「オイルフィルター」のHSコードは「自動車の部分品」に分類されるのか
フィルターの材質によって分類先が変わるのか、など迷う点が多いです。
このような混乱はサプライチェーン上でのEPAを適用した関税削減への
悪影響を発生させる事も考えられるため、本記事では「オイルフィルター」の
HSコード分類事例を種類別に紹介し、様々な事例を通じてHSコード分類先の
手がかりになる情報をお伝えします。
日本税関によるHSコード判例
「オイルフィルター」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)
日本税関判例:液体のろ過器に分類された事例
登録番号 110005586
税関 東京
処理年月日 2010-12-24
品名:オイルフィルター
HSコード:8421.23(分類当時のHSバージョン)
貨物概要:
鉄製プレートに取り付けられた紙製のろ過材を、鉄製ケースに装填して
製品にした自動車用オイルフィルター
製 法:蛇腹状に折った濾紙の両端にスチール製プレートを取り付け、
スチール製外装ケースに装填したもの。オイル流入口側の内部にはシリコ
ーンゴム製逆止弁が取り付けられ、反対側内部にはスチール製スプリング
が挿入されている。
材 質:ろ過材-セルロース繊維(木材パルプ)、合成繊維(ポリエチレンテ
レフタレート)、フェノール樹脂 外装ケース、プレート及びスプリング-ス
チール 逆止弁-シリコーンゴム
サイズ:直径68.4mm×高さ85mm
用 途:自動車エンジンオイル用のオイルフィルター
分類理由:
本品は、紙製のろ過材にスチール製プレートを取り付け、スチール製外装ケ
ースに装填して製品にした自動車用オイルフィルターである。 本品は、自動車
用内燃機関の潤滑油のろ過機であり、関税率表第84.21項及び同表解説第
84.21項の規定により、上記のとおり分類する。 なお、本品は、同表第17
部注2(e)の規定により同部から除外されることから、同表第87類の自動車
の部分品には分類されない。
出典:税関事前教示事例を一部加工して作成
見解:
オイルフィルターのHSコードというと以下の記事で紹介したように材質によって
HSコードの分類先を検討する場合もあります。
本事例ではろ過材は紙製ではありますが、スチール製プレートが取り付けられて
いるため、液体のろ過機に分類されたと考えられます。8421項の解説参照。
また、17部注2(e)においてろ過機は自動車部品のHSコードからは
除外される対象となっている為自動車部品のHSコードには分類されません。
諸外国税関によるHSコード判例
イギリス税関判例: GALVANIZED OIL FILTER
登録番号 GB500688166
税関 イギリス サウスエンド
処理年月日 2009-10-09
一般的品名 GALVANIZED OIL FILTER
HSコード 8421.23(分類当時のHSバージョン)
本事例の品目は亜鉛めっき鉄製のオイルフィルターです。
取付具等は無く、フィルターのみである為、材質分類を検討して鉄製品が
属する15部の規定を確認したところ16部、17部の品目が除外されている為、
ろ過機(HS:8421.23)への分類に至ったのではないかと考えます。
オーストリア税関判例: OIL FILTER HOUSING
登録番号 AT2006/000472
税関 オーストリア ウィーン
処理年月日 2006-10-11
一般的品名 OIL FILTER HOUSING
HSコード:8421.99(分類当時のHSバージョン)
本品目はアルミ製のオイルフィルターのハウジングとなり、一見自動車
部品にも見えますが「自動車用ろ過機の部分品」という事でHSコード
8421.99に分類されました。
HSコード分類最終見解
フィルター関係のHSコード分類は非常にややこしい為、材質や形状を
よく調査した上で様々な判例を比較する必要があります。
特に、繊維製品のフィルターの場合は59類の注7の(b)の定義にて
「技術的用途に供する種類の紡織用繊維製品」という規定がある為、
材質分類になる可能性が高い為、上記事例とは別に考える必要があります。
関税削減の為の戦略的HSコード分類
EPA非締約国から”フィルター”を調達し、
EPA締約国Aにて「ろ過機」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”フィルター”と「ろ過機」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合、原料と製品のHSが離れていればいるほど有利になる為)
このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPA規則
に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。
一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。