ルールの上でHSコードが各貨物に対して割り当てられて
おりますが、解釈の仕方が国によって変わってしまうケースが
あるのです。
一つ例を挙げてみます
PC用のマウスパッドのHSコードですが
マウスパッドだけに割り当てられたHSコードというものは
存在しません。
その為マウスパッドの材質でHSを選定するか
PCの部品になるかというところで非常に迷う点ではあります。
そこで日本の税関の
事前教示データベースにて「マウスパッド」を検索してみました。
するとマウスパッドはHS6307の紡織用繊維のその他という分類が
されておりました。
分類の理由はその貨物の特性を表す部分がポリエステル製の編物に
あるという見解です。
では同じくポリエステル製のマウスパッドを
アメリカの事前教示データベースで検索してみました。
上記リンクからNY B88422という実例を見ると
こちらでは同じポリエステル素材のマウスパッドがHS8473と
判断されております。
HS8473とはパソコンの部品の事です。
以下アメリカ事前教示の文面を引用します。
Mouse pad, that is designed for use with a computer input device,
commonly called a mouse. The mouse pad is constructed of
synthetic rubber with a top layer of polyester.
副素材がプラとゴムという素材の違いはありますが
日本の税関は材質を元にHSコードを6307と選定し、
アメリカの税関は用途を元にHSコードを8473と選定しました。
(関税率表解説(EN)の8473項の除外規定(b)には
「マウスパッド(構成する材料により該当する項に属する。)と
規定されているにも関わらず。)
もし通常に輸入する場合に関税が発生したら大変な事になります。
相手国で特恵関税の適用ができるかどうかを日本の税関に質問し、
日本の税関の判断が相手の国の判断と必ず同一かというと
そうでもないケースも多々あります。
もし、輸出先で特恵関税の適用を受けようとするのであれば
相手国の税関に対し事前教示を行うのがベストです。
これを日本側で決めてしまい、意見の相違があれば
最悪の場合原産地規則を満たさないという事で
相手国で想定外の関税が発生する場合もあります。
もう一件HSに対する国ごとの意見の相違事例を紹介します。
アメリカ税関では気密容器入りの食品として分類されていたものが
日本では気密容器ではないと判断され、関税が課されたという事例です。
内閣府が発表している個別苦情個票を見ると
「気密容器の定義は各国で異なっても問題ない」との記述あります。
HSコードは全世界共通という認識はありますが
ある程度の制限、解釈に関しての裁量はあるようです。
FTA税率の算出は絶対にミスできない大仕事ですので
必ず輸入先税関の意見を聞くようにしましょう。