世界各国の貿易統計を品目コード(HS)指定で調査すると
FTA/EPAを利用した関税削減の協力なツールになります。
自由貿易協定を活用した関税削減においては
良質で安価な原材料を使用して原産地規則を満たし、
コストを最小化して利益を最大化する事が重要ですので
日本だけの貿易統計データだけでなく世界中の貿易統計データを
活用できると製造工程を検討する際の指針となります。
自由貿易協定(FTA/EPA)を活用して関税削減を行うには
原産地規則を満たす貨物をどこから調達できるかを知る必要があります。
例えばA国から日本に貨物を輸入する場合にA国と日本がFTA締約国同士
であればA国原産の貨物に対して関税削減の恩恵が得られます。
しかし、A国原産の貨物の価格が高騰してしまった場合、
あるいはライバル社もA国から同種の貨物を仕入れている場合に
品質、価格において差別化したい場合など
FTA締約国でない第三国から更に品質の良い原材料、あるいは
安価な原材料をA国向けに調達させて製造し、より優れた製品開発が
必要になった場合は非常に多くの事を検討する必要があります。
例えば
〇より良い品質の原料をどの国から調達するのか
〇どの国から原料を調達するとコストはどれほどかかるのか
〇その原料を安定的に供給できる国はどこか
〇世界で最も安く目的の原料を入手するにはどの国が最適か
といった事が重要な検討項目になるのではないでしょうか?
具体的に世界各国の貿易統計を得る事でどのようにして上記のような
検討項目をクリアしていくのかを一つづつ紹介します。
国別原材料コストを調査
特定の製品の原材料をどの国から調達するかによってコストは大幅に変わります。
品質を考慮せずに単純に原材料の平均価格のみで調達先の国を絞る場合は
原材料の品目コード(HS)を指定して世界各国の輸出データを取得します。
貿易統計データは通常「輸出貨物の価格(USD)」と「重量(kg)」が
各品目コードと結びついております。
例えば
A国が2017年に原材料○○を全世界に向けて1億ドル1000トン輸出していれば
単純に価格÷重量で1kgあたりの平均単価が$100となります。
これと比較してB国の平均単価が$300であればA国から調達する方が安く
済むかもしれないという推測を立てる事ができます。
良品質原材料の調達先を開拓する
貿易統計データはあくまでも数字であるため、
品質を表す情報は含まれておりませんが良い品質の原材料を生産している国は
安定的、継続的に輸出しており、需要が絶え間なく存在する事がグラフから
確認する事ができます。
安価な原材料であるにも関わらず供給頻度にばらつきがあれば
品質を疑ってみても良いと思います。
逆に多少高くても一定の供給が保たれていれば
それだけ必要とされている事がわかります。
このような視点でいくつかの供給国候補を絞るという戦略も有効かと思います。
安定的に原材料を供給できる国を特定
原材料の品目コード(HS)を指定して候補となる国を対象、あるいは
全国を対象として貿易統計データを表示すると複数の国が過去数年間
どれほどの量を輸出したのかがわかります。(もちろん輸入も可)
このデータをグラフ化するとどの国が安定的に原材料を供給しているのかが
非常によくわかります。
世界で最も安く原材料を調達できる国を選別
調達したい原材料があるというだけで実際どこの国から調達するのが
最もコストを抑えられるのかが検討もつかない場合も
原材料の品目コード(HS)を指定して世界各国を対象とした輸出データを
取得し、得られたデータをcsvファイル等に落としてexcel等の計算で
「輸出貨物の価格(USD)」÷「重量(kg)」の結果をソートして並び替えれば
どの国から調達するのが最もコストを抑えられるか検討がつくようになります。
貿易統計データ供給元
以下にいくつかの貿易統計データプロバイダーを紹介します。
品目コード(HS)は頭6桁が世界共通となっておりますので
目的の品目コードさえ特定できれば地球の裏側のデータもすぐに
入手する事が可能です。
財務省貿易統計
日本との取引に関する貿易統計データが必要であれば財務省貿易統計が
一番有力なツールとなります。
品目コード(HS)を9桁まで指定する事が可能なので詳細な品目コード別に落として
貿易統計調査が可能です。
世界中の貿易統計を検索する場合は他の貿易統計データベースを利用しますが
全世界を対象とする場合は品目コード(HS)6桁レベルまでの指定しかできませんので
日本と直接関わる貿易統計を取得するのであれば財務省貿易統計が一番有効です。
※日本以外の国家間の貿易統計データの取得はできませんのでご注意ください。
English version also available here(Trade Statistics of Japan Ministry of Finance)
財務省貿易統計(FTA/EPA別)
上記で紹介した財務省貿易統計とは異なるデータベースで
各品目コード別にFTA/EPAをどれだけ利用しているかを知る事のできる
貿易統計データベースです。
マトリクス表から調べたい時期を選択すると各品目コード別FTA/EPAの
利用状況をダウンロードする事ができます。
取得できるデータの例:
〇品目コード別に年、月単位でFTA/EPAを利用して通関した重量
〇輸出国コード別に年、月単位でFTA/EPAを利用して通関した重量
〇2国間協定、包括(マルチ)協定のどちらを使用したか
〇EPA関税割当の利用したか
〇自己申告制度を使用したか
などの詳細データが入手可能です。
GlobalTradeAtlas
米IHS社作成の貿易統計データベース
品目コードはHSコードを使用してHS2, 4, 6桁で統計データを取得できます。
しかし、有料であるため利用申し込みが必要です。
私自身申し込みをしましたが、担当者から国際電話がかかってきて
利用する範囲によって利用料金が変わるとの事でした。
利用のハードルが少し高いので当サイトでの情報提供用の利用は見送りました。
jetroが提携している為、ビジネスライブラリー・データベースコーナーにて
利用は可能ですがプリントアウトのみでデータダウンロードは負荷。
プリントアウト料金は1枚50円となっておりますので
断然国際連合の貿易統計システムの方が断然お勧めです。
IHSMarkitのページには企業による貿易統計を活用した
成功事例(Industry Success Stories)が
挙げられているのでこちらは参考になるかと思います。
UN Comtrade Database
国際連合貿易統計データベース(UN Comtrade)は国連加盟約200以上の
国や地域の統計機関によって報告された、品目コード別(HSコード別)に
細分化された詳細な輸出入統計のデータベースです。
1962年から最新年までの、10億以上のレコードを含む
最も包括的な貿易のデータベースとなっております。
貿易データは各国当局から受信されるたびに、
国連統計部により標準化され、継続的に更新されています。
関税削減.com著者(河副太智)はこの国際連合の貿易統計の使用許諾を得ており、
プログラミング技術を利用して国連が運営するAPIから一般とは異なる方法で
データベースにアクセスできる為、短時間で膨大なデータを抽出し、
それを詳細なグラフ編集する事が可能です。
当サイトの統計データグラフはこの国連のデータベースから取得した情報から作成しています
■国際連合貿易統計データAPI利用契約書の一部↓
ITC TRADE MAP
品目コード(HS)別に貿易統計データを取得できますが
無料でできるのは品目コード(HS)の頭2桁ベースのみとなっており、
4桁6桁ベースで貿易統計データを取得するには年間約10万円前後の
利用料が必要となります。
貿易統計データ以外にも世界の原産地規則を検索したり
国別非関税障壁情報等一定範囲内に限り無料提供してくれるので
ご利用される事をお勧めします。
UNCTAD STAT
品目コード(HS)を使わなくても大まかな品名で貿易統計データを取得できます。
また、貿易統計データ以外にも産業別データが豊富にあります。
EU TRADE Market Access Database
日欧EPA発動に向けてEUでの貿易統計データを必要としている場合は
こちらをお勧めします。
国際連合の貿易統計データベースは全世界の貿易統計を出せますが
指定できる品目コード(HS)は6桁までとなっておりますが
EU TRADE Market Acceess DatabaseはEU内の貿易統計データに限定
されている為品目コード(HS)8桁で貿易統計データを取得する事ができます。
eurostat
先ほど紹介したEU TRADE Market Acceess Databaseは簡易版なので
使いやすいのが特徴ですが月別、集計データなどさらに詳細な貿易統計データ
を必要とする場合はこちらのeurostatの利用をお勧めします。
United States Census
CensusのUSA Trade Onlineはアメリカからの輸出入貿易統計データベースです
アメリカと直接取引のデータに限定されているので品目コード(HS)は10桁で
指定する事ができるので、詳細な貿易統計データの取得が可能です。
各国独自の貿易統計データベースの中では非常に精密であり
詳細な貨物データの入手も可能ですが、その分操作がややこしいため
Helpにあるチュートリアルをよく見ながら操作する必要があります。
国別貿易統計データベース一覧
特定の国の貿易統計データを詳細に調べたい場合、
国際連合の貿易統計データベース以外にどのようなデータベースが
公開されているのかを調べるにはTradeMap Data Sourcesが便利です。
国際連合の貿易統計データでは行きつけない深いレベルのHSからの
貿易統計データが入手できるシステムがあるかもしれません。
財務省貿易統計利用方法
財務省貿易統計から得られる貿易統計データは日本と関わる国との輸出入統計で
日本以外の国と国の貿易統計は得られませんのでご注意ください。
日本以外の国と国の貿易統計が必要な場合は国際連合の貿易統計がお勧めです。
財務省貿易統計利用方法について財務省貿易統計の利用マニュアルの
画像、文章を利用して解説させていただきます。
世界中にいくつもの貿易統計システムが存在しますが
財務省貿易統計を利用するメリットは日本の貿易統計だけに絞る事により
品目コード(HS)を9桁まで指定する事ができ、詳細な個別品目貿易統計を
得る事が可能です。(全世界版の国際連合の貿易統計は品目コード(HS)6桁まで)
また、HSコードよりも広い概念での品目別貿易統計を得るための概況品コード
というのもありますのでこちらを指定して貿易統計を得る事も可能です。
■品目コード(HS)を指定
財務省貿易統計の検索ページのメニューです
品目コード(HS)を指定する場合は「統計品目情報」のメニューを利用します。
どの検索項目を利用するかは以下のフローチャートを参考にしてください。
■概況品コードを指定
概況品コードを指定する場合は「概況品情報」のメニューを利用します。
■条件を指定
入手したい貿易統計データの期間を選択します。
単一年月(特定の年の一月だけ)
年内の複数月
年内の累計(特定の一年の総計)
年度内の累計
が指定できます。
■品目コード(HS)を指定
入手したい貿易統計データの品目コード(HS)を指定します。
品目コード2桁でのグループ検索
品目コードの直接指定、2桁,4桁,6桁,9桁を指定し、カンマ区切りで10個指定可
品目コードの範囲を指定
ができます。
■概況品コードを指定
全概況品対象
概況品参照指定(10個まで)
概況品直接指定(カンマ区切りで10個指定可)
■税関を指定
貿易統計データに輸出入申告をした税関の官署を指定する事が可能です。
■国を指定
輸出入の相手国を指定する事ができます。
各国それぞれに3桁の国コードが設定されていますので
不明な場合は一度参照ボタンを押して国名を表示するとその国のコードが
わかります
■CSVダウンロード
検索結果画面に貿易統計データ一覧が表示されますが
CSVダウンロードのボタンを押すとCSVでのダウンロードが可能です。
データの数値は1,000円単位となっております。