一般特恵関税では輸入国以外の国の原料を元に製造された製品は
実質的変更基準を満たさなければ特恵関税の適用が受けられませんが
これとはまた違った救済措置に累積という考え方があります。
累積とは原料の一部が輸入国以外の第三国の原料を使用していても
あらかじめ特定された国の原産のものであれば
当該貨物の輸入国の物として認めてもらえるという措置です。
ちょっと分かりにくいかもしれませんので例を挙げてみます。
一般特恵関税での累積という規則はこの記事執筆時点では
東南アジア諸国の累積があります。
東南アジア諸国とは以下の5か国を指します。
1.インドネシア
2.マレーシア
3.フィリピン
4.タイ
5.ベトナム
一般特恵関税の累積という考え方では上記の5か国は
同じ国とみなす事が可能です。
輸入貨物がインドネシアで製造されたが
原料はフィリピン産であるという場合でも累積を適用できれば
インドネシア産として特恵関税の適用が受けられるという事になりますので
東南アジア諸国の累積は一般特恵関税適用上非常に重要です。
また、もう一つお得な条文が関税暫定措置法第26条3項に以下のような
規定があります。
生産行為のみでは原産地基準を満たさない場合であっても、
上記5ヵ国の うちの2以上の国における生産行為が
当該最終的な産品の生産国において行われたとみなすこと により、
当該輸出国を最終的な産品の原産地と認めることが可能。
これはどういう事かを説明させていただきます。
以下の税関セミナースライドの4Pをご覧ください。
上記の例はベトナム産のカカオペーストを日本に輸入し
特恵関税の適用を受けたいケースです。
カカオペースト(HS1803.10)の品目別分類規則を見ると
「カカオ豆からの製造」という条件があります。
つまりベトナムからのカカオペーストの原料を第三国で調達する場合
その原料は「カカオ豆」しか認められません。
しかし上記スライドの例ではA国から牛乳を輸入し、
それを原料としているのでカカオ豆以外の原料を第三国から輸入して
製造する場合は品目別分類規則を満たさない貨物となります。
しかし先ほど紹介した関税暫定措置法第26条3項を見ますと
上記5ヵ国の うちの2以上の国における生産行為が
当該最終的な産品の生産国において行われたとみなすこと により、
当該輸出国を最終的な産品の原産地と認めることが可能
とありますのでインドネシアとベトナムの2か国が関わって作られた
カカオペーストは上記の規則を満たす事になりますので
第三国であるA国の牛乳が入っていてもベトナム産として認められます。
非常に細かい内容ですが
これを知らずに延々とA国の牛乳がある事を理由に原産地証明書を
発行せず、通常の税率で何年も継続して輸入をしたら
一体どれほどのムダ関税を払う事になるのでしょうか?
ちょっと恐ろしいですよね?
原産地規則は理解が非常に困難ではありますが
これを理解し、自社の貨物に適用できる事がわかれば
その恩恵は計り知れないものになりますので
是非頑張ってご活用ください。
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