2018年1月25日:トランプ大統領がついにTPP参加表明を示唆
現時点ではTPPはアメリカにとっては最悪の協定である事を主張しつつ
アメリカによって有利な条件を織り込む事でTPP参加はありうるとの事
いつものトランプ大統領とは少し違った雰囲気がありますね
トランプ大統領支持者はどのように考えるのでしょうか?
引き続きNAFTAの交渉は続けるという意思についても
言及しております。
今後どのような展開になっていくのか、
進捗あり次第報告させていただきます。
世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。
最終更新日 By 河副太智 Leave a Comment
2018年1月25日:トランプ大統領がついにTPP参加表明を示唆
現時点ではTPPはアメリカにとっては最悪の協定である事を主張しつつ
アメリカによって有利な条件を織り込む事でTPP参加はありうるとの事
いつものトランプ大統領とは少し違った雰囲気がありますね
トランプ大統領支持者はどのように考えるのでしょうか?
引き続きNAFTAの交渉は続けるという意思についても
言及しております。
今後どのような展開になっていくのか、
進捗あり次第報告させていただきます。
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FTA/EPAの制度を利用して関税削減を行う場合、税関に対して原産性
の立証が必要となります。
この立証に対し税関は事後的に原産性の調査を行う事があります。
これを”検認”、”事後確認”と呼びます。
このような検認は基本的に世界中の税関が定期的に自国の貨物に対して
行われております。
本記事で紹介するのはWCO(世界税関機構)による各国の検認状況に
ついてのアンケートに対する回答です。
2011年に発行されたレポートではありますが、今でも十分参考になる
データが掲載されておりますので参考になる情報を一部紹介します。
「原産性の調査はどのような機会においてなされるか」という質問に
対する回答は以下の通りです。
疑義が発生した場合High risk shipment(50%)とランダム調査(47%)と
いうのが一般的な回答のようです。
ALL(38%)というのは以下を含めていつでもという事かと考えます。
(※複数回答がある為、パーセンテージの合計は100%を超えます。)
「どの点を重点的に調査するか」という質問に対する回答は以下の通りです。
スタンプ、サイン、原料等の構成を重点的に審査するようです。
「検認を行う動機にどのようなものがありますか」という質問に対する
回答は以下の通りです。
「原産地証明の真正性に疑義を持った時」が84%、
「品目の原産性に疑義を持った時」が83%となっており
「ランダム調査」も46%となっております。
「検認は誰に対して行いますか」という質問に対する回答は以下の通りです。
検認を行う場合は相手国の税関に確認する事が多いようです。
直接輸出者、製造者に直接確認するケースもあるようです。
TPP11では輸入国が輸出者に対し直接確認する事が可能となっている事
から、上記比率は変わっていくかもしれません。
「検認はいつ行いますか」という質問に対する回答は以下の通りです。
輸入許可、貨物リリース後が40%
輸入許可前、貨物リリース前が20%
上記両方行うというのが39%となっております。
「相手国への訪問は行いますか」という質問に対する回答は以下の通りです。
検認のほとんどが書面でのやり取りで行われているようですが疑義が
あれば輸出国施設への訪問は行われているという事がわかります。
「輸入国税関からの情報提供要請に輸出国税関は答えますか?」という
質問に対する回答は以下の通りです。
90%の税関が他国の情報提供要請に答えると回答しております。
「検認は毎年どの位の頻度で行われますか」という質問に対する回答は
以下の通りです。
輸入国税関が輸出国に検認要請をする年間件数
■無し (12%);
■1 から 10件 (21%);
■11 から 100件(19%);
■101 から 1000件 (38%);
■1000件越え(3%).
■無回答 (7%)
輸出国が輸入国税関から検認要請を受ける年間件数
■無し (7%);
■1 から 10件 (26%);
■11 から 100件 (16%);
■101 から 1000件 (43%);
■1000件越え (1%).
■無回答 (7%)
どちらも年間101件から1000件以内というのが一般的で、
1000件以上行うという事はまれのようです。
「違反を見つけた場合輸出国税関に報告しますか」という質問に対する
回答は以下の通りです。
84%の輸入国税関が輸出国税関に違反報告を行うと回答しております。
検認の実態については不明な点が多く、EPAを活用して関税削減を
行う企業にとっては不安が多い部分かと思います。
今後も検認についての情報があれば報告させていただきます。
出典:World Trends in Preferential Origin Certification and Verification
実際に検認を受けた企業様からの体験談を募集します。
企業が特定されるような情報は一切公表しない事をお約束します。
頂ける情報の範囲内で他の企業の検認対策になるようなアドバイスを
頂ければ幸いです。
ご協力いただける場合は問い合わせフォームからのご連絡をお願いします。
最終更新日 By 河副太智 Leave a Comment
日本版のHSコードから相手国に適用するHSへの変換ツールを作成しました。
※プログラミング経験が浅いので見た目はよろしくないのですが
ちゃんと動きます。
原産地証明書に記載するHSコードは相手の国に合わせて6桁ベースで変更が
必要な場合があります。
例えば日本では2017年版のHSを使用するのに対し、
日ASEAN FTAでは2002年度版のHSを使用します。
2017年版のHSを知っていても過去のバージョンのHSがわからないというのは
FTA貿易実務担当者様にとって頭の痛い問題かと思います。
このような時に新旧HS変換ツールを使用して頂ければ、
現行2017年度版のHSと相手国の選択だけで過去のバージョンのHSを
検索する事ができます。
検索方法は虫眼鏡マークのある検索フォームに現行のHSを
6桁入力します(例:852842)
そして下の表にある変換したい年度、相手国を選択し送信ボタンを
押すだけです。
是非ご活用ください。
最終更新日 By 河副太智 4 Comments
TPPや日EU・EPAを活用して関税削減を行う場合は輸出入者、製造者が
自身の責任において作成する「原産品申告書」が必要になり、
今後のFTA/EPAもこのような制度が主流になっていくと考えられております。
これまでのFTA/EPAでは第三者発給機関である商工会議所が発行する
原産地証明書を使用して関税削減を行っておりましたが、
TPPや日EU・EPAでは商工会議所が発行する原産地証明書は使用できず、
輸出入者、製造者等自身にて作成する原産品申告書の提出をもって
特恵関税の恩恵を得られる制度になっております。
その為、これからの関税削減手段を確実なものにしていくためには
通関用語の英語を理解し、文章にして原産性を証明する必要があります。
輸出であれば通関用語を含む英文にて原産地規則を満たす理由を記述。
輸入であれば英文による製造工程を理解し原産地規則を満たすかどうかの判定。
を行う必要があります。
実際の通関の場面では原産品申告書は求められても原産品明細書まで求められない
ケースもあり、そもそも英語で原産品判定の文書を書く必要が無いとも思われますが
審査官によって要求のレベルが異なる場合もある上、事後調査や検認においては
詳細な製造工程等を求められる事になりますので、この場合は原産品明細書等の
提出が必須になると考えられます。
海外の税関から求められる検認では日本での製造工程等を英語で表現し、
日本の税関から求められる事後調査では英語の説明を日本語で表現する
というケースが考えられます。
この場合、品目分類や原産地規則の知識を踏まえた英文作成、英文読解能力が
必要になるため、TOEICや英検のスコアが高いだけでは税関の要求を満たす
レベルの表現ができるかどうかは微妙な所です。
少々難解な課題ではありますが、今後のEPAによる関税削減手続きの中心となる
原産品申告書、明細書を英語にてスムーズに作成する事ができないと、
将来の貿易取引が成り立たないと言っても過言ではありません。
税関主催のセミナーにて原産地規則等の解説を受けた際に質疑応答にて
以下のように質問しました。
「英文で原産地規則を満たす事を書面にするのは輸出入者様にとって
非常にハードルの高い事かと思いますがこの点について
何か解決策はありますか?」
これに対しセミナー主催者の税関職員は以下のように回答しました。
「基本的に英文に関して税関はアドバイスを行いませんので
輸出入者様にがんばってもらうしかありません」との事でした。
税関主催の説明会にて「通関業者も原産品証明書の作成を行う事ができる」
と説明されますが、実際に通関業者が原産品証明書を率先して作成するかと
いうと、それはなかなか難しいかと思われます。
通関業者は基本的に荷主様から依頼を受けた書類に基づいて税関に申告をする
のがメインの業務となっておりますので、証明書類そのものを作成するのは
本来の業務範囲を大きく逸脱してしまう事になりかねません。
もちろん通関業者全てがそうだという訳ではありませんので、
申告文を一緒に考えてくれる通関業者がいれば心強い戦力になるでしょう。
しかし、基本的には原産品証明書は輸出入者、製造者が作成するという事が
原則となりますので、日々通関用語や専門の英文等に触れておく必要があります。
原産品申告書の明細書を英文で記述するには
品目分類の知識、原産地規則の知識、通関専門用語の英語等が必要です。
多くの人にとっては未知の領域であると思いますので、原産品申告書の明細書例を
いくつか紹介させていただきます。
以下の文はソーセージの原産品申告書の英文明細書の例です。
複数の非特恵受益国の原料を使用しており、旧NAFTAでの特恵税率を
適用する為に原産地規則を満たす事を理由を記述する文章です。
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Frozen pork meat (HS CODE 02.03) is imported into the United States from Hungary
and combined with spices imported from the Caribbean (HS CODE 09.07-09.10)
and cereals are grown and produced in the U.S. to make pork sausage (HS CODE 16.01).
The General Note 12 rule of origin for HS CODE 16.01 states:
“A change to heading 16.01 through 16.05 from any other chapter.”
Since the imported frozen meat is classified in Chapter 2
and the spices are classified in Chapter 9,
these non-originating materials meet the required tariff change.
One does not consider whether the cereal meets the applicable tariff change since
it was grown and produced in the U.S.
Only non-originating materials must undergo the tariff change.
※HS CODEと書いてありますがアメリカではHTSと言います
————————————————————————————————–
上記の内容を簡単に説明すると以下のようになります。
※アメリカからNAFTA締約国に向けてソーセージを輸出するケースを想定
※関税分類変更基準のケース
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ハンガリーからアメリカに冷凍ポーク(HSコード0203)を輸入
そこにカリブ海地域から調達したスパイス(HSコード0907から0910)を混合
更にアメリカにて収穫したシリアルを使用して
ソーセージが製造されました。(HSコード1601)
General Note 12にあるHSコード1601に対する原産地規則は
HS1601からHS1605に属する品目は他の類からの変更を要するとあり、
冷凍ポークは2類であり、スパイスは9類に属する事から
これら非原産材料は原産地規則を満たす事になる。
また、シリアルに関してはアメリカにて収穫されたものなので
原産地規則を考慮する必要がない事から
非原産材料のみが検討の対象となる
————————————————————————————————–
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※メキシコからアメリカに向けて電気式ヘアーカーリングアイロンを輸出
※関税分類変更基準と付加価値基準のケース
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An electric hair curling iron (HSCODE 8516.32) is made in Mexico
from Japanese hair curler parts (HSCODE 8516.90).
Each hair curling iron is sold for US$4.40;
the value of the non-originating hair curler parts is US$1.80.
The General Note 12 rule of origin for HSCODE 8516.32 states:
A change to subheading 8516.32 from subheading 8516.80 or any other heading; or
A change to subheading 8516.32 from subheading 8516.90,
whether or not there is also a change from subheading 8516.80 or
any other heading,
provided there is a regional value content of not less than:
(a) 60 percent where the transaction value method is used, or
(b) 50 percent where the net cost method is used.
The first of these two rules is not met since there is no heading change,
therefore the producer must verify if the curling irons can qualify under
the second rule.
In the second rule the required subheading change is met
(from HSCODE 8516.90 to 8516.32)
so one proceeds to calculate the regional value content.
The regional content under the transaction value method is:
($4.40 – $1.80)
———————- x 100 = 59.1%
$4.40
The hair curler is not considered an originating good under this method,
since the required regional value content is 60 percent
where the transaction value is used.
Instead, the producer uses the net cost method.
The total cost of the hair curler is US$3.90,
which includes US$0.25 for shipping and packing costs.
There are no costs for royalties, sales promotion or non-allowable interest.
The net cost is therefore US$3.65.
The regional value content under the net cost method is:
($3.65 – $1.80)
———————- x 100 = 50.7%
$3.65
The hair curler would be considered originating
since the required regional value content is 50 percent
when the net cost method is used.
Part 3 of this series will address preference Criterion C and unassembled goods.
※HS CODEと書いてありますがアメリカではHTSと言います
————————————————————————————————–
上記の内容を簡単に説明すると以下のようになります。
————————————————————————————————–
日本製のヘアーカーラーパーツ(HSコード8516.90)を使用し
メキシコで電気式のヘアカーリングアイロン(HSコード8516.32)を製造
個々の販売価格は$4.40となります。
非減産材料(日本製)の価格は$1.80
General Note12にあるHSコード8516.32の品目別分類規則は
以下の通りです。
■HSCODE8516.80から8516.32への号の変更若しくは他の号からの変更
又は上記基準を満たさない場合であっても
8516.90から8516.32への号の変更であれば以下の原産資格割合を
超えるものである事
(a)トランザクション値方式により60%以上
(b)ネットコスト値方式により50%以上
最初の2つの規則は号の変更が無いため満たすことはできないので
製造者によりもう一方の規則に該当するかどうかを確認
もう一方の規則にある号の変更は基準を満たしている為、
(8516.90から8516.32)
更に原産資格割合を満たすかどうかを計算する
($4.40 – $1.80)
———————- x 100 = 59.1%
$4.40
トランザクション値方式では閾値である60%を満たさない為
規則を満たせない。
しかし、ネットコスト値方式(製造原価からコストを算出)にて
計算すると合計コストは$3.9となる、
ここからシッピングコストと梱包量の$0.25を控除し、$3.65となる
ロイヤリティ、広告費、利息は無い為
ネットコスト値方式による原産資格割合は以下の通りです。
($3.65 – $1.80)
———————- x 100 = 50.7%
$3.65
ネットコスト値方式よりヘアーカラーアイロンは原産資格割合の
50%以上を満たすこととなる
特恵基準はCの品目別規則を満たす産品となる
————————————————————————————————–
上記の例文を参考にして頂ければ関税分類変更基準、付加価値基準を基にして
原産地規則を満たす事を説明する明細書の作成の手がかりになると考えますが
個別の品目に対する製造工程を解説するにはまだ困難な部分が残ります。
そこで個別の品目に対する製造工程を解説する英文例を参考にする必要がありますが
個別の品目に対する製造工程文は企業秘密そのものである場合が多く、
ネットで検索してもそう容易には見つける事ができません。
そのような場合にはアメリカ税関(CBP)の事前教示回答事例(CROSS)の英文が
非常に参考になります。
トップ画面の検索バーに品名を入力するとその品目に対するHSコード(HTS)や
原産地判定に至った経緯等を読むことができます。
事前教示にはいくつかの種類があり、
青枠の”Classification”はHSコードの判定、
赤枠の”Origin”は原産地の判定、
黄枠の”MARKING”はマーク、ラベルの原産地表示の判定というように
それぞれ個別品目に対する税関側の見解と根拠が詳細に掲載されています。
これらはアメリカ税関の職員が記述した文書となりますので、品目分類や
原産地判定の根拠を英語で表現する為の英文例が非常に豊富です。
特定品目の製造工程が特恵関税率を適用する為に原産地規則を満たすかどうかを
判定した事前教示の例をいくつか紹介します。
非常に詳細に書かれている為、完璧に理解するのは容易ではありませんが
ここから応用できる文書パターンを多く学ぶ事ができます。
モーター
アメリカ、中国、日本産の原料を使用してメキシコで製造されたモーターを
8501.31に分類。関税分類変更基準を満たす為旧NAFTA特恵関税率適用を認める。
シリンダー
8412.31に分類し旧NAFTA特恵関税率適用は否認されるが非特恵原産地規則上
原産地表示はメキシコ産として認める。
マットレスカバー
メキシコで生産されている為旧NAFTA特恵関税率適用が認められ
原産地表示もメキシコ産として認める。
まくら
非原産材料を使用してメキシコにて製造された枕2種類を
9404.90に分類。関税分類変更基準を満たす為旧NAFTA特恵関税率適用を認められ
原産地表示もメキシコ産として認める。
また、アメリカ税関(CBP)による事前教示の回答事例以外では
EU税関による事前教示回答事例があります。
こちらは照会品目の画像とともに事例検索が可能ですのでイメージしやすいのですが
文章量に関して言えば圧倒的にアメリカ税関(CBP)の事前教示の方が豊富にある上、
英語以外の言語で解説されたものが多いのでサブ的に利用できればと思います。
乾燥させた植物
0604.90に分類(画像あり)
原産性を証明する書類にもいくつかパターンがあります。
こういった書類も英語で作成する必要がある為、以下に各種
英文レターサンプルを紹介します。
出典:Handbook on Rules of Origin for Preferential Certificates of Origin
出典:Handbook on Rules of Origin for Preferential Certificates of Origin
EUではサプライヤー証明書フォームが指定されております。
この書式を応用すればEU以外の国での証明の際に参考になります。
上記例では4パターンのサプライヤー証明書が紹介されております。
それぞれの詳細は以下のようになります。
①ANNEX 22-15
締約国での原産品である事を宣言すサプライヤー証明書
②ANNEX 22-16
期限を定めた締約国での原産品である事を宣言すサプライヤー証明書
③ANNEX 22-17
非原産材料を加工した締約国原産品である事を宣言するサプライヤー証明書
(①、②とは異なり関税分類変更基準、付加価値基準の記載欄がある)
④ANNEX 22-18
期限を定めた非原産材料を加工した締約国原産品である事を宣言する
サプライヤー証明書
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貿易を行っていれば避けて取れないのが税関による事後調査です。
一定数の通関を行っていれば数年に一度
税関の調査官から電話連絡が来て調査を行う旨伝えられます。
(関税法第105条第1項第6号)
税関事後調査とはどのような物でどのような目的があるのか
解説していきます。
事後調査の電話連絡の際に説明される事になりますが、
輸入の場合は輸入の許可から保存が7年間義務付けられている
帳簿等の書類になります。
例:許可書、契約書、インボイス、価格用、原産地証明書
会計帳票、決裁書類、発注書類、その他文書(メール等含む)
海外への送金明細、運賃明細書、保険料明細、
その他輸入の許可に関わる書類を包括的に
必要があれば税関の調査が終わるまで書類を持ち帰る事もあります。
(関税法第105条第2項)
調査終了後は当然変換されます。
対象の例としてはパソコン、ハードディスク、書類等があります。
提出時に預かり書をもらう事ができます。
一般的な事後調査はあくまでも任意調査であり、
輸入者等の協力を得ながら行うものですので裁判所の令状は
ありません。
その為税関職員は以下のような行為は行えません
1.ドアを押し開けて事務所に入る
2.手を払いのけて帳簿をめくる
3.拒絶を押し切って引き出しを開ける
4.社内で見せるだけしか認めていない書類を強引に持ち帰る
上記内容を見ると税関事後調査は拒否できるかのようにも見えます
あくまでも任意ですので断る事もできると誰もが考えますが
関税法第114号の2の10号により「税関職員の質問に答えず、虚偽をし、
執行を拒み、妨げ、忌避した者」に対して罰則を設けております。
(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)
つまり任意と言いながら調査を断れば罰則が待っていますので
これを間接強制と呼びます。
どちらにしろ断る事はできないという事になります。
一般的には事後調査の事前通知はあります。
但し、税関が保有する情報に鑑み違法または不当な行為等を
疑う場合には事前通知なしで事後調査が行われるケースもあります。
その他にも輸入者との連絡が取れなかったり
調査があると知って行方をくらませたり、
資料を破棄する恐れがある場合などです。
(国税通則法第74条の10)
事後調査の事前通知には法令に定められた事項を通知します。
1.事後調査実施の日時
2.調査を行う場所
3.調査の目的
4.調査の対象となる税目
5.調査の対象となる期間
6.調査の対象となる帳簿書類その他の物件
7.調査の相手先である輸入者の氏名及び住所または居所
8.調査を行う税関職員の氏名及び所属官署
例えば本来納税すべき関税額等よりも低い額で申告していた場合
修正申告を勧奨される形になります。
修正申告を行うと本来払うべき関税等の追加支払いに加え
過少申告加算税、延滞税、
その他重加算税が発生する事もあります。
勧奨ですので実際に修正申告を行うかどうかは
輸入者に委ねられているという形にはなっており、
修正申告をする事は任意ではありますが
実際に誤り(非違)を税関から指摘されているわけですので
本当に修正申告を拒否してしまうと別の形で課税手続きが
待っています。
税関職員の処分が不当、違法であると考えられる場合は
不服申し立てを行う事は可能です。
しかし、修正申告を行ってしまうと、
事後調査の内容で適正であったと認めた事になりますので
修正申告後は原則不服申し立てはできません。
一般的な誤り(意図的でない過少申告)の場合は
修正申告における増差税額に対し、
10%が過少申告加算税となります。
また、修正申告等により増加した税額のうち、
当初申告税額または50万円のいずれか多い金額を超える部分に
対してはその超えている部分に相当する金額の5%に相当する
金額の過少申告加算税が加算されます。
更に無申告(輸入した貨物自体を税関に申告しなかった場合)の場合
無申告加算税が課され、こちらは15%となっております。
上記の例とは別に輸入者が悪意で書類を隠蔽、仮装、書類破棄、
輸出者と通謀して価格操作等悪質な行為があった場合は
重加算税として40%加算され、さらにこれに併科して
10年以下の懲役または1000万円以下の罰金。
双方が併科される事があり、
これにより関税等の重加算税の賦課は免除されません
本来支払うべき関税等を支払うのは当然として、
過少申告加算税の支払いは完全に予測不可能な
マイナス要素になるのでなんとか減らしたいところです。
以前までは税関から事後調査の電話連絡があった時点で
過去の書類等を引っ張り出し、事後調査前に修正申告を行うという
テクニックを使えば過少申告加算税は加算されなかったのですが
この方法が知れ渡り多くの人が使うようになったため
平成29年1月1日以降に法定納期限の来る関税等に関しては
規制が強化されており、このような手段を取っても
過少申告加算税が5%かかる事になりました。
事後調査で指摘された後の修正申告では
過少申告加算税が10%である事に対し、
指摘前の調査予告の段階で自主的に修正申告をすれば5%ですので
現在でも少しだけ加算税を少なくする事が可能です。
また、無申告加算税は税関指摘後であれば15%ですが
調査予告、指摘前であればこちらは10%に減らす事ができます。
人情に訴え謝り続けて遡及期間を少なくしてもらったり
穏便に済ませてもらったという話も聞いた事はありますが
過度な要求はやめておいたほうが無難です。
一般の事後調査であっても特恵関税適用の可否、
原産地証明書の有効性や原産地規則についての調査もあります。
しかし、原産地規則に関しての有効性の判定は非常に難しい為、
一般的な事後調査とは別に
原産地調査官による原産地規則判定の為の事後調査もございます。
原産地証明書を使用して特恵関税適用の申告をしていれば
一般的な事後調査と原産地規則に関する事後調査と
2種類の事後調査があると考えておいたほうがよいでしょう。
(原産地調査は正確には事後確認と呼びます。)
私自身が通関をしていた際に
とある輸入者様は毎回原産地証明書を使用して
靴を特恵関税を適用して輸入しておりました。
通関時は特に問題なくスムーズに進みましたが
ある時通関を担当していた私に原産地調査部門から連絡があり、
〇〇という輸入者に対し、今回ランダム調査と対象となりました
ので、こちらの輸入者様の担当者様の名前と
連絡先を教えてくださいとの要求が来ました。
その後原産地調査官からの原産地規則の有効性について
事後調査が輸入者様に対してあったようなのですが
原産地規則の証明に非常に手間取って少々パニック気味でした。
このような事が無いよう日々原産地規則については勉強したほうが
良いでしょう。
ちなみにこの輸入者様の貨物は特恵関税適用国での
完全生産品でしたので安心しておりましたが、
実際は「なぜ完全生産品といえるのか」とその証明を
求められたようですので完全生産品といえども油断はできません。
特恵関税を適用した申告が多いのであれば
原産地規則の確認を定期的に行うべきでしょう。
特に付加価値基準のパーセンテージを原産地規則ぎりぎりで
通している場合は為替の大きな変動があれば
突然原産地規則を満たさない貨物になってしまう可能性もあります
ので注意が必要です。
このような事後トラブルを避けるためにも
原産地規則の適用は付加価値基準ではなく
関税分類変更基準を使用した方が事後調査対策に有効です。
原産地証明書は第三者機関(相手国の商工会議所等)を
通じて発給されますが、このような機関を通したからといって
原産地規則の判定も間違いないとのお墨付きにはなりません。
むしろこういった第三者機関の知識不足の為、
「原産地規則を満たさないもの」であるにも関わらず
「満たすもの」と誤って判断をするケースが多発しております。
調査の日程は輸入者と打ち合わせをして、双方の都合が合う日に設定
する事になります。
設定日の変更も協議することにより可能です。
その際は理由を説明する事になります。
例えば一時的な入院や葬式、出張などやむを得ない事情が
発生した場合等です。
事後調査に要する日数はケースバイケースであり、
複数回に分けて行う事もあります。
不明点などがあれば調査は日延べになる事もあります。
また、事後調査が完了しても、その後に新たな疑義等あれば
事後調査の再開もあり得ます。
基本的に調査対象になった理由は教えてもらえません。
数年に一度、定期的に輸入者を選んで選択するか
疑義が発生した場合に行われるものかと思われます。
膨大なデータがある場合や印刷物を保存する事が困難な資料を
求められた場合は必ずしも印刷物ではなく
ディスプレイでの表示による証明も可能です。
基本的にできません。
通関でトラブルを起こした輸出入者が税関職員にお詫びのしるしに
お菓子を持参した事がありましたが職員は受け取りませんでした。
一切こういったものは受け取りませんし、
あまり露骨にやると逆効果になると思いますので
お茶かコーヒー程度が無難かと思われます。
事後調査においてよくある指摘として多いのは以下の3つです。
1.インボイスに記載された決済金額以外の貨物代金の申告漏れ
2.豚肉に関わる高価申告
3.輸入者が輸出者に対し、無償提供した材料の費用の申告漏れ
特に1と3は評価申告という部類に入り、
一般的な輸出入者にとっては非常に難解な内容となっており、
正直通関士であってもその判定は難しい内容です。
その為事後調査にて過少申告加算税の対象となるのは
この評価の部分が非常に大きいです。
調査官も輸入者からの送金履歴や輸出貨物の履歴を見ますので
こういった事情があればすぐに指摘を受ける事になります。
平成27年度の関税等の申告にかかわる輸入事後調査の結果では
4,302者に事後調査を行い、申告漏れを指摘された業者は
2,977者となっており、約70%の輸入者が申告漏れを指摘され、
約150億円の関税等の追加徴収となっております。
非常に多くの割合の輸入者が申告漏れを指摘されていることから
日々の取り組みが非常に重要となっております。
平成27年度の調査によりますと
1.電気機器
2.光学機器等
3.肉類
4.機械類
5.医療用品
の順に申告漏れの指摘が多いようです。
1,2,4,5に付きましては無償貨物の提供やインボイス価格以外の
支払いが多いかと思われます。
3の豚肉については以前大きな問題になりました。
豚肉の申告は特殊でして、安い豚肉には高い関税を
高い豚肉には安い関税を課すという形になっております。
高額の豚肉と安価な豚肉の区別は1kgあたり524円以上かどうかが
基準となります。
実際に支払った額が1kgあたり524円よりずっと安いにも関わらず
故意に高価申告をして関税率を低く抑えていたという事例です。
豚肉に支払った額は高く申告する事になりますが
結果関税率が低くなる事により、
トータルでプラスになるという手口で一時新聞を賑わせておりました
過少申告する事だけが問題なのではなく
過大申告も意図的に行えば追徴課税の対象になります。
事後調査によって明らかにできない情報がある場合は
反面調査といって取引先等第三者への調査が行われる事もあります
基本的にその場合は相手先へ事前通知を行ってから
調査する形になります。
基本的に調査官はすごく丁寧で優しい人が多い印象です。
緊張した状態で待ちかまえ、拍子抜けして余計な事を喋る方が
よくいるようです。(笑)
基本的に情報提供以外は助けてはくれないと考えておいてください。
事後調査の立ち合いは通関士か弁護士と定められておりますが
余程親切な通関士でなければ立ち合いまではしてくれないでしょう
通関前、通関後に関しては輸入者様自身の責任の上行われるという
認識ですので通関業者を当てにして全て丸投げは危険です。
事後調査の対策としては第一に評価申告の見直しがあります。
ここが最も申告漏れが多い部分ですので
調査では評価申告の適否について慎重に調査します。
単純に輸入貨物の代金を決済するだけの取引であれば
シンプルでわかりやすいのですが、
インボイス決済以外の支払い、無償貨物の提供はよくある事なので
こういった事があれば事前に調べる事が必要です。
最終更新日 By 河副太智 Leave a Comment
原産地証明書作成時や検認、事後調査時に必要となる
計算ワークシートの例を紹介します。
原産地規則を満たすことを証明する為に必須資料ですので
この書き方は覚えて頂く必要があります。
実質的変更基準の中の付加価値基準(VA)を採用して原産地規則を満たす場合は
上記のような「計算ワークシート」で原産性を証明する事が必須になってきます。
完成品の品目別分類規則に付加価値基準がある場合は
原産地規則の複雑な知識を必要とする事なく、小学生レベルの算数で原産性を証明ができる。
会計、税務を扱う士業の方にお願いする事も可能なケースもあるようです。
原産地規則を理解するのは非常に困難な分野ですので
覚える時間が無いという方にはお勧めな方法です。
デメリットとしては保存書類の多さ、複雑な関連性を証明する証拠書類の準備
サプライヤーからの価格の提示等の協力、為替レートの大幅な変更によりルールに影響を及ぼす事、
事後調査、検認において更なる証拠や説明の要求が増大などがあります。
個人的には付加価値基準(VA)と関税分類変更基準(CTC)の2つを選べる場合は
最初は大変でも関税分類変更基準をお勧めします。
こちらの方が後々揉め事になる可能性が低いからです。