各EPA、TPP等による特恵関税率を適用して輸出先国にて関税減免の適用を
受けた場合、輸出者及び生産者は許可後も原産性を立証する関連書類等を
一定期間保存する義務があります。
各EPAには関連書類保存義務の規定が存在し、許可後に検認という形で
輸出先国の税関が輸出者及び生産者に対し原産性の確認を行う事があり、
その際に速やかに当該書類、立証資料等を提出する必要があります。
協定別書類保存期間一覧
原産性を立証する書類の保存義務の期間は各EPAによって異なります。
協定別の書類保存期間は以下の通りです。
協定名 | 保存期間 | 根拠条文 |
日メキシコ協定 | 5年 | 43条(73P) |
日マレーシア協定 | 5年 | 42条(b)(60P) |
日チリ協定 | 5年 | 45条(b)(42P) |
日タイ協定 | 5年 | 42条(b)(58P) |
日インドネシア協定 | 5年 | 42条(b)(61P) |
日ブルネイ協定 | 3年 | 39条(b)(57P) |
日アセアン協定 | 3年 | 第五規則1項(472P) |
日フィリピン協 定 | 5年 | 42条2項(63P) |
日ベトナム協定 | 3年 | 第五規則1項(660P) |
日スイス協定 | 3年 | 23条1項(414P) |
日インド協定 | 5年 | 第五節1項(403P) |
日ペルー協定 | 5年 | 64条1項(86P) |
日オーストラリア協定 | 5年 | 3.20条1項(a)(87P) |
日モンゴル協定 | 5年 | 3.17条(b)(72P) |
TPP | 5年 | 3.26条2項(1487P) |
日EU協定 | 4年 | 3.19条2項(72P) |
原産性を立証する一般的な保管書類
原産性を立証する一般的な書類とは、原産品申告書(写し)のほか、
申告内容に応じて輸出者又は生産者自身が原産性を判断し、
原産品申告書等を作成するに際して用いた以下の書類を保管する必要があります。
1.契約書
2.仕入書
3.価格表
4.総部品表又は製造工程フロー図
5.その他の原産品申告書の内容を確認するために必要な書類
その他必要になり得る保管書類
経済産業省原産地証明室発行の
原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示では
適用した原産品判定基準(関税分類変更基準と付加価値基準)に対応した
保管書類の例示が列挙されています。
関税分類変更基準の場合の保管書類の例示
①生産に使用した非原産材料のHSコードと、輸出する産品のHSコードが
変更していることを示す資料(対比表)
原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示より
上記のような対比表は対比表エクセルフォーム例からダウンロードできます。
②対比表に記載された「材料・部品」で製造されたことを裏付ける資料
■総部品表
■製造工程フロー図
■生産指図書
■各「材料・部品」の投入記録(在庫「蔵入蔵出」記録) 等
関税分類変更基準を適用して原産性を主張する場合、明文規定はないものの
加工等によって関税分類変更が起きた事実を証明できる書類全般が必要となります。
③「原産」と扱った「材料・部品」については、その原産性を示すための
根拠となる資料
■国内調達「材料・部品」については、その供給者(サプライヤー)からの情報
■当該「材料・部品」が締約相手国原産品である場合は、輸入時の同協定に基づく
原産地証明書の写し、当該「材料・部品」が原産品であることを示すその他の資料
(具体的には、後述の対比表や計算ワークシート)等
付加価値基準の場合の保管書類の例示
①協定に定められた原産資格割合を超えていることを示す資料
(計算ワークシート)
原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示より
上記のようなワークシートは付加価値基準(VAルール)利用におけるワークシートの例から
ダウンロードできます。
②計算ワークシート上の数字の妥当性を示す資料及び記載された「材料・部品」で製造
されたことを裏付ける資料
■ 総部品表
■製造工程フロー図
■生産指図書
■製品在庫(蔵入蔵出)記録
■各「材料・部品」の投入記録(在庫「蔵入蔵出」記録) 等
【控除方式の場合】
非原産材料単価の算出根拠資料(帳簿、伝票、インボイス、契約書、請求書等)
【積上げ方式の場合】
製造原価計算表
積み上げるべき原産材料単価、生産コスト等の算出根拠資料
(帳簿、伝票、インボイス、契約書、請求書、支払記録等)
③「原産」と扱った「材料・部品」については、その原産性を示すための
根拠となる資料
■国内調達「材料・部品」については、その供給者(サプライヤー)からの情報
■当該「材料・部品」が締約相手国原産である場合は、輸入時の同協定に基づく
原産地証明書の写し、当該「材料・部品」が原産品であることを示すその他の資料
(具体的には、対比表や計算ワークシート)等
輸出保管書類を調査する規定(日EUの場合)
各EPAごとに関税の減免を認めた税関が後日、輸出者及び生産者に対して
原産性に関する調査に関する規定があります。
一例として以下に日EU・EPAにて規定されている条文を引用します。
第三・二十二条運用上の協力(協定文77p)
1
両締約国は、この章の規定の適正な適用を確保するため、
産品が原産品であるかどうか及びこの章に定める他の要件を遵守しているかどうか
を確認するに当たり、各締約国の税関当局を通じて協力する。
2
関税上の特恵待遇の要求が第3.16条2に規定する原産地に関する申告に基づくもの
である場合において、確認を行う輸入締約国の税関当局が、前条1の規定に従って
情報の提供を最初に要求した後、産品の原産品としての資格を確認するために
追加の情報が必要であると認めるときは、当該税関当局は、更に、当該産品の
輸入の後二年以内に輸出締約国の税関当局からの情報の提供を要請することができる。
当該情報の提供の要請においては、次に掲げる情報を含めるべきである。
(a)原産地に関する申告
(b)当該要請を送付する税関当局を特定する事項
(c)輸出者の氏名又は名称
(d)確認の対象及び範囲
(e)該当する場合には、関連する文書
輸入締約国の税関当局は、輸出締約国の税関当局に対し、当該情報に加えて、
適当な場合には、特定の文書及び情報の提供を要請することができる。
3
輸出締約国の税関当局は、自国の法令に従い、記録を検討するため及び産品の
生産において使用された設備を視察するために、証拠の請求を通じて文書を要請し、
又は輸出者の施設を訪問することによって行う審査を要請することができる。
4
2に規定する要請を受領した輸出締約国の税関当局は、輸入締約国の税関当局に
対して次に掲げる情報を提供する。ただし、この4の規定は、5の規定の適用を
妨げるものではない。
(a)入手可能な場合には、要請された文書
(b)産品の原産品としての資格についての意見
(c)審査の対象となっている産品についての記載及び
この章の規定の適用に関連する関税分類
(d)産品の原産品としての資格を裏付けるために十分な
生産工程についての記載及び説明
(e)実施された審査の方法についての情報
(f)適当な場合には、裏付けとなる文書
5
輸出締約国の税関当局は、輸出者が4に規定する情報を秘密のものと認める
場合には、当該情報を輸入締約国の税関当局に提供してはならない。
6
一方の締約国は、他方の締約国に対し、自国の税関当局の連絡先の詳細
(郵便用宛名及び電子メールアドレス並びに電話番号及びファクシミリ番号を含む。)
を通報し、及びこれらの情報に関する変更を当該変更の日の後30日以内に通報する