ミンクコートの原産地規則適用の可否を検討した実例を紹介します。
カンボジアの生産者がミンクのコートを製造。
その際に材料として韓国産の「なめしたミンク毛皮」を調達
この場合特恵関税を適用する場合
特別特恵税率(LDC) ※*印があるのがLCD受益国47か国で関税削減か
あるいは日アセアンEPAで関税削減が可能かどうかの検証をします。
適用すれば関税はゼロになります。
しかし、特恵適用のできない国(韓国)で調達したなめしたミンク毛皮を
材料としているので原産地規則を満たすかどうかの確認が必要です。
この場合は一般特恵関税制度の品目別分類規則を確認します。
上記の表はミンクのコートの帰属するHS4303の原産地規則です。
右の欄に「HS4302又はHS4303以外の物品からの製造」という
条件が記載されております。
このミンクのコートはなめしたミンク毛皮HS4302に属するので
一般特恵関税の品目別分類規則には沿わない形になります。
ではもう一方の日アセアンEPAではどうでしょう?
まず関税率は20%なのでWTO協定税率(通常の関税)と同じですので
EPAを使う意味は無いですが原産地規則の検証という意味で見てみましょう
一応同じ条件のミンクのコートを日アセアンEPAの品目別分類規則に
沿うかどうか確認してみます。
日アセアンEPAでも非締約国から調達したHS4302に属する原料から
製造されたHS4303の製品は原産地規則を満たさない事になります。
よって韓国産のなめしたミンク毛皮によってカンボジアで生産された
ミンクのコートはどうやっても関税20%が発生するという結論になります。
このように一般特恵関税(GSP)と特別特恵関税(FTA/EPA)の
両方が適用できる場合どちらを選ぶかは慎重になる必要があります。
例えばインドからの輸入貨物の場合
一般特恵関税も特別特恵関税も両方使える形になりますが
品目よってはこの選択を誤ると
原産地証明書自体使用不可になる危険性があります。
こちらを理解するにはまず関税の種類についての理解が必要です。
関税の種類には以下の5つがあります。
1.特別特恵税率(FTA/EPAで使用)
2.一般特恵税率(GSPで使用)
3.WTO協定税率(WTO加盟国で使用する税率)
4.暫定税率(政策等により一時的に決定された税率)
5.基本税率(基本ベースの税率)
この5つの税率の中で優先順位がありますので
その優先順位に従ってする必要があります。
但し、ここには重大な落とし穴があります。
EPAとGSPの両方に税率の設定がある場合注意が必要です。
原則:
EPA税率が優先されGSP税率は適用不可
例外:GSP税率の方がEPA税率より低い場合は両方適用可能
GSP税率 < EPA税率 = 両方適用可
GSP税率 > EPA税率 = EPA税率のみ適用可
関税暫定措置法施行令第二十五条4(3)
(関税基本通達3-2(2))
一般特恵、特別特恵、FTA/EPAなどの複数の特恵関税が適用される場合
品目によってどちらか一方の特恵しか使えないケースがありますので
ご注意下さい。
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