関税の不正を暴く関税中央分析所の業務内容を一部まとめてみました。
目次
関税中央分析所とは?
関税中央分析所は最新技術にて高度な貨物の分析を行う機関であり
一般的な測定方法で貨物の分析ができない場合に使われます。
品名や外観だけでHSコードの選定ができない事は多々あります。
例えば食品、農水産品、無機(有機)化学品、高分子関係などは
特殊な機器を使用しなければHSの選定が困難な物が多いです。
更に該当するHSコードにより関税率が変わる場合なども
正確なHS分類作業を行うために関税中央分析所が活躍します。
分析依頼までの流れ
一般的な流れは税関にて貨物を直接確認した後、
各税関にある分析機器等で貨物のHSコードの特定を行いますが
それが困難な場合に各税関から関税中央分析所へ貨物を送付し、
分析依頼をするという形になります。
私が担当した貨物にもこういった分析が必要になったケースがあります。
その貨物は「天然のもの」と「人工のもの」で関税率が変わる貨物でした。
輸入者の説明によると「天然のもの」との事でしたが
通関手続きにおける貨物検査の際にそれが本当に天然のものかどうかを
その場での税関検査では確認ができなかったため、通関は仮の許可となり、
後日事後確認という形で関税中央分析所へ該当品目が送られました。
分析結果はそこから約2週間ほどかかりましたが
「天然のもの」ではないと通知されました。
仮に許可を得ていた貨物は修正申告という形になり、
相応の関税の差額、加算税を納付する形になりました。
説明内容と分析結果が異なる場合
貨物内容の説明によってHSコードは変化し、関税率も変化します。
もし、悪意のある輸入者が事実よりも都合の良いHSコード(関税率の安い方)に
自己の貨物を分類させようと税関職員を誘導すれば
たちまち関税中央分析所の分析によってブロックされてしまいます。
税関に対してな安易な貨物内容報告はしない事をお勧めします。
悪意の有無に関わらず、
過少申告加算税、重加算税の対象になりますのでご注意下さい。
犯則物件の調査
関税の分類だけではなく犯則物件の調査でも関税中央分析所が活躍します。
FTA/EPA等特恵関税を適用させるために虚偽の申告をした貨物など
不正の有無を確かめる為の分析です。
貿易と関税 2018年 05 月号の12Pに関税中央分析所の業務内容を示した
グラフがありましたので引用させていただきます。
貿易と関税 2018年 05 月号より引用
※関税分類の業務が減っているわけではなく犯則調査の業務の割合が増えている
以前は関税分類が主な分析の目的でしたが、最近は犯則物件を対象とした業務の
割合が大幅に増えているようです。
FTA/EPAの拡大により品目ごとの関税率の差が出ているので
こういった業務は今後も増えていくのかと思います。
原産地の特定
FTA/EPAの原産地規則を満たして関税削減をするためには
どの国で何を調達したのかが重要になりますので
特恵税率の適用可否を検討する際は貨物の原産地判定が非常に重要です。
関税率を低く抑える目的で原産国を偽るケースもありますので
そういった際に関税中央分析所の分析によって正確な原産地を特定する事も
可能となっているようです。
その方法の一つに安定同位体比分析というものがあります。
水素(H)、炭素(C)、窒素(N)酸素(O)には、質量数が異なる安定同位体あり
これらの同位体の存在割合はほぼ一定ですが、環境により僅かに異なります。
同位体比は、環境や食物の同位体比を反映して僅かに変化するため
原産国の環境を判別し、申告内容と一致するかどうかを調査する事が可能です。
安定同位体比等の分析は、水素、炭素、窒素及び酸素の安定同位体を測定し、
産地判定、食品の産地予想、天然はちみつの判定も可能となります。
各国との連携によってこういったデータの共有を行う事により
より精度の高い分析が可能となっております。
動植物のDNA判定
DNA判定の技術を用いる事によって
育成者権で保護されている種苗品種かどうかを判定する事も可能なうえ、
ワシントン条約で保護されている動植物かどうかも判別可能です。
日本の分析技術
関税中央分析所の最新技術は大変優れたものであり、
WCOの地域税関分析所として日本が最初に設立されており
国内の税関分析部門への技術指導だけでなく
海外への技術指導、技術支援を行うほどであります。
生半可な知識で輸入者の都合のよい方に税関職員を誘導しても
必ず大きなしっぺ返しが来ますので申告は正しく行いましょう。
過少申告加算税、重加算税を払う位なら最初から正確な申告をする方が
トータルで最高の関税削減となりますのでくれぐれも関税中央分析所を
敵にしない事を強くお勧めします。
コメントを残す