「LED(HS8539.50)」を日本で製造する際に使用するアルミ製の”形材”を
EPA非締約国から調達する場合に、完成品である「LED」が輸出先に
おいて関税削減の対象となる「締約国の原産品」としてみなされるか
どうかという点について当該”形材”のHSコードが「LED」の部分品に
なるかどうかを検討してみます。
↓「LED」本体例(HS8539.50)
↓「LED」部品の”形材”例
目次
HSコード分類の際に検討する問題点
HSコード8539.50に分類される「LED」の場合、”形材”が当該「LED」の
部分品となれば同じ項である8539に分類される可能性があります。
もし、対比表を作成するEPA担当者が当該”形材”は製品である「LED」に
設置するように設計されたものであるという理由のみで、深く考えずに
「LEDの部分品」として分類してしまうとHSコードの項(4桁)が共通とな
ってしまい、
HSコードの分類方法の誤りによって自ら関税削減の恩恵を手放す事態
も考えられます。
誤った分類をしてしまうと関税分類変更基準(CTC)において不利な分類
となってしまい、本来原産地規則を満たすものを満たさないと判断し、
関税削減の目的を達成できなくなる恐れがあります。
HSコードの分類において部分品の分類は非常に複雑である為、本事例の
場合は当該”形材”が「LED」の部分品であるHS8539.90に分類されるか
どうかについて更に深く検討してみる必要があります。
通則と部注の規定からHSコードを特定
当該アルミ製の”形材”が「LED」の部分品になるかどうかは
「LED」のHSの属する16部の注規定を確認します。
16部の注2には以下のように85類に分類される品目の部分品に対する
規定があります。
この規定によりHSコード8539.50に分類される「LED」に使用される
部分品は同じ項に属するという事になるので、文言通りに行けば”形材”は
「LED」の部分品であるHSコード8539.90に分類されるようにも見えます。
しかし、以下のような形状の場合、必ずしもLEDにしか使用できない
という訳ではありませんので”アルミ製の形材”のHSコード7604に
分類して、部分品からの離脱ができないかどうかを検討してみます。
当該部分品がHSコード7604に分類されるかどうかを判断する為に
76類の解説を確認します。
するとHSコード7407の規定も分類の根拠として準用されているという事
ですので今度は74類の解説を確認する必要があります。
上記の規定は銅製の形材の規定ですが、アルミ製の形材の規定に準用
されているので、そのまま該当製品に当てはめて考える事になり、
「加工により他の項の物品の特性を有することとなるものを除く」と
あるので、アルミ製の形材そのものであればHSコード7604に分類されて
製品の部分品からの離脱が可能になる可能性がありますが、「LED」と
しての特性が強く出る加工がされた物である場合、当該”形材”は「LED」
の部分品として判断される可能性が高くなります。
関税監査官による事前教示
このような”形材”の品目分類は日本税関の事前教示に照会事例があり、
本事例では加工度の高さを理由として「LED」の部分品に分類されました。
登録番号 115004816
税関 東京
処理年月日 20161216
一般的品名 LEDランプ部分品
税番 8539.90-000
貨物概要
直管型LEDランプに使用されるアルミニウム合金製の部分品
材質:アルミニウム合金(JIS規格・A6063S-T5)
製法:押出成型した形材にアルマイト加工を施した後、指定寸法に
切断し両端に深さ10mmのタップ(ネジ溝切り)加工を行いネジ
溝を施したもの。 サイズ:高さ6.38mm×幅18.30mm×
長さ1,170.30mm
用途:輸入後本品の片面の溝にLED基板を挿入取り付け後、
直管型LEDランプの円筒の樹脂管に挿入されて両端に樹脂製の
キャップ(電極端子付)を付けビスネジで固定される。
分類理由
本品は、アルミニウム合金製の形材にアルマイト加工を施した後、
指定寸法に切断し直管型LEDランプのキャップ(電極端子付)を固定
するためのネジ溝を施したものであり、関税率表解説第76.04項に
おいて準用する同表解説第74.07項の規定より「加工により他の項
の物品の特性を有することとなる」物品と認められることから同表第
76.04項には分類されない。 したがって、本品は、関税率表第85
.39項及び同表解説第85.39項の規定により、直管型LEDラン
プの部分品として、上記のとおり分類する。
本事例の場合「アルマイト加工」を含めた加工工程が「他の項の物品の
特性を有する」との判断の基準になったのではないかと考えます。
その為、純粋に押出形成されただけの”形材”であれば部分品からの
離脱ができていた可能性が考えられます。
但し、「アルマイト加工」を含めた加工工程が「他の項の物品の
特性を有する」との判断に至るかどうかは各国の判断基準によっては
様々な意見がでる可能性がありますので、自社だけで判断するのでは
なく、輸入国税関の意見を事前に確認する事も重要であると考えます。
EPA関税削減の為の関税分類変更基準
関税分類変更基準においては非原産材料のHSコードと製品のHSコードは
できるだけ離れている方が原産地規則を満たしやすくなります。
本事例の場合、純粋に”形材”として認められれば締約国での加工によって
76類から85類にHSコードの頭2桁が変更となる為、特恵関税率を適用する
ための関税分類変更基準を満たしやすいと考えますが、”形材”を「LED」の
部分品としてHS8539.90に分類してしまうとHSの項(頭4桁)は共通となってし
まうため、関税分類変更基準において不利になる可能性があります。
その為、最終製品の部分品のHSコードに分類されるのかどうか、他の類
への分類される余地の有無を検討する事は関税削減において非常に重要です。
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