目次
EPA/FTA 全般について
EPA/FTA 全般
Q.EPA や FTA とはどのようなものですか?
A.EPA とは、「経済連携協定(Economic Partnership Agreement)」の略称、FTA とは、「自由貿易協定(Free Trade Agreement)」の略称であって、いずれも国・地域間の輸出入に係る関税の撤廃・削減等を定めた国際協定です(EPA は左記の内容に加えて「投資ルールの整備」、「ビジネス環境の整備」、「知的財産保護の強化」等を含む包括的な協定です)。
Q.EPA によって得られる具体的なメリットはどのようなものがありますか?
輸出企業にとっては、関税削減を通じた輸出競争力の維持又は強化の面でメリットがあり、他方で、外国に投資財産を有する企業やサービスを提供する企業にとっては、海外で事業を展開しやすい環境が整備されるという点でメリットがあります。
Q.産品の輸出入時に EPA に基づく特恵関税率の適用を受けるにはどうすればよいでしょうか?
産品の輸出入時に EPA を利用して撤廃・削減された関税率の適用を受けるには、各 EPA に定められた手続が必要です。EPA 毎に異なる場合もございますが、基本的な手続は、以下のとおりです。
(1)利用条件を確認
① 輸出入を予定している国との間で EPA は発効しているか?
④ 輸出入を予定している品目の HS コードは?
③ 産品に適用される EPA 特恵関税率は?
⑤ 産品が協定で定められた原産地規則を満たしているか?
⑥ 輸出締約国から輸入締約国への産品の輸送手段は積送基準(原則、直接輸送)を満たしているか?
→上記①~⑤が全て明らかになっていることを確認後、以下(2)の手続へ
(2)必要書類を用意・提出
⑥ 輸出締約国(日本 or 相手国)の原産地証明書(CO)発給機関において、CO の発給を申請、自己証明制度が採用されたEPAでは原産品申告書等を作成する。
⑦ 輸入通関の際、輸入締約国税関に発給された CO を含む必要書類を提出(詳細は輸入締約国税関に御確認ください)→輸入締約国税関が EPA 特恵関税率の適用可否を決定します。
Q.EPA 特恵関税率や原産地規則について、日アセアン EPA(AJCEP)とアセアン各国との二国間 EPAはどのような関係にあるのでしょうか?
日アセアン EPA(AJCEP)とアセアン各国との二国間 EPA はそれぞれ独立した協定であり、いずれの協定も利用可能です。どの協定を利用されるかは、適用される特恵関税率や原産地規則等を比較の上、ご判断ください。なお、複数の国との間で結ばれた協定である日アセアン EPA では、複数の締約国で加工した際には域内原産割合)を計算するにあたって、アセアン各国で原産品となったものを付加価値に合算することができます
関税について
Q.EPA/FTA 特恵関税率とはどのようなものですか?
通常、産品の輸出入を行う際、輸入側の国が定める関税を支払う必要があります。WTO 協定では、WTO 加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことを約束する WTO 協定税率が定められており、その税率が国定税率より低い場合、WTO 全加盟国・地域からの産品に対して等しく適用されます(国定税率と WTO 協定税率のいずれか低い税率は、実行最恵国関税率(=MFN(MostFavored Nation)税率と呼ばれます)。
EPA/FTA では、MFN 税率よりも低い関税率(EPA/FTA 特恵関税率)が規定されており、原産地規則等の条件を満たすことにより、EPA/FTA を締結していない他の国よりも低い税率で輸入することが可能になります。
Q.日本に輸入しようと考えている特定の産品の EPA 特恵関税率を知りたいのですが?
日本との間における EPA 発効状況及び取扱産品の HS コードを御確認いただいた上で、税関ホームページにて適用される EPA 特恵関税率をお調べください。
① HS コードや関税率の照会を行いたい場合
(輸出入通関手続や税番・税率等に関するお問合せ(税関))
② 現時点での HS コードに対応する MFN 税率や EPA 特恵関税率を調べたい場合
(実行関税率表(税関))
更に詳しく知りたい場合は、以下もご覧ください。
③ 各 EPA における毎年の EPA 特恵関税率(税関):
撤廃・削減途中の品目については、EPA 特恵関税率は年々変わる場合があります。
④ 日本の発効済経済連携協定(EPA)本文(外務省):
外務省HP
Q.日本から輸出しようと考えている特定の産品の EPA 特恵関税率を知りたいのですが?
日本との間における EPA 発効状況及び取扱産品の HS コードを御確認いただいた上で、各 EPA の譲許表より EPA 特恵関税率をお調べいただくか、現地輸入者等を通じて相手国側税関又は日本貿易振興機構(JETRO)の窓口までお問合せください。
なお、JETRO ホームページ上の「世界各国の関税率」にて、世界各国の MFN 税率やEPA特恵関税率等を調べることができます。日本在住者であれば、JETROホームページからのユーザー登録を経た上で、無料で利用できます。ただし、本サイトは、各国当局の発表をとりまとめた参考情報から作成・公表されているものですので、実際に適用される関税率については、輸入国税関へ御確認ください。
日本貿易振興機構(JETRO) お客様サポート部 貿易投資相談課
TEL: 03-3582-5651
(世界各国の関税率(JETRO)):
Q.EPA を締結していない国については、どういった関税率が適用されるのでしょうか?また、それを調べるためにはどうすればよいでしょうか?
日本に産品を輸入する場合、EPA を締結していない WTO 加盟国に対しては当該産品に対する実行最恵国関税率(=MFN(Most Favored Nation)税率※)が適用されます。
なお、開発途上国又は地域から特定の産品を輸入する場合は、EPA を締結していなくても MFN 税率と比較して低い関税率を適用する制度があります。
日本から産品を輸出する場合、輸出先が EPA を締結していない国の場合は、基本的にその国における MFN 税率が適用されます。
※WTO(世界貿易機関)で決められた原則に基づき、WTO 加盟国に対して共通に適用される税率です。日本へ産品を輸入する場合は、基本税率、暫定税率、WTO 協定税率のいずれか低い税率がMFN 税率となります。
Q.日本以外の第三国間の EPA/FTA における EPA/FTA 特恵関税率を知りたいのですが?
各 EPA/FTA の譲許表より EPA/FTA 特恵関税率をお調べいただくか、JETRO ホームページ上の「世界各国の関税率」にて第三国間の貿易に適用される関税率(MFN 税率、EPA 特恵関税率等)を調べることが可能です。なお、上記サイトは、各国当局の発表をとりまとめた参考情報から作成・公表されているものですので、実際に適用される税率については、輸入国税関へ御確認ください。
Q.HS コードとはどのようなものですか?
国際条約(※)に基づいて品目毎に定められているコードです。「類(=上 2 桁)」、「項(=上 4 桁)」及び「号(=上 6 桁)」にそれ以下の「統計細分」を加えた番号から成っています。「号(=上 6 桁)」までは、世界共通ですが、それ以下の「統計細分」は、その桁数も含め国毎に定められます。
例えば、日本では、「統計細分」が 3 桁であるため、全9 桁の番号で分類・標記され、品目毎のMFN税率や EPA 特恵関税率は、9 桁細分レベルで定められています。
例):「排気量 3,000cc 超ガソリン乗用車」(=HS コード 6 桁「8703.24」)
日本 =「8703.24.000」
→統計細分は 9 桁で、「8703.24」以降は 1 ラインのみ。
ペルー=「8703.24.1000」、「8703.24.9010」、「8703.24.9020」、「8703.24.9090」
→統計細分は 10 桁で「8703.24」以降は 4 ラインに区分(2 輪/4 輪駆動等で区分)。
※商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and
Coding System)に関する国際条約(HS 条約)
Q.輸出入に際し、EPA の利用を考えているのですが、取扱品目の HS コードはどこで確認すれば良いですか?
輸入と輸出で異なります。
<日本に輸入する場合>
日本税関にお問合せください。日本税関には、HS コードや関税率に関する「事前教示制度」がございます。
(輸出入通関手続や HS コード、関税率等に関するお問合せ(税関))
<日本から輸出する場合>
輸出先の国の税関にお問合せください。その際、何かお困りの場合は、JETRO 担当窓口までお問合せください。
お客様サポート部 貿易投資相談課 TEL: 03-3582-5651
Q.HS コードが変わることはあるのでしょうか?
品目により、経年で変わることがあります。5 年毎の「上 6 桁」の変更と、毎年一部品目での「統計細分」の変更があります。「上 6 桁」の変更については、世界の貿易実態の変化に合わせて、HS 条約の附属書が改正されるためです(改正は 1992 年以降 5 年毎に実施)。この HS 条約の改正に基づいて、「上 6 桁」以下の国毎の「統計細分」コードについても、各国毎の判断に基づいて改正が行われます。
なお、HS 条約の附属書改正に基づかない「統計細分」コードの改正も必要に応じて行われており、日本では、毎年一部品目で改正がなされています。
Q.取扱産品の HS コードが事前に把握していたものとは異なることが通関の際に判明し、従来想定していた関税率が適用されなかったのですが、このような事態を防ぐにはどうすればよいでしょうか?
実際に輸出入される産品がどの HS コードに分類されるかの最終判断は、輸入国税関によってなされます。そのため、事前に想定していた HS コードが、輸入国税関の解釈と異なることが原因でこのような自体が生じ得ると考えられます。つきましては、このような事態を回避するため、事前教示制度を利用する等の方法により、取扱産品の HS コードを輸入国税関にて事前に御確認ください。なお、日本への輸入の際は、事前に日本税関に御確認ください。
Q.EPA の譲許表とは、どのようなものですか?
EPAの物品貿易分野における品目毎の関税優遇措置の内容を示した表のことであり、日本が締結した EPA の場合、協定附属書 1 がこれに該当します。なお、協定では、締約国それぞれの譲許表が作成されます。日本が締結した EPA の譲許表中には、主に以下の内容が記載されています。
① HS コード:日本側は上 6 桁まで、相手国側は基本的に国内細分まで記載
② 品名(ディスクリプション)
③ 区分:協定で定められた関税撤廃・削減等の区分(方式)を、記号によって記載
(例)日フィリピン EPA:
「A」=協定発効日に関税撤廃(EPA 特恵関税率は 0%)
「B5」=発効日から行われる基準税率から無税までの 6 回の毎年均等削減により 6 年目の引き下げ日に撤廃
「X」=協定における約束の対象外(=通常の関税率(MFN 税率)が適用される)
④ 基準税率(ベースレート):一定期間(5、10 年間など)かけて関税を撤廃・削減する品目について、引き下げの基準となる税率(即時撤廃、除外の譲許品目については、記
載なし)
Q.各 EPA の譲許表は、どこで調べられますか?
外務省ホームページにおいて、日本が締結した EPA(署名済みのもの含む)の協定文及び附属書を公表しております。以下のサイトを御参照ください。
(経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)(外務省)):
(発効済 EPA における EPA 税率に関する附属書(Annex)):
Q.EPA 特恵関税率は、どのように引き下がっていくのですか?
日本が締結した EPA における特恵関税率の撤廃・削減の基本的な方式には、大きく分けて 2 種類あります。
① EPA 発効と同時に撤廃(EPA 特恵関税率は 0%)
② EPA 発効後、一定期間をかけて関税を撤廃または削減(毎年均等に引き下げられるのが一般的)
Q.EPA 特恵関税率の引き下げは、どの時点(何月何日)に行われますか?
1 回目の引き下げは、基本的には協定発効日となります。それ以降の引き下げについては、協定毎に基準日が定められています。 日本は年度区切りの 4月1 日を引き下げ日としており、他国は 4月 1日または 1 月 1 日を引き下げ日としています。
【日本が締結した EPA における 2 回目以降の引き下げ日】
4 月 1 日:日本、メキシコ、タイ、ブルネイ、フィリピン、ラオス、ミャンマー、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP11、日EU、日米貿易協定
1 月 1 日:チリ、インドネシア、マレーシア、カンボジア、スイス
※シンガポール側は発効時に全品目の関税を撤廃したため、毎年の関税引き下げ日は存在しない。
Q.EPA 以外にも関税が減免される制度が存在すると聞きましたが、どのような制度ですか?
EPA 特恵関税率以外にも開発途上国又は地域から日本へ特定の産品を輸入する場合、一般特恵制度(Generalized System of Preferences)(※)により、MFN 税率より低い関税率(GSP 税率)での輸入が可能です。ただし、日本との EPA が発効済の国の場合、GSP 税率が適用されないケースがございますので、事前に日本税関のホームページにて御確認ください。
※一般特恵制度(GSP):先進国が、国連貿易開発会議(UNCTAD)での合意に基づき、開発途上国又は地域(後発開発途上国(LDC)は別途制度が存在)から輸入される特定の物品について、自主的に WTO 譲許税率より低い関税率を適用する制度。
(特恵関税制度(外務省)):
Q.EPA が発効すると一般特恵制度(GSP)は利用できなくなるのですか?
EPA により関税の撤廃・削減が約束された品目では、原則として、EPA の発効日以降に税関に対して輸入申告する物品については、一般特恵税率(GSP 税率)の適用対象外となります。ただし、一般特恵の対象品目であって、GSP 税率が EPA 税率を下回る品目及び EPA において関税の撤廃・削減が約束されていない品目については、引き続き GSP 税率の対象となります。なお、後発開発途上国(ラオス、ミャンマー、カンボジア)については、EPA 発効後も引き続き全ての一般特恵対象品目について特恵税率の適用が可能です。
各 EPA 締約国における GSP 対象品目につきましては、日本税関のホームページにて御確認ください。
(GSP 税率の適用が可能な品目(税関))
Q.「税率逆転」とはどのようなものですか?
MFN 税率が EPA 特恵関税率と同等もしくは低い状態(MFN 税率≦EPA 特恵関税率)を指します。EPA 特恵関税率は通常適用される税率(=MFN 税率)より優遇されるという性質から、 基本的には「EPA 特恵関税率<MFN 税率」となります。
他方、日本を含めた世界各国では、国内事情等を勘案して MFN 税率を変更することがあります。EPA 締結後に、MFN 税率の引き下げが行われた場合、結果として、「MFN 税率≦EPA 特恵関税率」が生じる可能性がありますので、輸出入に際しては輸入国側における EPA 特恵関税率及び MFN 税率を事前に御確認ください。
Q.MFN 税率と EPA 特恵関税率を比較したいのですが?
以下を御参照ください。
<日本に輸入する場合>
日本税関のホームページの「実行関税率表」にて御確認ください
<日本からの輸出または第三国間同士の輸出入の場合>
各 EPA 譲許表より EPA 特恵関税率をお調べいただくか、JETRO ホームページの「世界各国の関税率」を御活用ください。なお、上記サイトは、各国当局の発表をとりまとめた参考情報から作成・公表されているものですので、実際に適用される税率については、輸入国税関へ御確認ください。
原産地規則について
Q.ある EPA で日本原産と判定された製品は、他の EPA でも原産品となりますか?
ある EPA において原産品となったものが、自動的に他の EPA における原産品となるわけではなく、それぞれの EPA で規定されている原産地規則を満たす必要があります。例えば、日アセアン EPA(AJCEP)で原産品となったとしても、日ベトナム EPA を利用するためには、日ベトナム EPA の原産地規則を満たせるか否か確認する必要があります。
Q.国内で採掘された鉱物資源を輸出する際に EPA を利用できますか?(完全生産品について)
締約国内で原材料レベルから全て生産/生まれ、成育された/採取された産品(完全生産品)については、EPA を利用できます。典型例として鉱物資源の他に農水産品(動植物・魚介類等)が挙げられます。
Q.製品を日本国内で組み立て、輸出します。当該製品の部品は全て輸入した原材料を用いて日本国内で製造されたものです。このような場合に EPA を利用できますか?利用できるとしたら完全生産品となりますか?(「原産材料のみから生産される産品」について)
日本国内で製造した部品の全てが(当該 EPA における)日本の原産となる場合に、「原産材料のみから生産される産品」として EPA を利用できます(「完全生産品」にはなりません)。最終製品に「非原産」の部品が一つでも使用されている場合は、「原産材料のみから生産される産品」には該当せず、原産品と判定されるためには、利用する EPA ごとに規定されている当該最終製品の品目別規則(PSR)等を満たす必要があります。
Q.外国から原材料を輸入して加工するとき、満たすべき要件はありますか?
非原産材料を用いて最終産品を生産する際には、利用を予定している EPA ごとに規定されている産品(HS コード別)の品目別規則(PSR)を満たす必要があります。PSR は関税番号変更基準(CTC)、付加価値基準(VA)、加工工程基準(SP)のいずれかもしくはこれらの組合せによって構成されています。PSR は、各協定、各 HS コードによって異なりますので、利用される EPA の PSR 等を御確認ください。
Q.輸出したい産品と、その原材料(非原産材料)が同じ HS コードなのですが、EPA を利用できますか?
輸出したい産品に適用される PSR が関税番号変更基準(CTC)の場合には、HS コードに変更がないと原産性は認められませんが、当該原材料(非原産材料)がデミニマス規定を利用できる場合にはCTC を検討できます。また、付加価値基準(VA)はHSコードに影響されませんので、域内原産割合を満たせば原産性が認められます。
Q.品目別規則(PSR)に HS コードが存在しない場合は、どの規則が適用されますか?
日アセアン EPA(AJCEP)や日スイス EPA、日ベトナムEPA、日インド EPAでは、協定本文や附属書中に非原産材料を使用して得られる産品が原産品として認められるための条件(一般規則)が規定されています。品目別規則(PSR)に HS コードが存在しない場合は、この一般規則を満たす必要があります。
<参考>
AJCEP:RVC 40%又は CTH(協定第 26 条)
日スイス EPA:RVC 40%又は CTH(協定附属書 2 第 4 条)
日ベトナム EPA:LVC 40%又は CTH(協定第 26 条)
日インド EPA:QVC 35%及び CTSH(協定第 29 条)
※ただし日スイス EPA では工場渡し価額(ex-works price)を採用
Q.ベトナムで製造された部品を、日ベトナム EPA における原産地証明書を取得して日本に輸出します。当該部品を用いて最終製品を日本で組み立てる際に、ベトナムから調達した部品を原産材料とすることができますか?(累積について)
ベトナムの原産品 X が、日本で生産される産品 Y の材料として使用される場合、産品 Y の原産資格の判定に際して、産品 X も日本の原産材料と見なすことができます。 なお、日アセアン EPA(AJCEP)においては、協定が発効した国のみにおいて原産品となりますので、日アセアン EPA 未発効国であるインドネシア(平成 28 年 6 月現在)において品目別規則(PSR)を満たしたとしても、原産品として認められません。
Q.タイ、ベトナムの順で加工し、日アセアン EPA(AJCEP)を利用して日本に輸出する予定です。タイで部品を製造しましたが、付加価値基準(VA)40%を満たすことができませんでした。しかし、タイとベトナムにおける加工はそれぞれ最終産品の 30%、20%の付加価値(計 50%)に値する加工を行い、品目別規則(PSR)で規定される付加価値基準(VA)40%を越えます。この場合は日アセアン EPA におけるベトナム原産品となりますか?(日アセアン EPA における累積の取扱いについて)
タイ、ベトナムそれぞれにおいて、製造される産品の品目別規則(PSR)を満たす必要があります。タイで部品を製造し、さらにベトナムで加工して最終産品を輸出するときに、タイで加工された部品がタイの原産品とならない場合は、タイ、ベトナムで加工した最終産品の付加価値分を合算(20%+30%)して最終産品の VA を満たすということはできません。タイで加工された当該非原産の部品は、ベトナムで加工される際に 100%非原産と扱います。
他方、仮にタイで加工を行ったときに部品がタイの原産品となる場合、ベトナムで加工するにあたり、当該部品の価額を 100%原産と扱うことができます。
なお、上記のような場合に、付加価値が合算できるか否か(上記の例でいえば、タイでの加工によって生まれた付加価値をベトナムにおける付加価値として合算できるか否か)を、どのような書類によって原産地証明書の発給当局が判断するかについては、各締約国の発給当局等にお問合せください。日本の指定発給機関である日本商工会議所においては、日アセアン EPA(AJCEP)に基づいて、他の締約国において発給された原産地証明書を立証資料とすることができます。また、アセアン各国との二国間 EPA と日アセアン EPA は別個の協定であるため、例えば、日マレーシア EPA や日フィリピン EPAにおける原産品を、日アセアン EPA におけるマレーシア原産品、フィリピン原産品とすることはできません。
Q.走行不能な自動車から回収した部品を、EPA を利用して輸出できますか?
完全生産品の条文の一つとして、「当該締約国における製造若しくは加工作業又は消費から生ずるくず及び廃品であって、処分又は原材料の回収のみに適するもの」(又はそれに類する事項)が規定されている場合は利用することが可能です。例えば、締約国内で回収された、修理できないほどに故障した自動車で、既に走行するなどの自動車本来の目的は果たさないが、エンジン等の部品や鉄スクラップ等を回収する目的で収集されたものは当該規定に当てはまり、EPA 利用の対象となると考えられます。
各協定によって異なりますので、利用される協定の条文を御確認ください。
Q.中国(非締約国)から部品を輸入し、日本で製品に加工しています。EPA を利用して当該製品をアセアン諸国に輸出したいのですが、必要な手続はどのようなものですか?
EPA を利用して産品を輸出する場合、
① 輸出相手国が、EPA を利用可能な国であることを確認し、
② 輸出する産品の HS コードを特定し、
③ 当該協定の EPA 特恵関税率が MFN 税率より低くなっていること、
④ 当該協定の原産地規則を満たしていることを確認し、
⑤ 特定原産地証明書を申請、入手する必要があります(原産地証明書は、EPA税率適用のため輸入国税関に提出される必要があるので、輸入者に送付します)。
原産地規則を確認するにあたって、個別の産品については、品目別規則(PSR)を満たす必要があります。その他にも、積送基準等の必要なルールを満たす必要があります。
Q.中古品を輸出したいのですが、EPA 特恵の対象となりますか?
中古品であっても、原産性の証明ができれば原産地証明書発給の対象となります。
他方、中古品の場合には、製造後、消費を経て輸出に至る流通過程において、補修・改造等が施されている可能性があるため、製造当時の原産性が変わってしまう場合も考えられます。そのため、原産品判定の依頼の際、製造当初の原産性を遡って立証し、かつその原産性が保持されているか否か等について確認するため、メーカー等から過去の履歴等に係るデータ・書類等を入手して提出していただくことが必要になる場合があることにご留意ください。
Q.国内で回収した材料で産品を生産する場合、原産品としてよいでしょうか?
日本において製造や消費等から生じたくず、廃品(ただし、くず、廃品が処分や原材料の回収のみに適するもの)、またはそれらの産品のみから生産される産品であれば、EPA を利用できます。輸入したくずや廃品を原材料として使用される場合は、品目別規則(PSR)を満たす必要があります。
Q.付加価値基準(VA)を満たすために必要な域内原産割合(RVC)はどのように算定しますか?また、付加価値基準(VA)を満たすために留意すべき事項等はありますか?
産品の域内原産割合(RVC)は、主に次の式を用いて算定します。
RVC=(FOB-VNM)/FOB ×100%
FOB とは、産品の「本船渡しの価額」をいいます。また、VNM とは、産品の生産に使用される「すべての非原産材料の価額」をいいます。
留意すべき事項としては、付加価値計算にあたっては、単に FOB のうち利潤部分を算定することのみによっては付加価値基準(VA)を満たしたことにはならず、当該産品が実際にその国で生産工程を経る必要があります。
Q.産品の FOB(本船渡しの価額)は存在するが、不明な場合はどの価額を使用しますか?
確認可能な最初の支払い価額を使用します。
Q.VNM(非原産材料の合計価額)とは何の価額を使用するのでしょうか?
輸入材料の場合は、その輸入価額(CIF)を使用します(国内で材料を調達する場合等)。原産性が不明な場合については、これを非原産材料として扱い、その価額を VNM(非原産材料の合計価額)に加算します。
Q.生産者と輸出者が異なる際に、付加価値(VA)の域内原産割合の算出に輸出者の負担する費用又は利益を含めて計算してもいいのでしょうか?
産品の FOB(本船渡しの価額)に含めて問題ありません。
Q.品目別規則(PSR)に基づき原産性を判定する際に、原産材料である証明ができない材料の取扱いはどうすればよいのでしょうか?
非原産材料として考慮します。
Q.関税番号変更基準(CTC: Change in Tariff Classification)とはどのようなものですか?
関税番号変更基準(CTC: Change in Tariff Classification)とは、最終産品とその生産に使用される非原産材料の関税番号を比較し、
2 桁(CC: Change in Chapter(類変更))、
4 桁(CTH: Change in Tariff Heading(項変更))又は
6 桁(CTSH: Change in Tariff Sub-Heading(号変更))
レベルで必要とされている変更がなされているかどうかにより原産品か否かを判断する基準であり、何桁での変更が必要かは産品(HS コード)ごとに定められます。例えば、日アセアン EPA(AJCEP)においては、革かばん(42.03)を輸出したい場合、品目別規則(PSR)に基づき 2桁の変更(CC)が必要ですが、なめし皮(41.11)を輸入し、国内で加工して革かばん(42.03)を製造すれば第41類から第42類に変更したことになり、CC を満たしますので、革かばん(42.03)は AJCEP に基づく原産品として認められます。
Q.EPA を使って輸出する際に、輸出する産品の原材料の原産性を調べる必要がありますか?
輸出しようとする産品の原材料として非原産材料を使用する場合には、産品が品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する必要があります。また、締約国内で非原産材料から生産した部分品を用いて最終産品を生産する場合には、同部分品についての PSR を確認する必要があります。使用する原材料の全てが、利用する予定のEPA上の原産品と判明しているならば、「原産材料のみから生産される産品」となることから、輸出しようとする産品は原産品となりますので、PSR は確認する必要はありません。したがって、まずは原材料の原産性について確認する必要があります。
なお、原材料が原産材料である場合には、そのことを示す必要があります。詳細は、「原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示」をご覧ください。
Q.関税番号変更基準(CTC)について、どのレベルまで HS コードを調べる必要がありますか?
生産において使用する非原産材料の HS コードと、生産される産品の HS コードを比較して、求められる変更のレベル(産品(HS コード)ごとに定められます)を満たすかどうかを確認をする必要があります。
なお、関税番号変更基準(CTC)は、非原産材料にのみに適用されますので、使用する材料が非原産材料か否かについては、原材料の調達先に確認していただく必要があります。
ただし、材料の原産性にかかわらず、産品との比較で明らかに HS コードが CTC 上求められるレベルで変更する場合には、HS コードが特定されていれば、あえてその原産性をさかのぼって確認する必要はありません。
Q.関税番号変更基準(CTC)を適用するにあたって、全ての原材料を確認する必要がありますか?例えば、産品に 5%しか含まれていない原材料まで HS コードを確認する必要がありますか?
関税番号変更基準(CTC)を適用するにあたり、輸出しようとする産品と全ての非原産材料(海外から調達した部品等)の HS コードを比較し、原則、全ての非原産材料について CTC を満たしているか確認する必要があります。しかし、特定の産品については、CTC を満たさない非原産材料の価額(又は重量)の合計が産品の総額(又は総重量)の一定割合以下の場合には、当該非原産材料を考慮しなくてよい規定(僅少の非原産材料(デミニマス規定))があります。ただし、産品の原産判定にあたり、いかなる非原産材料でも一定割合を適用除外してよいわけではありませんのでご注意ください。
Q.僅少の非原産材料(デミニマス規定)とはどのようなものですか?
僅少の非原産材料(デミニマス規定)とは、関税番号変更基準(CTC)の適用に当たり、CTC を満たさない非原産材料の総額又は総重量(繊維製品)が特定の割合以下の場合、当該非原産材料については、当該産品が原産品であるか否かを決定する際に考慮しないこととできる規定です。対象となるHS コードと適用範囲の割合は、協定によって異なりますので御確認ください。
Q.デミニマス規定の対象と基準はどのようなものですか?
日本が締結している各協定のデミニマス規定の対象と基準は(DMI)僅少の非原産材料の解説をご覧ください。
Q.域内原産割合(RVC)の計算において、輸出しようとする産品の原産材料に含まれている非原産材料の価額も、非原産材料の価額(VNM)に加える必要がありますか?(「ロールアップ」について)
域内原産割合(RVC)の計算における非原産材料の価額(VNM)の扱いについては、「ロールアップ」のルールがあります。この「ロールアップ」ルールにより、輸出しようとする産品の生産に使用される原材料の中に非原産材料が使われていたとしても、当該原材料が「原産品」と判断される場合には当該原材料の価額を100%原産と扱うことができるため、当該原産材料の中の非原産材料の価額を、域内原産割合(RVC)計算式の中の VNM に加える必要はなくなります。
Q.域内原産割合(RVC)の計算において、輸出しようとする産品の非原産材料に含まれている原産材料の価額を原産として考えてよいですか?(「ロールダウン」及び「トレーシング」について)
EPA によって異なります。例えば、日アセアン EPA(AJCEP)では、輸出産品の生産に使用される原材料が「非原産品」と判断された場合に、たとえ当該非原産材料の中に日本又は締約国原産の材料が含まれていたとしても、当該原産材料の価額は 100%非原産として扱います。つまり、原産部分を差し引くことなく、当該非原産材料の価額全体を非原産材料の価額(VNM)に含めます(「ロールダウン」ルール)。
他方、例えば、日マレーシア EPA においては、輸出しようとする産品の生産に使用される原材料が非原産材料と判断された場合でも、当該非原産材料に含まれる締約国原産の原材料の価額を原材料全体の価額から差し引くことができます(原材料のうち、当該非原産材料のみを VNM に含めることができます)(「トレーシング」ルール)。「トレーシング」が認められている協定には、日マレーシア EPA の他、日インドネシア EPA、日フィリピン EPA、日ブルネイ EPA、日メキシコ EPA、日ペルー、日オーストラリア EPA、日モンゴル EPA があります。逆に、これら以外の日本の EPA は、「ロールダウン」ルール
となります。
Q.加工工程基準(SP)とはどのようなものですか?
加工工程基準(SP)は、締約国内で特定の生産・加工工程が実施された場合に、当該産品への原産資格を付与する方法で、一部の協定に採用されています。例えば、化学製品について「化学反応」等、半導体製品について「拡散工程」の基準があります。詳細は、各協定の品目別規則(PSR)を御確認ください。
Q.「累積」とはどのようなものですか?
日本で生産される産品 Y の材料として、ある EPA 締約国の原産品 X が使用される場合、産品 Y の原産資格の判定に際して、産品 X も当該協定における日本の原産材料とみなすルールです。産品 Xは日本の原産材料とみなされるので、域内原産割合(RVC)の算定においては、産品 X の価額を非原産材料の価額(VNM)に算入する必要はなく、また関税番号変更基準(CTC)の適用においては、産品X が必要な関税分類番号の変更を満たすか否かを確認する必要はありません。
Q.輸送用のこん包材料やこん包容器についてまで、原産性を考慮する必要がありますか?
関税番号変更基準(CTC)又は特定の製造や加工作業が行われたか否かを決定するに当たり、原産性を考慮しません。他方、域内原産割合(RVC)を算定する際には、原産材料とみなす協定もあります。規定は、協定によって異なりますので御確認ください。
Q.小売用の包装材料や包装容器についてまで、原産性を考慮する必要がありますか?
関税番号変更基準(CTC)は特定の製造や加工作業が行われたか否かを決定するに当たり、原産性を考慮しません。他方、域内原産割合(RVC)を算定する際には、必要に応じて原産材料の価額として考慮できます。規定は、協定によって異なりますので御確認ください。
Q.産品の付属品や予備部品についてまで、原産性を考慮する必要がありますか?
産品の付属品、予備部品、工具、解説資料について、関税番号変更基準(CTC)を適用させる場合や、特定の製造や加工をする場合は、原産性を考慮する必要はありません。他方、域内原産割合(RVC)を算定する際には、必要に応じて原産材料の価額として考慮できます。
Q.箱詰めや組み立ててあるものの分解のみの作業であっても、EPA 特恵関税率の適用を受けることができますか?
箱詰めや分解の作業が各 EPA で定められた「原産資格を与えることとならない作業」に該当する場合には、産品の原産性が認められず、EPA 特恵関税率の適用を受けることはできません。
Q.産品を締約国へ輸出する際に直接輸送することが必要とのことですが、第三国を経由してはいけないのですか?(積送基準について)
経由国(AJCEP の場合は締約国を含む)において、産品の積替え、一時蔵置、積卸し、その他産品を良好な状態に保存するために必要な作業以外の作業が行われていない場合に限り、第三国を経由しても産品の原産資格は失われません。ただし、こうした条件を満たしていることを示す書類(通し船荷証券のコピー又は上記の作業が行われていないことを証明するもの)の提出を輸入締約国税関から求められる可能性があることにご留意ください。
Q.日本からヨーロッパ(オランダ等)に輸出して保税地域に一度保管し、そこからスイスに小出しに輸出しますが、このような場合でも EPA の適用が特恵を受けることができますか?(貨物の分割について)
日スイス EPA では、第三国における貨物の分割が認められています。ただし、第三国の保税地域における産品の加工は認められていません。なお、他の EPA における取扱いについては各輸入締約国税関に御確認ください。
Q.産品をアメリカに輸出してアメリカの子会社に販売した後、メキシコに輸出します。その場合、日メキシコ EPA の特恵を受けることができますか?(第三国で通関された産品の取扱いについて)
日メキシコ EPA に基づく EPA 特恵関税率の適用を受けるには、産品が輸出締約国から輸入締約国に直送されることが必要です。また、産品が第三国を経由する場合には、継続して当該第三国の税関当局の監督下にあることが必要です。なお、詳細は輸入締約国(メキシコ)税関に御確認いただく必要があります。なお、他の日本の EPA においても、直送が原則となっています。
Q.ある商品について取引が日本から中国、さらに中国からベトナムで行われます。商品自体は日ベトナム EPA に基づく日本の原産品であり、日本から直接ベトナムへ輸送されます。インボイス上は中国からの輸送となりますが、日ベトナム EPA の特恵関税率の適用を受けることができますか?(第三国インボイスの取扱いについて)
第三国発行のインボイスでも利用できます。他の日本の EPA においても同様です。
Q.日本から日チリ EPA に基づく日本の原産品の資格を有する産品を輸出し、ペルーにおける展示会に出品の後にチリへ販売する場合は、日チリ EPA の特恵関税率の適用を受けることができますか?
日チリ EPA において、原産品と認められる産品がペルーにおいて税関当局の監督下に置かれており、かつ積送基準を満たす場合において、当該 EPA を利用できます。
Q.原産性の確認にどのような証拠資料等(例えばサプライヤーからの宣誓書)が必要ですか?
原産品判定依頼者は、最終製品の構成部品の原産性に係る資料をサプライヤーから提出してもらい、各 EPA で定められた一定期間、これを保持しておく必要があります。ただし、当該サプライヤーからの資料や宣誓書等の内容は一律には決まっておらず、個々の取引・契約等において対応する必要があります。
経済産業省が公表している「原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示」に一例を紹介しておりますので、以下 URL より御参照ください。
Q.商品の原産地表示(例えばタグに記載された「made in Japan」との表記)と EPA における原産地規則は関係がありますか?
EPA における原産地規則と原産地表示は、関係ありません。EPA における原産地規則は、特恵関税率の適用を受けるための条件であり、原産地表示とは目的やルールが異なります。したがって、商品に「made in Japan」と記載されているからといって、当該協定において原産資格を得て、EPA における原産品として認められることにはなりません。 あくまでも当該協定における原産品として認められるためには、原産地規則等を満たし、かつそれを証明する原産地証明書が必要となります。
Q.輸入した原材料から原料を抽出し、当該原料と他の原産材料と混合して化学品を生産しています。EPA を利用して当該化学品を輸出する場合、原産材料のみからなる産品となりますか?
抽出された原料が、品目別規則(PSR)を満たしていれば原産材料となりますので、原産材料のみからなる産品とすることができます。ただし、わずかでも非原産材料を使用する場合は、当該化学品のPSR を確認する必要があります。
Q.繊維製品(糸、織物、アパレル製品)の品目別規則(PSR)はどのようなものですか?
具体的な産品の HS コードを御確認の上、ホームページ等で公開されている各 EPA の品目別規則(PSR)を御確認ください。
日本のアジア地域との EPA では、以下の「2 工程」を満たすことが必要となります。
・糸(yarn):カード・コーム工程(carding/combing process)及び紡績工程(spinning)
・織物(woven fabrics):紡績工程(spinning)又は染色工程(dyeing/printing process)、及び
織り工程(weaving process)
・メリヤス編物又はクロセ編物(knitted or crocheted fabrics):紡績工程(spinning)又は染色工程(dyeing/printing process)、及びメリヤス編み又はクロセ編みの工程(knitted or crocheted process)
・アパレル製品(第 61 類から第 63 類):メリヤス編み・クロセ編み・織り工程
(knitting/crocheting/weaving process 及び製品化の工程(making up process)
日メキシコ EPA、日チリ EPA、日スイス EPA、日ペルーEPA では、上記と異なりますので、各協定を御参照ください。
Q.アパレル製品の主素材や副資材などの原材料をどの国から持ち込んだ場合、EPA の特恵関税率の適用を受けることができますか?
例えば、締約国内の企業が委託加工を行っている場合、原産品かどうかを判定する際、以下の場合に分けて考えることができます。
(1)締約国から原材料を調達する場合
当該原材料が、全て締約国の原産材料であれば、累積規定を適用することにより、当該製品を製造する締約国の原産材料とみなされるので、品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する必要はなく、生産される当該製品は原産品となります。ただし、締約国から調達する原材料であっても、これが非原産材料である場合には、産品が品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する必要があります。他方、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料については、当該製品が PSR を満たすか否かを確認する上で考慮する必要はありません。
なお、いわゆる「主素材」及び「副資材」については、ビジネス上用いられる便宜的な用語であり、どのような材料がこれらに該当するのかについては、協定上は何ら定義されていません。したがいまして、用いられる材料が、各企業におけるビジネス上の「副資材」に当たることをもって、自動的に PSR の適用対象から除外されることにはならず、個別案件毎に検討する必要がある点にご留意ください。
(2)第三国から原材料を調達する場合
当該原材料は非原産材料であるため、これらを用いて作られるアパレル製品は、品目別規則(PSR)を満たすか否か確認する必要があります。他方、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料は、当該製品が品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する上で考慮する必要はありません。
(3)締約国から織物を調達し、第三国から副資材であるボタン、ファスナー、ワイヤー等の材料を調達する場合織物が発効済み締約国の原産材料であれば、累積を適用することにより当該製品をつくる締約国の原産材料とみなされます。また、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料は、当該製品が PSR を満たすか否かを確認する上で考慮する必要はありません。したがって、繊維に関係する材料を他に第三国から調達していないのであれば、当該ケースでは PSR を満たすか否かを確認する必要はなく、当該製品は原産品となります。ただし、締約国から調達する原材料であっても、これが非原産材料である場合には、PSR を満たすか否か確認する必要があります。
(4)僅少の非原産材料(デミニマス規定)の対象となる場合とならない場合
デミニマス規定として、第 50 類から第 63 類の産品(繊維製品)について、関税番号変更基準(CTC)を満たさない(品目別規則の関税分類の変更を起こさない)非原産材料の重量の合計が、産品の重量の一定量(7%又は 10%)を超えない範囲の場合、PSR の適用にあたり、これらの非原産材料は考慮しなくてよい旨が規定されています。したがって、非原産材料の重量割合が規定範囲内であれば、許容されることになります。
なお、アパレル製品についていえば、ボタンやワイヤーといった、繊維とは直接関係がない材料は、そもそも PSRの対象ではありません。したがって、これらの材料が非原産材料であったとしても、デミニマス規定の対象として考慮する必要はありません。一般的には、上記のような整理になると考えられますが、最終的には、個別案件毎に確認する必要があります。
Q.日本からアパレル製品の主素材や副資材などの原材料を調達し、ベトナムで加工を行い、日本に輸出する場合、日ベトナム EPA の適用を受けることができますか?
日ベトナム EPA の原産地規則を満たせば、特恵関税率の適用を受けることができます。当該原材料がすべて日ベトナム EPA における締約国(日本又はベトナム)の原産材料であれば、累積を適用することにより、当該製品を製造する締約国の原産材料とみなされるので、品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する必要はなく、原産品となります。
例えば、ベトナムで日本原産の織物のみから縫製してアパレル製品を生産した場合、日アセアン EPA(AJCEP)における原産品となります。ただし、締約国から調達する原材料であっても、これが非原産材料である場合には、産品が PSR を満たすか否かを確認する必要があります。
他方、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料は、当該製品が PSR を満たすか否かを確認する上で考慮する必要はありません。
また、当該ケースにおいては、日アセアン EPA における原産地規則を満たせば、当該 EPA の特恵も受けることができます。実際に EPA を利用される場合は、税率等を踏まえた上で、日ベトナム EPAか日アセアン EPA のいずれかを選択いただくことになります。
なお、いわゆる「主素材」及び「副資材」については、ビジネス上用いられる便宜的な用語であり、どのような材料がこれらに該当するのかについては、協定上は何ら定義されていません。従いまして、用いられる材料が、各企業におけるビジネス上の「副資材」に当たることをもって、自動的に PSR の適用対象から除外されることにはならず、個別案件毎に検討する必要がある点にご留意ください。
Q.繊維製品について中国から原材料を調達し、ベトナムで加工を行い、日本に輸出する場合、日ベトナム EPA に基づく特恵関税率の適用を受けることができますか?
中国などの、日本が EPA を締結していない第三国から輸入した当該原材料は、非原産材料となるため、当該製品の利用が想定される日アセアン EPA(AJCEP)又は日ベトナム EPA の品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する必要があります。本件の場合、いわゆる「2 工程」をベトナム国内で行う必要があります。
他方、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料は、当該製品が品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する上で考慮する必要はありません。
Q.タイから織物を調達し、また中国から副資材ボタン、ファスナー、ワイヤー等の材料を調達し、ベトナムで加工を行い、日本にアパレル製品を輸出する場合、EPA に基づく特恵関税率の適用を受けることができますか?
タイ及びベトナムは、日アセアン EPA(AJCEP)の締約国であり、またベトナムは、日ベトナム EPA を締結しているため、各 EPA の原産地規則を満たせば、それぞれの特恵を受けることができます。
(1)日アセアン EPA を利用する場合
当該織物が、日アセアン EPA におけるタイ原産であれば、累積を適用することにより製品をつくる締約国(ベトナム)の原産材料とみなされます。また、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料は、当該製品が品目別規則(PSR)を満たすか否かを確認する上で考慮する必要はありません。
したがって、繊維に関係する材料を他に第三国から調達していないのであれば、PSR を満たすか否かを確認する必要はなく、生産される製品は原産品となります。
ただし、締約国から調達する原材料であっても、これが非原産材料である場合には、PSR を満たすか否かを確認する必要があります。この場合、日アセアン EPA 締約国であるタイで「2 工程」のうち 1工程を行い、ベトナムで 1 工程を行うことにより、ベトナムの原産品となります。
(2)日ベトナム EPA を利用する場合
日ベトナム EPA 他では、当該 EPA を利用するにあたって、締約国以外に他のアセアン諸国(当該ケースではタイ)で「1 工程」を行うことが認められています。ただし、当該原材料がタイで「1 工程」を経たことの証明が必要となります。繊維とは直接関係がない材料の取扱いについては、日アセアン EPA と同様です。
なお、「1 工程」を証明する書類は各国で異なりますので、各国(当該ケースではベトナム)の発給機関に確認する必要があります。
Q.アパレル製品を締約国から日本へ輸出する際に、わずかに中国から輸入した生地が輸出しようとする産品に含まれているのですが、それについても原産地規則を満たす必要がありますか?
各協定においては、僅少の非原産材料(デミニマス規定)として、第 50 類から第 63 類の産品(繊維製品)について、関税番号変更基準(CTC)を満たさない((品目別規則の関税分類の変更を起こさない)非原産材料の重量の合計が産品の重量の一定量(7%又は 10%)を超えない範囲の場合、品目別規則(PSR)の適用にあたりこれらの非原産材料は考慮しなくてよい旨が規定されています。したがって、非原産材料の重量割合が規定範囲内であれば、許容されることになります。
なお、アパレル製品についていえば、ボタンやワイヤーといった繊維とは直接関係がない材料は、そもそも当該製品にかかる PSR の対象ではありません。したがって、これらの材料が非原産材料であったとしても、デミニマス規定の対象として考慮する必要はありません。
Q.アパレル製品を輸出する際に、中国等の第三国から輸入したボタンやシールも品目別規則(PSR)を確認する必要がありますか?
各協定の品目別規則(PSR)に関する附属書の注釈に、『アパレル製品(第 61 類から第 63 類までの産品)について、PSR は、当該産品の関税分類を決定する構成部分についてのみに適用される』、または『アパレル製品(同)の原産地を決定するに当たり、産品の生産に使用された材料であって第50 類から 63 類に分類されないものについては、考慮しない』、との規定があります。つまり、ボタンやシール等、繊維とは直接関係がない材料であって、これが当該製品の一部として使用されている場合には、当該産品の関税分類を決定する構成部分に含まれず、原産地規則を考慮する必要はありません。
他方、ボタンやシール等をアパレル製品の一部として使用せず、別途輸出する場合には、EPA上の特恵を受けるためには当該ボタンやシール等それ自体が原産品である必要があり、この場合に適用される PSR はアパレル製品のものではなく、ボタンやシール等に適用されるものとなります。一般的には、上記のような整理になると考えられますが、最終的には、個別案件毎に確認する必要があります。
Q.繊維製品をアセアン各国との二国間 EPA を利用して輸出しようとする際に、その原材料を他のアセアン諸国において加工してもいいのですか?
マレーシア、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、ベトナムとの EPA においては、締約相手国以外のアセアン加盟国(非締約国)においてなされた工程を、1 工程としてカウントすることができます。ただし、日アセアン EPA(AJCEP)においては、いわゆる「2工程ルール」のうちの1工程が他の発効済締約国で行われることは許容されますが、未発効締約国(平成 28 年 6 月現在、インドネシアのみ)における加工については許容されない(1 工程にカウントされない)点について留意が必要となります。
※なお、協定によっては、締約国以外のアセアン加盟国(非締約国)においてなされた工程を 1 工程とカウントできない品目もございます。ご利用の際は、各協定の品目別規則(PSR)を御確認ください。
Q.繊維の品目別規則(PSR)における、いわゆる 1 工程目を満たすことを証明する書類とはどのようなものですか?
日本やその他の締約国で 1 工程目を行い、2 工程目を最終産品を輸出する締約国で行うような場合、最終産品輸出国において原産地証明書を申請する際に、実際に 1 工程目を満たしているかどうかの証明を求められることがあります。証明に必要な書類は国によって異なりますので、詳しくは各国の発給機関に御確認ください。
なお、日アセアン EPA(AJCEP)において、日本で 1 工程を満たし、ベトナムで 2 工程目を満たすことにより原産地証明書を取得する際に必要な、日本における 1 工程を証明する宣誓書は、以下様式を参考する事が可能です。
出典:繊維製品の原産地規則・証明方法に関する留意事項
出典:繊維製品の原産地規則・証明方法に関する留意事項
原産地証明書について
Q.ある製品を輸出しているのですが、海外の取引先(輸入者)から、EPA の原産地証明書を送付するように要請されています。どうすればよいのでしょうか?
EPA の利用により、通常よりも低い関税率で輸入通関できますが、そのためには、輸入者は輸出者から EPA 用の原産地証明書を取得して、通関時に提出することが条件となっています。日本が締結している EPA の原産地証明書は、経済産業省の指定により日本商工会議所が発給することになっていますので、輸出者は日本商工会議所に対して原産地証明書の取得のための申請手続を行う必要があります。日メキシコ EPA、日スイス EPA、日ペルーEPA の場合、日本商工会議所に発給を申請する方法に加え、認定輸出者が自ら証明書を作成する方法があります。また、日オーストラリア EPA の場合、日本商工会議所に発給を申請する方法に加え、輸出者、生産者及び輸入者が自ら証明書を作成する方法があります。
また、日EU・EPA、TPP11、日米貿易協定においては自己証明制度が採用されており、日本商工会議所が発給する特定原産地証明書を使用する事はできません。
Q.EPA の原産地証明書は、どうして必要なのですか?
輸出される産品が輸入締約国において EPA に基づく特恵関税率の適用を受けるためには、輸出しようとする産品が EPA に基づく一定の基準の下で輸出締約国において生産・加工されたことが証明される必要があります(単に商品に「made in Japan」と表示されているだけでは不十分で、EPA で定める基準を満たしているかどうかを実際に確認する必要があります)。それを証明するための書類が、原産地証明書ということになります。
Q.EPA の原産地証明書を取得するための手順と方法を教えてください。
原産地証明書を取得するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。その手順を大きく分けると、①原産地証明書の取得のメリットの有無、取得する資格の確認及び②原産地証明書の発給を申請する手続の 2 つになります。まず、①にて行うべき事項は、
(1)輸出産品の「HS コード(関税分類番号)」の確認
(2)輸出産品に適用される「EPA 税率」、「MFN 税率」の確認
(3)輸出産品に適用される「原産地規則(EPA を受ける資格があるか否かの基準)」の確認となります。
そして、①の手順に従い、輸出産品が EPA を利用する資格があることが確認できたら、②の日本商工会議所への発給申請手続(その多くがインターネットでの申請)に進み、
(1)企業登録
(2)原産品判定依頼
(3)原産地証明書発給申請
の手続を経て、原産地証明書を取得することができます。詳細は下記を御参照ください。
日本商工会議所HP
Q.ある産品を製造していますが、国内の取引先(輸出者)から、EPA の原産地証明書を取得するために日本商工会議所で原産品判定を受けて欲しいと要請されています。どうすればよいのでしょうか?
EPA の原産地証明書を取得するためには、輸出しようとする産品が EPA に基づく一定の基準の下で輸出締約国内において生産・加工されたことを証明する必要があります。日本での EPA の原産地証明書は、日本商工会議所が発給することになっていますので、日本商工会議所に対して、輸出しようとする産品が協定の基準を満たしているかどうかを実際に証明していただく必要があります(これを「原産品判定」といいます)。その際、当該製品の詳細な生産情報(材料・価格・仕入元などの情報)を有していることが必要となるため、通常、その製品の生産者が原産品判定の申請主体として最も適していると思われます。
生産者による日本商工会議所への具体的な申請手続(その多くがインターネットでの申請)ですが、(1)企業登録を行い、(2)原産品判定依頼を経て、日本商工会議所から申請対象産品が原産品であることが認められたら、(3)その結果について輸出者による利用を同意すること(「同意通知」といいまして、インターネット上で作業可能です。)によって、輸出者は原産地証明書の発給申請を実際に行うことができるようになります。
Q.EPA の原産地証明書とその他の原産地証明書の違いを教えてください。
原産地証明書には大きく分けて 2 種類あります。 一つは、各地の商工会議所が発給する原産地証明(以下、「一般の原産地証明書」)であり、もう一つが、日本が締約した EPA に基づき発給される「特定原産地証明書」です。一般の原産地証明書は、各商工会議所等の事業に基づき発給され、L/C 買取り銀行への提出や転売目的等、さまざまな用途に使用されます。一方、特定原産地証明書は、EPA締約国での輸入通関の際に、EPA 税率で通関を認めてもらうための証明書類であり、日本商工会議所が政府(経済産業省)から指定を受けて発給を行っています。
Q.締約国の保税地域において加工、生産し、原産地規則を満たした産品について原産地証明書は発給されますか?
保税地域の扱いについては、締約国側の国内運用によるものですが、一般的に EPA では、保税地域内においても原産地規則を満たしていれば、原産地証明書は発給されると考えられます。日本では、保税地域内における加工、生産についても原産地証明書が発給されます。
Q.原産地証明書に FOB(産品の本船渡し)価額を記載する必要がありますか?
日本が締結している EPA(日アセアン EPA を除く)には、原産地証明書に輸出産品の FOB 価額を記載する必要はありません。日アセアン EPA(AJCEP)では、アセアン各国で発給される原産地証明書には輸出締約国の要求に応じて、輸出産品の FOB 価額を記載する必要がありましたが、2014 年 10月 1 日に原産地証明書の書式が変更され、付加価値基準(RVC)を使用する場合を除いては、FOB価格を記載する必要がないこととされました。またカンボジアとミャンマーについては、2016 年 9 月末まで従前の扱いが継続され、引き続き FOB 価格の記載が求められることになります。詳細は外務省HPを御参照ください。(日本国内で発給する原産地証明書については、全ての EPA において FOB 価額の記載は不要です)。
Q.原産地証明書は、何年版の HS コードを記載するのですか?
HSコードは5年ごとに改定され、現時点では以下のHSバージョンが存在します。
HS 1988/1992, HS 1996, HS 2002, HS 2007, HS 2012, HS 2017
流通する品目は時代と共に変化する為、約5年に一度バージョンが変わります。常に最新のHSバージョンを使用すれば問題ない事のように思われますが、実際にEPAを活用した関税削減においては旧HSバージョンを使用する機会は多くあります。
各EPAの規定上、各EPAが発効時に存在していたHSのバージョンを適用して原産地規則等を制定する為、EPA発効後に新なHSのバージョンが制定されたとしてもEPA発効時の旧バージョンを使用し続ける事が前提となっている為、利用したいEPAに合わせて適用するHSコードの年度をその都度特定する必要があります。
HS2002年版
シンガポール
メキシコ
マレーシア
チリ
タイ
インドネシア
ブルネイ
アセアン
フィリピン
HS2007年版
スイス
ベトナム
インド
ペルー
HS2012年版
オーストラリア
モンゴル
TPP11
HS2017年度版
日EU
日米貿易協定
Q.船積み後に原産地証明書を発給できますか?(遡及発給について)
特定原産地証明書の発給申請は、原則船積みまでに行うこととなっています。しかしながら、貨物を緊急に輸出しなければならないケース等も想定されますので、例えば日アセアン EPA(AJCEP)では、船積み後 12 ヶ月間、事後発給手続(遡及発給)ができるようになっています。ただし、一部の国では、関税還付制度等が存在しない国もあるため、輸入通関後に遡及発給された原産地証明書を提出しても、関税の還付等を受けられないことがあります。関税還付等の制度の有無及び必要な手続は輸入締約国において個別に御確認ください。
出典:我が国の原産地規則
Q.船積み後にも原産地証明書は遡及発給することができるとのことですが、EPA の中には、船積みから遡及発給扱いとなるまでの間に一定の期間を設けている EPA(日アセアン EPA・日インドネシア EPA・日ベトナム EPA は 3 日以内、日フィリピン EPA は 1 日以内)がありますが、この期間には祝日・休日も含まれますか?
当該期間には、祝日・休日も含まれます。原産地証明書発給機関が原産地証明書の発給業務を祝日・休日により行っていないことにより、協定で規定された日数以上かかってしまう場合は、原産地証明書の遡及発給をすることができます。なお、日本で発給される原産地証明書は、日フィリピン・日インド EPA を除き、船積日までを原則的な発給、その翌日から遡及発給との扱いをしています。
Q.back-to-back CO(連続する原産地証明書)とはどのようなものですか?
back-to-back CO は、例えば、ある締約国(締約国 A)から輸出された原産品が他の締約国(締約国 B)を経由してさらに別の締約国(締約国 C)で輸入される場合に、経由国である締約国 B において貨物に対して何ら加工がなされず、締約国Aで得た原産資格が何ら変更しない場合に、締約国Bの原産地証明書の発給機関により発給されるものです。締約国 B で back-to-back CO の発給を受けるためには、締約国 A で当該貨物に対して発給された原産地証明書が必要です。
なお、当該 back-to-back CO(連続する原産地証明書)は、日本が締結する EPA のうち日アセアン EPA(AJCEP)のみ導入されています。
Q.back-to-back CO(連続する原産地証明書)のメリットはどのようなものですか?
back-to-back CO を発給する経由国(締約国である必要があります)をハブ(産品のプール先)として位置づけ、あらかじめある程度ロットをまとめて同経由国に向けて産品を輸出することで、輸出(出荷)コストの低減に資するだけでなく、他の締約国から注文があった場合に同経由国から直接輸出することで機動的な対応が可能となる等、ビジネスの迅速化、効率化が期待されます。また、これにより、締約国間において原産品の取引が増加すること、あるいは、締約国間において材料(原産材料)の域内調達が増加することも期待されます。
Q.back-to-back CO(連続する原産地証明書)は、輸入通関していない産品に対してのみ発給できるものなのですか、それとも輸入通関後の産品でも発給できるものなのですか?
経由国(締約国)における back-to-back COの発給に際しては、対象となる産品に対して何ら加工がなされず、もとの原産資格を維持していることを何らかの形で担保し、かつこれを確認することになります。貨物が一旦輸入通関されてしまうと、その貨物に対して何ら加工がなされていないことを確認することは困難となると思われますが、他方で、back-to-back CO に関して、日アセアン EPA(AJCEP)上は、一旦輸入通関された貨物に対して back-to-back CO を発給するか否かについては明示的に規定されておらず、原産資格の維持を担保・確認する方法は締約国によって異なります。したがって、日アセアン EPA に基づく back-to-back CO 発給の具体的な運用については、各締約国(経由国)の原産地証明書発給機関に個別に御確認いただく必要があります。
Q.日本では back-to-back CO(連続する原産地証明書)を発給していますか?
我が国において、日アセアン EPA(AJCEP)の原産地証明書は日本商工会議所で発給していますが、日アセアン EPA における back-to-back CO は発給していません。
Q.自分で原産地証明書を作成する方法があると聞いたのですが?
日メキシコ EPA、日スイス EPA、日ペルーEPA においては、申請に基づき経済産業大臣から認定を受けた「認定輸出者」であれば、協定で定められた申告文を仕入書等に記載することで、自ら原産地証明書を作成することが可能となります。認定輸出者制度の詳細につきましては、以下リンク先の「認定輸出者制度(第二種特定原産地証明書を作成する者の認定)」をご覧ください。(「認定輸出者証明制度(第二種特定原産地証明書を作成する者の認定)」「認定輸出者証明制度(第二種特定原産地証明書を作成する者の認定)」)
また、日豪 EPA では、従来の「第三者証明制度」に加え、輸出者、生産者又は輸入者が自ら証明書を作成できる、「自己申告制度」が導入されました。この証明書は、「特定原産品申告書」と呼ばれます。また、日EU・EPA、TPP11、日米貿易協定においては「自己申告制度」のみが採用されており、日本商工会議所が発給する特定原産地証明書を使用する事はできません。
Q.輸出者が作成した原産品申告書に基づいて申告しており、営業秘密を理由として、輸出者からは明細書等を作成し提出するための十分な情報が得られていない場合、どのような明細書等を作成し提出すべきか。
原産品であることを確認した方法等について得られている情報の範囲内で原産品申告明細書を作成し、営業秘密を理由として十分な情報を得られていない旨を併せて原産品申告明細書に記載してください。また添付書類も得られている情報の範囲内で添付してください。
Q.生産者又は輸出者が作成した誓約書に基づき、輸入者が原産品申告書を作成することは可能か。
日豪及びTPP11については、原則として可能です。ただし、誓約書に対する作成者の合理的信頼(取引契約や継続的な取引関係の存在を前提とした信用)が必要となるほか、税関から輸出者又は生産者に対して情報提供要請を行った場合には原産品であることを示す情報を速やかに提出できることが前提となります(当該情報を提出しない場合には、EPA 税率の適用が否認される場合があります)ので、御留意ください。
Q.牛肉等の締約国で完全に得られる一次産品の場合であって、原産品申告書及び通常の輸入申告の際に提出されるインボイス等の通関関係書類によって締約国の原産品であることが確認できるときには、別途明細書等を提出する必要はないとのことだが、具体的にどのような通関関係書類があれば、明細書等の提出を省略できるか。
輸入申告においては、一般的に、インボイス、パッキングリスト、船荷証券(BL)の通関関係書類が提出されますが、それらの書類において、輸入される産品について原産地に関する記載(“○○○○Beef”、”Made in ○○○○”や”Product of ○○○○”)、当該産品に係る締約国所在の生産者に関する記載、当該産品の商標、仕出国等を総合的に勘案し、原産品申告書とともに、締約国産牛肉と判断できる場合には、明細書等の提出は省略できます。また、これらの通関関係書類のほか、同様の形で原産性が判断できる、契約書、動物検疫用の衛生証明書、関税割当証明書等その他の通関関係書類を併せて提出することによって、原産性が判断できる場合にも明細書等の提出は省略できます。
なお、完全生産品と認められるための事実が通関関係書類のみからではすべて確認できず、一部その他の情報で確認しているような場合(例えば生産者からのメールや電話によって確認している場合)には、当該確認方法や内容を原産品申告明細書に記載し、通関関係書類とともに提出することもできます。
Q.輸入申告後に自己申告制度を利用し、原産品申告書を用いてEPA税率の適用を求めることはできるか。
輸入申告の際にEPA税率の適用を求めることが必要となることから、輸入申告後にEPA税率の適用を求めることはできません。なお、TPP11については、更正請求の特例という形で、輸入後の還付が認められる規定があります。
Q.原産品申告音の作成について、税関で事前審査を受けることは可能でしょうか。
A.原産品申告音は原則として輸入申告時に提出する必要があり、その際に審査を行います。記載方法等の個別の相談は受け付けますが、事前の原産性の審査を行うものではありません。事前に原産性の審査を希望される場合には、事前教示制度をご利用ください。
Q.輸出者又は生産者が作成した原産品申告書や原産地に関する申告文に不備がある場合、輸入申告前であれば輸入者が訂正することはできますか。
A.原産品申告書等の訂正は、当該原産品申告書等の作成者のみが行う事ができます。
Q.輸入申告時に提出した原産品申告書について、輸入申告後に訂正や差し替えをすることは可能でしょうか。
A.作成者であっても、輸入申告後に原産品申告書の訂正・差し替えを行うことはできません。
Q.原産品申告書等の原本の提出は必要でしょうか。
A.写し(コピー)を提出する事も可能です。なお。NACCSを利用して、原産品申告書等をPDF等の電磁的記録にて提出する事も可能であり、その場合には当該原産品申告書等をを提出後に別途書面にて提出する必要はありません。
Q.原産品申告書に使用する印は、会社の代表者印である必要はあるのでしょうか。
A.原産品申告書に使用する印に限定はありません。ただし、その真正性に疑義があるような場合には確認させて頂く場合があります。
Q.TPP11(CPTPP)の原産品申告書には、「5.関税分類番号(6桁 HS2012)」となっています。輸入申告時に適用するHS番号と異なる場合がありますが、どうすればいいのでしょうか。
A.TPP11(CPTPP)の原産品申告書に記載するHS番号の表記は、HS2012に従って記入ください。なお、日EU・EPA、日米貿易協定においてはHS2017に従ってください。
Q.輸出者が作成した原産品申告書や原産地に関する申告文に基づいて申告したいのですが、営業秘密を理由として、輸出者からは明細書等を作成し提出するための十分な情報が得られていません。この場合、どのような明細書等を作成し提出すべきでしょうか。
A.原産品であることを確認した方法等について、得られている情報の範囲内で原産品申告明細書を作成し、営業秘密を理由として十分な情報を得られていない旨を併せて原産品申告明細書に記載して特恵関税率の適用が可能かどうかを事前にご相談ください。また添付書類も得られている情報の範囲内で添付してください。日EU・EPAの場合は輸出者、製造者が情報開示をしない場合をご覧ください。
Q.文書による事前教示を受けた場合、原産品申告書の提出は不要になるのでしようか。
A.文書による事前教示を受けた場合であっても、原産品申告書の提出は必要です。原産品申告明細書等の原産性を明らかにする書類の提出は省略することができます。
Q.TPP1 1(CPTPP)、日EU・EPA、日米貿易協定において、第三者機関で発行された原産地証明書を添付すれば、原産品申告書の提出を省略することはできますか。
A.TPP11(CPTPP)、日EU・EPA、日米貿易協定においては、自己申告制度のみが採用されていますので、原産品申告書の提出が必要になりま
Q.課税価格の総額が20万以下の場合、原産品申告書の提出を省略することが可能と聞きましたが、これは原産性の基準を満たす必要はないということでしようか。
A.課税価格の総額が20万円以下であっても特恵税率を適用する場合は、原産性の基準を満たすことは必要になります。原産品申告書の提出省略は可能ですが、原産性の基準を満たすことを予め確認の上、申告を行ってください。
出典:経済産業省 EPA/FTAよくいただくお問合せ(FAQ)を一部改変
出典:TPP11(CPTPP)・日EU・EPA に関するFAQを一部改変
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