実際の品目にHSをコードを当てはめる場合にはHS選定基礎の理解が必要です。
基礎を理解しないままネット等で品名検索をしてしまうと、検索結果の根拠を
理解せず、誤った当てはめをしてしまい大惨事を招くことになる可能性があります。
例として以下のような品目を挙げてみます。
出典: HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS)
上記品目は椅子でもあり、はしごでもあります。
このような品目はHSコード品目表を見ただけでは椅子に分類するか
はしごに分類するのかよくわかりません。
このような品目をHSコード検索システム等を使用して当てはめをしてしまうと
誤った分類をしてしまう可能性が高いです。
HSコードの品目表で指定されている品目数は国にもよって前後しますが、
一般的には1万程度しかありません。しかし、実際の貿易実務で取引される品目は
無数にあり、日々新たな品目が誕生し、取引されております。
更に例えていうならば「アップルウォッチ」など良い例かと思います。
「アップルウォッチ」というHSコードは存在しない為、HS品目表だけで
これをを分類しようとすれば
〇パソコン
〇電話
〇腕時計
など分類候補が多数あり、どこに分類するのが正しいのかわかりません。
このように日々増えていく無数の品目をHSコードの品目表だけで完全に
分類する事は不可能である為、「通則」という考え方が必要となります。
「通則」とは、提示された物品が、表のいずれのHSコードに所属を決定
するかについて世界共通の原則を定めたもので、以下が根拠規定となります。
関税率表の解釈に関する通則
関税率表の解釈に関する通則の解説
英語版通則:GENERAL RULES FOR THE INTERPRETATION OF THE HARMONIZED SYSTEM
以下通則を1から順に解説させていただきます。
通則1
この通則1というのがHS品目分類において最も重要な基本原則ですが、
一読しただけでは何を言っているのかよくわからないかと思いますので以下にて
これをかみ砕いて解説していきます。
通則1の規定に従うには以下の手順に沿って品目分類を行うという事になります。
① 表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定。
② 項の物品の説明、範囲は関税率表解説・分類例規を参照。
③ 部注、類注に従って分類を決定。
特定の品目のHSコードを特定するには基本的に上記の①から③の手順に沿って
進めていく作業が必要になりますので以下に①から③までの手順の解説を行います。
① 表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定。
「表題」とは以下の「輸入品目表(実行関税率表)」の例図の赤枠と緑枠の
表記の事を言います。
HSを探す際に一番最初に参考にする手がかりになりますので、
この表示だけに従って分類をしたくなってしまうのですが、
通則1ではこの「表題」だけを根拠に品目分類を行わないとする規定が
ありますので注意が必要です。
通則1では「表題は、単に参照上の便宜のために設けたものである。」
と定義されており、これらの表題は、物品の所属を決定するうえで法的な性格を
持たない為、あくまでも見当をつける際に利用するものとなります。
そのため、品目分類を行う為には「表題」ではなく通則1の中段で定められている
「項の規定及びこれに関係する部又は類の注の規定」に従う必要があります。
言い換えれば品目分類の基礎となる法的性格を持つ規定は
「項の規定」「部注の規定」「類注の規定」という事になり、これら3つの
規定に沿って品目分類を行わなければならないという事になります。
まずは「項の規定」とは何かを解説します。
輸入品目表(実行関税率表)を開くと品目表の年度一覧が表示されますので、
最新の品目表を選択します。(※輸出の品目表は輸出統計品目表)
すると以下のように「部の表題」と「類の表題」の一覧が表示されますので、
ここから該当する項目(類)の見当をつけて、その横の「税率」をクリックします。
(※輸出の品目表は「品目表」をクリック)
各類の詳細ページに移動後、以下の品目表例の紫で囲っている部分(項の規定)
をよく読み、「~に限る」、「~を除く」、「~であるかないかを問わない」などの
表現に注意して該当するHSコードを検討します。
例:4404項の規定
例:4420項の規定
上記手順に沿って品目分類を進めていくと、その時点でHSコードの特定が
できるように見える場合もありますが、通則1では更に以下の②、③の手順も
行うよう規定があります。
なぜならば①でHSコードが特定できたと思っても②③にて参照する規定では
別のHSコードに該当する旨の規定がある場合があります。
このような場合は②③での規定が優先される事になりますので①で特定したHSから
意図しない別のHSに分類される事がありますので①の分類方法だけでHSの
最終決定はできません。
② 項の物品の説明、範囲は関税率表解説・分類例規を参照。
上記①の手順にて輸入品目表(実行関税率表)(※輸出の品目表は輸出統計品目表)
にて該当HSの絞り込みを行った後は更にそのHSの属する関税率表解説・分類例規を
確認し、確実にその絞り込みが正しいのか、除外規定が無いかどうかを確認します。
関税率表解説・分類例規のページを参照すると以下の図のようになっており、
赤枠部分が「関税率表解説」で緑枠部分が「分類例規」となります。
(分類例規は全国共通版の「国際例規」と日本版の「国内例規」の2種類がある)
関税率表解説・分類例規は品目表では規定しきれない細かい規定が列挙されております。
例:44類の関税率表解説
例:44類の国際例規
③ 部注、類注に従って分類を決定。
「部注」「類注」とは先ほど解説した品目分類の際に法的拘束力を持つ
「部注の規定」「類注の規定」の略称です。
「部」というのはHSコードのシステムの中で最上位の分類概念となります。
第1部はHSコード1類から5類
第2部はHSコード6類から14類
第3部はHSコード15類のみ
第4部はHSコード16類から24類
第5部はHSコード25類から27類
第6部はHSコード28類から38類
第7部はHSコード39類から40類
第8部はHSコード41類から43類
第9部はHSコード44類から46類
第10部はHSコード47類から49類
第11部はHSコード50類から63類
第12部はHSコード64類から67類
第13部はHSコード68類から70類
第14部はHSコード71類のみ
第15部はHSコード72類から83類
第16部はHSコード84類から85類
第17部はHSコード86類から89類
第18部はHSコード90類から92類
第19部はHSコード93類のみ
第20部はHSコード94類から96類
第21部はHSコード97類のみ
というようにHSコードの類(頭2桁)を複数包括する概念となり、
これら複数の類の共通規則を定めたものが「部注の規定」となります。
この「部注の規定」の確認方法は先ほどの②と同じ関税率表解説・分類例規の
各部のリンクから確認します。
例:以下の赤枠リンクが4部の部注、6部の部注へのリンクになります。
上記例を確認すると
第4部とはHSコード16類から24類をひとまとめにした「部」となり、
第5部はHSコード25類から27類までをひとまとめにした「部」となる事が
わかるかと思います。
また、すべての「部」にそれぞれ「部注の規定」が存在するわけではありません。
25類から27類は第5部に包括されますが現時点では第5部に「部注の規定」はありません。
例:4部の注
次は「類注の規定」です。
類注の規定は輸入品目表(実行関税率表)(※輸出の品目表は輸出統計品目表)を
開いて最新年度クリックした次のページにて表示されます。
例:44類の注
通則1のまとめ
ここまで通則1の規定をご覧いただいて一つのHSコードを特定する為に
多くの資料を並行して参照しなければならない事がお分かりいただけたかと思います。
一つのHSコードを特定する為に最低限必要な作業は以下の①から③になります。
① 表題から該当する項の見当をつけ、各項の規定から分類を決定。
輸入品目表を参照(※輸出の品目表は輸出品目表)
② 項の物品の説明、範囲は関税率表解説・分類例規を参照。
関税率表解説・分類例規を参照(※輸出入共通)
③ 部注、類注に従って分類を決定。
関税率表解説・分類例規から部注を参照(※輸出入共通)
輸入品目表から類注を参照(※輸出の品目表は輸出品目表)
もっと平たく表現すると、例えば「編物の衣類」を輸入する場合に
該当品目のHSコードを調べるには最低でも以下の6種類の資料を参照し、
品目分類を決定します。
①輸入品目表 「編み物の衣類」に分類される61類の関税率表
②解説 「編み物の衣類」に分類される61類の関税率表の解説
②国際例規 「編み物の衣類」に分類される61類の国内例規
②国内例規 「編み物の衣類」に分類される61類の国際例規
③部注規定 「編み物の衣類」に分類される61類が属する11部の注(規定)
③類注規定 「編み物の衣類」に分類される61類の注(規定)
一つの品目のHSコードを特定する為に最低でもこの6種類の資料を横断
するのは非常に手間のかかる作業となります。
本サイト関税削減.comのトップページではこれら資料を各品目の類毎に
横断的にリンクを設定しておりますので是非ご活用ください。
通則1のケーススタディー①
通則1でどのようにして品目分類を行うか「木製の家具」を対象とした
ケーススタディーを紹介します。
出典:東京税関 業務部 首席関税鑑査官部門「品目分類について」より
輸入品目表(実行関税率表)の一覧を見ると44類に「木材及びその製品」という
記述があるので、この44類の「税率」クリックして項の規定を確認します。
そして44類の項の規定を上から順に確認していきますが、特に
「家具、たんす」といった記述が無い為、「その他の木製品」→「その他のもの」
に該当すると判断し、4421.99に該当するかと考えます。
※実行関税率表を一部改変
しかし、44類の解説を確認すると以下のような除外規定があります。
赤枠の文言にて除外規定を列挙しており、青枠で家具が除外対象である事が
わかります。
除外規定(o)を読むと「家具」は94類に該当する事がわかりますので、
ここでやっと輸入品目表(実行関税率表)の94類に到達する事ができます。
①の輸入品目表だけを確認して品目分類を行うと木製の家具は4421.99に
分類すると判断してしまいそうになりますが、
②の解説を読む事によって木製の家具の正しい品目分類は9403.60である
という事が判明します。
通則1のケーススタディー②
もう一点「通則1」でどのようにして品目分類を行うか「オリーブ」を
対象としたケーススタディーを紹介します。
オリーブの品目分類を行う際に輸入品目表(実行関税率表)の表題を
一読すると8類の「食用の果実」を検討するかもしれません。
しかし、この8類の中では「オリーブ」の表記は無いので
「 その他の果実」に分類するしかないと考えるかもしれません。
そこで関税率表解説・分類例規を参照すると第7類の注規定にオリーブは
7類の野菜に含まれると規定があります。
そこで輸入品目表(実行関税率表)から改めて7類を確認すると
確かにオリーブの記載があります。
これはオリーブは果物であると考える人にとっては非常に難しい
品目分類かと思います。
例え誰もが「オリーブは果物」と信じていようとも
法的拘束力のある注規定で「オリーブは野菜」と規定されていれば
品目分類作業ではこれに従うしかありません。
(余談ですがスイカは食用の果実に含まれます。)
上記パターンの場合、本来8類に分類すると考えている状態では
7類の注規定を読もうとはなかなか考え付かないかもしれませんので、
このような場合はネットで品名を検索したほうが早く答えに
たどり着くかもしれません。
以上ケーススタディーを見て頂くと正しい品目分類を行う上で
上記6種類の資料の確認が重要である事が理解できるかと思います。
①輸入品目表
②解説
②国際例規
②国内例規
③部注規定
③類注規定
この原則に従っても品目分類ができない場合には次の「通則2」で
品目分類を行う事になります。
通則1の解説
解 説
(Ⅰ)この表は、国際貿易で取引される物品を系統的な形式で配列
している。この表は、これらの物品を部、類及び節に区分し、それ
ぞれにできるだけ簡明な表題を付し、そこに含まれる物品の範ちゅう
又は種類を示すものである。しかしながら、多くの場合、部及び類に
含まれる物品が多様かつ多数であるため、これらの物品をすべて表題
に含めることも、また、特定して列挙することも不可能である。
(Ⅱ)そのため、通則1において、冒頭で、部、類及び節の表題は
「単に参照上の便宜のために設けたものである」ことを明らかにした。
したがって、これらの表題は、所属に関して法的な性格を有するもの
ではない。
(Ⅲ)通則1の後段は、下記により所属を決定すべきことを定めた
ものである。
(a)項の規定及びこれに関係する部又は類の注の規定に
従うこと、及び
(b)項又は注において別段の定めがある場合を除くほか、
必要に応じ通則2、3、4又は5の原則に従うこと。
(Ⅳ)上記(Ⅲ)(a)は自明のことであり、多くの物品の所属は
関税率表の解釈に関する通則の適用を検討するまでもなく決定される
(例えば、生きている馬(01.01)、30 類の注4の医療用品(30.06))。
(Ⅴ)上記(Ⅲ)(b)において、
(a)「項又は注において別段の定めがある場合を除くほか」
という表現は、項の規定(4桁の記載、以下同じ。)及びこれ
に関係する部又は類の注の規定が最優先の規定であり、
所属の決定を行う上で最初に考慮すべきことを明確にするた
めに設けられたものである。例えば、31 類(肥料)の注では、
この類の項の中には特定の物品のみを含める項があることを定め
ている。したがって、これらの項の範囲を拡大して、通則2
(b)の規定を適用すればこれらの項に含まれることとなるよう
な物品までを含めることはできない。
(b)「通則2、3、4又は5の原則に従う」という表現において、
通則2についての記載は、通則2(a)の規定が満たされており、
かつ項又は注に別段の定めがない場合には、次の物品は、完成した
物品としてその所属が決定されることをいう。
(1)提示の際に未完成の物品
(例えば、サドル及びタイヤを有しない自転車)
(2)提示の際に組み立ててない物品及び分解
してある物品(例えば、組み立てていない又は分解
してある自転車で、全ての構成材料が共に提示され
るもの)で、その構成材料がそれ自体として
(例えば、タイヤ、インナーチューブ)又はそれら
の物品の部分品として個々に所属を決定され得るもの
通則2
通則2は(a)と(b)の二つに分かれます。このうちの通則2(a)の意味は
「分解してあるもので組み立てて製品になるもの」や多少部品が足りなくても
「その製品の重要な特性が出ている物」は完成品のHSコードに該当する
という規定になります。
以下の例を参考にすると①の車輪を装着していないトラックは
「その製品の重要な特性が出ている物」に該当するので通則2(a)を適用して
トラックのHSコードに分類され、②の分解してあるテーブルは
「分解してあるもので組み立てて製品になるもの」に該当するので
こちらも同じように通則2(a)を適用してテーブルのHSコードに分類されます。
通則2のケーススタディー①
以下の品目は膨張させることによってプラスチックボトルになるもので
輸送コストを下げる為に膨張させる前の段階の状態で輸入します。
このような場合「未完成の物品で、完成品として重要な特性を有するもの」
に該当する為、完成品のHSコード3923(プラスチック製運搬容器)に
分類されます。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
通則2のケーススタディー②
以下の品目はストラップの無い腕時計です。
このような場合「未完成の物品で、完成品として重要な特性を有するもの」
に該当する為、完成品のHSコード9102に分類されます。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
通則2のケーススタディー③
以下の品目は分解されたオフィスチェアーです。このような場合、
「完成した物品で、提示の際に組み立ててないもの及び分解してあるもの」
に該当する為、完成品のHSコード9401に分類されます。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
通則2のケーススタディー④
以下の品目は分解された本棚です。このような場合、
「完成した物品で、提示の際に組み立ててないもの及び分解してあるもの」
に該当する為、完成品のHSコード9403に分類されます。
出典:東京税関 業務部 首席関税鑑査官部門「品目分類について」より
通則2(b)は2つ以上の材料又は物質からなるものの所属は
通則3の原則に従って決定するという規定になります。
例:小麦粉(70%)、とうもろこしの粉(30%)を混合したもの
(重量比)
出典:東京税関 業務部 首席関税鑑査官部門「品目分類について」より
例:アイロン台(木製のベースを綿織物で覆いアルミ製の足をつけたもの)
出典:東京税関 業務部 首席関税鑑査官部門「品目分類について」より
上記例のように「2つ以上の材料又は物質からなるもの」の場合は
以下に述べる「通則3」で分類するようにと規定しているのが通則2(b)
となりますので、通則2(b)自体は分類の基礎にはなりません。
通則2の解説
(Ⅰ)通則2(a)の前段の規定は、特定の物品を記載している各項の
範囲を拡大し、これらの項に完成品のほか、未完成のもので、提示の際
に完成した物品としての重要な特性を有するものをも含めるようにする
ものである。
(Ⅱ)この通則の規定は、特定の項にブランクが掲げられてない場合で
も、ブランクについても適用する。「ブランク」とは、そのまま直接使
用することはできないが、完成した物品又は部分品のおおよその形状又
は輪郭を有し、かつ、例外的な場合を除き、完成した物品又は部分品に
仕上げるためにのみ使用する物品をいう(例えば、プラスチックボトル
の成形前の中間生産品で、管状で一端が閉じており、口の方はネジ式の
蓋を取り付けるためにネジが切られている。ネジ切り部より下の部分は、
所定の大きさや形に膨張させる。)。完成した物品としての重要な形状
を有するに至っていない半製品(通常、棒、ディスク、管等の形状のも
の)は、「ブランク」としては取り扱わない。
(Ⅲ)1部から6部までの各項の物品の範囲にかんがみ、この通則の
この部分の規定は、これらの部に属する物品には通常適用しない。
(Ⅳ)この通則が適用される事例については、部又は類の総説に掲げ
た(例えば、16 部、61 類、62 類、86 類、87 類及び 90 類)。
通則2(a)(提示の際に組立ててないもの及び分解してあるものの所属)
(Ⅴ)通則2(a)の後段の規定は、完成した物品で提示の際に組み立
ててないもの又は分解してあるものは完成した物品と同一の項に所属す
ることを定めるものである。このような状態で物品が提示されるのは、
通常、包装、荷扱い又は輸送上の必要性、便宜等の理由による。
(Ⅵ)この通則は、未完成の物品(この通則の前段の規定により完成し
たものとして取り扱われるものに限る。)で、提示の際に組み立ててな
いもの又は分解してあるものについても適用する。
(Ⅶ)この通則の適用上、「提示の際に組み立ててないもの及び分解し
てあるもの」とは、組立て操作のみを伴うもので、例えば、締付具(ね
じ、ナット、ボルト等)又は鋲接若しくは溶接により構成要素を組み
立てれば完成品になるものをいう。
この場合において、組立方法の複雑さは考慮しない。なお、当該構成
要素には、完成された状態にするための更なる作業操作は施されない。
完成品に組み立てる上で必要となる数を超える余分な構成要素は切り
離してその所属を決定する。
(Ⅷ)この通則が適用される事例については、部又は類の総説に掲げ
た(例えば、16 部、44 類、86 類、87 類及び 89 類)。
(Ⅸ)1部から6部までの各項の物品の範囲にかんがみ、この通則の
この部分の規定は、これらの部に属する物品には通常適用しない。
通則2(b)(二以上の材料又は物質を混合し又は結合した物品の所属)
(Ⅹ)通則2(b)は、他の材料又は物質を混合し又は結合した物品
及び二以上の材料又は物質から成る物品に関するものである。
この通則が適用される項は、材料又は物質が記載されてある項(例え
ば、05.07 項のアイボリー)及び特定の材料又は物質から成る物品で
あることを示す記載のある項(例えば、45.03 項の天然コルクの製品)
である。この通則は、項又は部若しくは類の注に別段の定めがない場
合のみに適用される(例えば、15.03 項のラード油は混合してないも
のと定められているので、この規定は適用されない。)。調製品であ
る混合物で、部もしくは類の注又は項の規定にそのようなものとして
記載されているものは、通則1の原則に従ってその所属を決定する。
(ⅩⅠ)この通則の効果は、ある材料又は物質について記載した項の
範囲を拡大して、各項には当該材料又は物質に他の材料又は物質を
混合し又は結合した物品を含むようにすることである。また同様に、
この通則の効果は、特定の材料又は物質から成る物品について記載
した項の範囲を拡大して、各項には、部分的に当該材料又は物質か
ら成る物品を含むようにすることである。
(ⅩⅡ)しかしながら、この通則は、通則1の規定上、項の記載に
該当すると認められない物品までも含むように項の範囲を拡大する
ものではない。この問題は、他の材料又は物質を添加することによ
り項に記載する種類の物品の特性が失われる場合に生ずる。
(ⅩⅢ)したがって、他の材料又は物質を混合し又は結合した物品
及び二以上の材料又は物質から成る物品が、この通則を適用した結
果、二以上の項に属するとみられる場合には、通則3の原則に従っ
て所属を決定しなければならない。
通則3
通則3は「2つ以上の材料又は物質からなるもの」に対する品目分類の
方法を規定しており、どのように複数の材料又は物質が関わるかによって
規則が異なります。
通則3の分類方法は以下の3種類に分かれます。
■3-(a)最も特殊な限定をして記載をしている項に分類する
■3-(b)物品に重要な特性を与えている材料または構成要素によって所属を決定
■3-(c)等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に決定
「2つ以上の材料又は物質からなるもの」の品目分類を行う場合はまず3-(a)を
検討し、ここで分類ができない場合は3-(b)を検討し、それでも分類ができない
場合は3-(c)を検討するというように上から順に検討していくという形になります。
以下にて通則3の各規則を順に解説させていただきます
通則3-(a)
まずは通則3-(a)です。
HS選定作業では製品が複数のHSに該当するケースがあります。
「車のタイヤ」を例として挙げてみると
車の部分品であるHS8708と
ゴム製のタイヤであるHS4011のどちらにも該当しそうです。
通則3-(a)というのは対象品目が最も限定的、特殊な表現をした項に属すると
いう規定になります。
車の部分品という分類は広く抽象的です。
それに対しゴム製のタイヤという分類は上記より限定的です。
それ故に、車のタイヤに関してはHS4011の方が適切であるという
判断に用いられる基準となります。
その他の例ではゴム製の水泳帽があります。
ゴム製その他の製品HS4016か帽子HS6505で悩むポイントになりますが
「ゴム製その他の製品」で包括的に分類される品目より「帽子」で特定
される方がより限定的な為、水泳帽は帽子に分類される事になります。
通則3-(a)のケーススタディー①
以下の品目は木製の椅子とはしごの両方の性質を併せ持っており、
用途としてどちらがメインという設定はありません。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
品目分類の候補として、はしごが該当する「その他の木製品」(HS4421)か
椅子が該当する「木製の椅子」(HS9401)のどちらが適切か迷うところです。
通則3-(a)は「最も特殊な限定をして記載をしている項」に該当させる
趣旨となりますので「その他の木製品」と「木製の椅子」では
「木製の椅子」の方が「最も特殊な限定」をした項と考えられますので
この場合は通則3-(a)を適用してHS9401に分類するという事になります。
通則3-(a)のケーススタディー②
クリスマス用の表示がない撚った柳の枝からなるリース
このような品目は輸入者にとってはクリスマス用品と認識する物であっても
クリスマス用であるとの特徴が乏しい場合はHS9505のクリスマス用品に
分類されにくいのが特徴です。
品目分類の候補として、「装飾用植物」(HS0604)か
「組物材料」(HS4602)のどちらが適切か迷うところですが
「装飾用植物」と「組物材料」では
「装飾用植物」の方が「最も特殊な限定」をした項と考えられますので
この場合は通則3-(a)を適用してHS0604に分類するという事になります。
通則3-(a)のケーススタディー③
牛皮を成型してつくった犬用スナックガム
品目分類の候補として、「犬用に調製された飼料」(HS2309)か
牛皮から製造したものとして「その他の革製品」(HS4602)のどちらが
適切か迷うところですが「犬用に調製された飼料」と「その他の革製品」
では「犬用に調製された飼料」の方が「最も特殊な限定」をした項と
考えられますので、
この場合は通則3-(a)を適用してHS2309に分類するという事になります。
通則3-(a)の解説
(Ⅰ)この通則は、通則2(b)の規定又は他の理由により二以上の項
に属するとみられる物品の所属を決定する方法として三つの方法を規定
したものである。この方法はこの通則の配列上の順序に従って適用され
る。すなわち、通則3(b)は通則3(a)を適用しても所属を決定で
きない場合にのみ適用し、通則3(a)及び 3(b)のいずれによって
も所属を決定できない場合は、通則3(c)が適用される。したがって
、適用の優先順位は(a)の特殊な限定、(b)の重要な特性、次いで
(c)の数字上の配列において最後の項の順序となる。
(Ⅱ)この通則は、項の規定及び、部又は類の注の規定において別段の
定めがない場合にのみ適用される。例えば、97 類の注4(B)において
、97.01 項から 97.05 項までのうちの一つの項及び 97.06 項の双方に属す
るとみられる物品は、97.01 項から 97.05 項までのうちの一つの項に属す
ると定めている。したがって、このような物品は、この通則を適用せず
、97 類の注4(B)を適用してその所属を決定する。
通則3(a)
(Ⅲ)所属を決定するに当たっての第1の方法は、物品について最も特
殊な限定をして記載をしている項をこれよりも一般的な記載をしている
項に優先させて適用することである。
(Ⅳ)いずれの項が他の項よりより特殊な限定をして物品を記載してい
るかを決定する上で厳密な規定を設けることは困難であるが、一般的に
は次のように考えられる。
(a)名称(name)による限定は種類(class)による限定より
も特殊な限定であるといえる(例えば、電動装置を自蔵するか
みそり及びバリカンは 85.10 項に属し、電動装置を自蔵する手持
電動工具として 84.67 項又は電動装置を自蔵する家庭用電気機器
として 85.09 項には属さない。)
(b)物品がより明確に同一性を確認できる項の記載に該当する
場合、その項の記載は同一性の確認がより不完全な他の項の記載
よりもより特殊な限定をしているといえる。後者(b)の範ちゅ
うに属する物品の例としては、次の物品がある。
(1)自動車用のものと認定できるタフトしたじゅうたんは、
自動車の附属品として 87.08項には属さず、じゅうたんとして
より特殊な限定をして記載した 57.03 項に属する。
(2)強化ガラス又は合わせガラスの枠付きでない安全ガラ
スで、特定の形状にし、飛行機用のものと認定できるものは
、88.01 項又は 88.02 項の物品の部分品として 88.03 項には属
さず、安全ガラスとしてより特殊な限定をして記載した
70.07 項に属する。
(Ⅴ)ただし、二以上の項のそれぞれが、混合し若しくは結合した物
品に含まれる材料若しくは物質の一部のみ又は小売用のセットの構成
要素の一部のみについて記載をしている場合には、これらの項のうち
一の項が他の項に比べて一層完全な又は詳細な記載をしているとして
も、これらの項は、当該物品について等しく特殊な限定をしているも
のとみなす。
この場合において、物品の所属は、通則3(b)又は 3(c)により
決定するものとする。
通則3-(b)
通則3-(a)で分類できない場合は通則3-(b)を検討します。
2種類以上の材料(プラと鉄など)で製造された製品である上、複数の
「特殊な限定」をした特性を持つ製品で通則3-(a)の規定も適用できない場合は
通則3-(b)「重要な特性を与えている材料、機能等によって分類」します。
以下に例を紹介します。
当該品目の特徴は金属のフレームの写真立ての中に50枚の写真が入る
プラスチック製のポケットを有するというものです。
上記品目は「金属のフレーム(HS8306)」に該当しつつも、
「プラスチック製品(HS3926)」にも該当し得る為、通則3-(a)の
「最も限定的、特殊な表現をした品名」という要件でどちらか一方を
選択するという事ができないため、通則3-(a)が適用できず
3-(b)を検討する事になります。
通則3-(b)は「重要な特性を持つ部分」を基準として分類をする規定の為、
「鉄製のフレーム」と「プラ製のポケット」のどちらが重要な特性かを
見極める必要があります。
本事例の場合、「鉄製のフレーム」は特段珍しいものではありませんが、
「50枚の写真が収納できるプラ製ポケットのアルバム」という特徴は
この製品の重要な特性であると考えられます。
この例ではこういった希少性のある特徴を重要な特性と判断した為、
プラ製のその他の製品HS3926に分類されました。
※余談ですが、これはあくまでも日本国内での事例ですので
外国の税関がこの品目を見た場合、鉄製のフレームが特徴的だと感じる
事も十分に考えられます。
HSコードは世界共通のシステムですが、どのHSに当てはめるかは
各国独自の文化や考え方によって左右される事があります。
別の通則3-(b)の事例で「パスタ料理用セット」があります。
パスタの麺と調味料の小売りセットになった製品など
複数のHSに該当するものが一つにまとまっている場合も
同じく通則3-(b)の分類規定を適用します。
この例では重要な特性はパスタの麺そのものであると考えられ、
パスタのHSコードが小売りセットに対して適用されます。
※こちらの事例につきましても何が重要な特性なのかという部分については
各国独自の文化や考え方によって左右される事があります。
通則3-(b)のケーススタディー①
大麦(HS1003)60%とオート40%を混合した品目の場合は単純に
含有割合の多い方が重要な特性を与えている事になるので、
通則3-(b)を適用してHS1003の大麦に分類されます。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
通則3-(b)のケーススタディー②
散髪器具として以下の4点が小売り用にセットになった品目
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
内訳はヘアークリッパー(HS8510)、くし(HS9615)、ハサミ(HS8213)
ヘアブラシ(HS9603)となります。
この場合はヘアークリッパーが重要な特性を与えている事になるので、
通則3-(b)を適用してHS8510のヘアークリッパーに分類されます。
通則3-(b)の解説
(Ⅵ)この第2の方法は、通則3(a)により所属を決定することが
できない場合にのみ適用するものとし、次の場合に限られる。
(ⅰ)混合物
(ⅱ)異なる構成材料から成る物品
(ⅲ)異なる構成要素で作られた物品
(ⅳ)小売用のセットにした物品
(Ⅶ)これらの場合において、上記の物品は、この規定を適用するこ
とができる限り、当該物品に重要な特性を与えている材料又は構成要
素から成るものとしてその所属を決定する。
(Ⅷ)重要な特性を決定するための要素は、物品の種類によって異な
る。例えば、その材料若しくは構成要素の性質(容積、数量、重量、
価格等)又はその物品を使用する際の構成材料の役割によって決定
することになる。
(Ⅸ)この通則の適用上、異なる構成要素で作られた物品には、当該
構成要素が相互に結合し、実際上全体が分離不能となった物品のほか、
分離可能な構成要素から成る物品を含む。ただし、後者の物品にあっ
ては、当該構成要素は相互に適合性を有し、また相互に補完し合い、
かつ、共に全体を構成するものであって、個々の部分品として通常小
売用とならないものに限る。この後者の範ちゅうに属する物品の例と
しては、次の物品がある。
(1)灰ざら(取りはずすことができる灰用ボールとこれを支
えるスタンドから成るもの)
(2)家庭用の香辛料置き台(特別に作ったフレーム(通常木
製)とフレームに適合する形状及び寸法にした適当な数の香辛
料用のあき瓶から成るもの)一般にこれらの組み合わせた物品
の構成要素は、一緒に包装される。
(Ⅹ)この通則の適用上、「小売用のセットにした物品」とは、次の物品をいう。
(a)異なる項に属するとみられる二以上の異なった物品から
成るもの(したがって、例えば、6本のフォンデューフォーク
は、この通則の意味する範囲のセットとはみなさない。)で、
(b)ある特定の必要性を満たすため又はある特定の活動を行
うため、共に包装された産品又は製品から成り、かつ、
(c)再包装しないで、最終使用者に直接販売するのに適した
状態(例えば、箱若しくはケースの中に又は厚紙の上)に包装
されている物品「小売」には、更に製造し、調製し、再包装し
又はその他の物品と組み合わせ若しくは組み込んだ後に再販売
することを意図した物品の販売を含まない。したがって、「小
売用のセットにした物品」には、個々の物品が共に使用する目
的で最終使用者に販売されるセットのみを含む。例えば、ある
即席料理を調製する際に共に使用する目的で種々の食料品を組
み合わせたもので、共に包装され、買い手が消費するものが「
小売用のセット」である。
通則3(b)を適用して所属が決定されるセットの実例には、
次の物品がある。
(1)パンの中に牛肉が入ったサンドイッチ(チーズが入っている
かいないかを問わない。)(16.02)とポテトチップス(フレンチフ
ライ)(20.04)を一緒に包装したセット:16.02項に所属
スパゲティ料理を調製する際に共に使用するためのセットで、
生スパゲティの包み(19.02)、すりおろしチーズの袋(04.06)
及びトマトソースの小さな缶(21.03)から構成されており、紙箱に
収められたもの:19.02 項に所属ただし、この通則は、各種の物品を
選んで共に包装したもので、例えば、次の物品から成るものには
適用しない。
シュリンプの缶詰(16.05)、レバーパテの缶詰(16.02)、
チーズの缶詰(04.06)、薄切りベーコンの缶詰(16.02)及び
カクテルソーセージの缶詰(16.01)22.08 項の蒸留酒の瓶詰
及び 22.04 項のぶどう酒の瓶詰上記2つの組合せの例及び類似
の物品の組合せの場合、各々の物品が属する項に別々に属する。
このことは、例えば、ガラス瓶に詰めた可溶性コーヒー(21.01)
、陶磁製のカップ(69.12)及び陶磁製の受皿(69.12)をともに
板紙製の箱に入れて小売用にしたものにも同様に適用される。
(2)理髪用セットで、電気式バリカン(85.10)、くし(96.15)
、はさみ(82.13)、ブラシ(96.03)及び織物製タオル(63.02)
から成り、革製のケース(42.02)に収められたもの:85.10項に
所属
(3)製図用キットで、定規(90.17)、計算盤(90.17)、
製図用コンパス(90.17)、鉛筆(96.09)及び鉛筆削り(82.14)
から成り、プラスチックシート製のケース(42.02)に収められた
もの:90.17 項に所属
上述のセットの所属については、当該セット全体に重要な特性を
与えるとみなされる構成要素(単一又は同一項に属する複数の構
成要素)によって決定される。
(ⅩⅠ)この通則は、工業製造用(例えば、飲料製造用)に特定の
割合の構成成分を取りそろえた物品で、当該構成成分を個々に包装
(包装の形態のいかんを問わない。)したものには適用しない。
通則3-C
通則の3-(a)の最も限定的な表現のHSも通則の3-(b)の重要な特性もなく、
完全に複数のHSに該当する場合はこの通則3-(c)を適用します。
完全に複数のHSに該当する場合というのは
例えばT-シャツの材質が綿50%とポリエステル50%である場合等が
考えられます。
以下の実行関税率表をご覧ください。
綿製のT-シャツはHS6109.10に該当し、ポリエステル製のT-シャツは
HS6109.90に該当します。
この場合「綿50%とポリエステル50%T-シャツ」は両方の材質を均等に含むため、
2つのHSにそれぞれ完全に該当してしまうため、この場合は通則3-(c)を
適用して数字上で最後の項に分類することになります。
“HS6109.10″と”HS6109.90″では”HS6109.90″の方が数字上で後ろになります。
(上記のようなHS品目表では「下」の項に属する数字)
その為、綿50%ポリエステル50%のT-シャツはポリエステル製のHS6109.90に
分類されることになります。
(T-シャツの場合、ポリエステルはその他の紡織用繊維に包括)
通則3-(c)のケーススタディー①
電気式のランプ(HS9405)と時計(HS9105)が一体となった品目
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
上記品目は「ランプ」でもあり「時計」でもある為、通則3-(a)の
「最も限定的、特殊な表現をした品名」のどちらか一方という要件を
両方満たしてしまい、通則3-(a)は適用できません。
また、通則3-(b)の「重要な特性を与えている材料、機能等」という
要件を考慮しても、「ランプ」と「時計」はそれぞれ重要な特性で
あるため通則3-(b)も適用できません。
その為、通則3-(c)の「HSの数字上の配列で最後の項に該当」する
材料、機能で分類をするとランプ(HS9405)と時計(HS9105)では
ランプ(HS9405)がHSの数字上の配列で最後の項に該当しますので
当該品目は電気式のランプとしてHS9405に分類されます。
通則3-(c)のケーススタディー②
電気式ファン(HS8414)とシャンデリア(HS9405)が一体となった品目
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
上記品目は「ファン」でもあり「シャンデリア」でもある為、
通則3-(a)の「最も限定的、特殊な表現をした品名」のどちらか一方
という要件を両方満たしてしまい、通則3-(a)は適用できません。
また、通則3-(b)の「重要な特性を与えている材料、機能等」という
要件を考慮しても、「ファン」と「シャンデリア」はそれぞれ
重要な特性であるため通則3-(b)も適用できません。
その為、通則3-(c)の「HSの数字上の配列で最後の項に該当」する
材料、機能で分類をするとファン(HS8414)とシャンデリア(HS9405)では
シャンデリア(HS9405)がHSの数字上の配列で最後の項に該当しますので
当該品目は電気式のランプとしてHS9405に分類されます。
通則3-(c)の解説
(ⅩⅡ)通則3(a)及び3(b)の規定により物品の所属を決定
できない場合においては、当該物品は、所属を決定するに当たって
等しく考慮に値する項のうち数字上の配列において最後となる項に
属する。
通則4
前記(通則1~3)の原則によりその所属を決定することができない物品は、
当該物品に最も類似する物品が属する項に属する。
通則4のケーススタディー
車両を持ち上げる為のエアージャッキ(空気を膨らませて使用)
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
ジャッキはHS8425に分類されるものではありますが、一般的なジャッキは
油圧式、空気式のシリンダーで車両等を持ち上げる物になります。
この場合、上記のような特殊な形状のジャッキの場合はHS8425に
分類できるか疑問がありますので84類の解説のジャッキについての
定義を確認します。
これを読む限り上記のような品目がこの項に該当するかどうかは
判断しづらい所であり、通則1から3まで適用ができない為、
通則4を適用して「最も類似する物品が属する項」に該当する事になります。
通則4の解説
(Ⅰ)この通則は、通則1から3までの原則によりその所属を決定
することができない物品について定めたものである。このような物品
は、当該物品に最も類似している物品が属する項に属することを定め
ている。
(Ⅱ)通則4の規定に基づいて所属を決定する場合、提示された物品
に最も類似している物品を決定するために、提示された物品と同種物
品とを比較することが必要である。提示された物品は、それに最も類
似する同種物品と同一の項に属する。
(Ⅲ)類似性は、品名、性質、用途等の多くの要素によって決定する
ことになる。
通則5
通則5(a)
通則5(a)を要約すると例外はありますが、専用ケースは基本的に
その物品に含まれるという規定になります。
例えば以下のようなバイオリンがケースに収納された状態で提示される場合
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
バイオリン本体のHSは9202に該当し、バイオリンケースはHS4202に該当しますが
この場合は通則5(a)にて定義されている「特定の物品を収納する為に特に
制作し、長期間の使用に適し、当該容器に収納される物品とともに提示され、
かつ、通常当該物品とともに販売されるもの」という要件を満たせば、
ケースはバイオリンに含めて、共にHS9202に分類される事になります。
次の事例は袋入りガムと貯金箱を兼ねたがん具を包装した物です。
一見先ほどの事例と同じように通則5(a)を適用できるかと考えますが
通則5(a)の但し書きには以下のような規定があります。
「ただし、この(a)の原則は、重要な特性を全体に与えている容器
については、適用しない。」
これはガム容器の形状が「ガムの梱包用」という用途だけでなく
おもちゃとしての重要な特性があると判断されたため、通則5(a)の
適用はできず、ガムをHS1704に、容器をがん具としてHS9503に分類
されたという事例になります。
梱包さえしてあれば常に通則5(a)ができようできるという訳ではない
という事がよくわかる事例かと思います。
以下の事例も同じように通則5(a)が否定され、ガムとガムの容器を
別々に品目分類する事になります。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
通則5(a)の解説
(Ⅰ)この通則は、次に規定する容器についてのみ適用する。
(1)特定の物品又は物品のセットを収納するために特に製作し
又は適合させた容器(すなわち、当該物品を収納するために特別
に設計製作されたもの。容器によっては、収納する物品の形状に
合わせて製作されているものもある。)で、
(2)長期間の使用に適する容器(すなわち、これらの容器は、
収納される物品の耐久性に合わせて製作されている。また、こ
れらの容器は、当該物品が使用されない時(例えば、輸送、貯
蔵等の期間)は、これを保護する役目がある。したがって、こ
れらの基準に照らせば、ここでいう容器は単なる包装とは区別
される。)で、
(3)輸送の便宜のため収納される物品と別々に包装されてい
るかいないかを問わず、収納される物品とともに提示される容
器(ただし、分離されて提示された場合、容器は、それ自体が
該当する項に属する。)で、
(4)通常収納される物品とともに販売される容器で、かつ
(5)重要な特性を全体に与えない容器
(Ⅱ)収納される物品とともに提示される容器で、この通則の規定
を適用してその所属が決定される容器の実例には、次のような物品
がある。
(1)身辺用細貨類の箱及びケース(71.13)
(2)電気かみそりのケース(85.10)
(3)双眼鏡のケース及び望遠鏡のケース(90.05)
(4)楽器のケース、箱及びバッグ(例えば 92.02)
(5)銃のケース(例えば 93.03)
(Ⅲ)この通則が適用されない容器の実例には、茶を入れた銀製の
茶筒、砂糖菓子を入れた装飾的な陶磁製入れ物のような容器類がある。
通則5(b)
通則5(b)を要約すると反復使用するものは別として、通常の包装は物品に含まれる
という意味になります。
出典:HARMONIZED COMMODITY DESCRIPTION and CODING SYSTEM or HARMONIZED SYSTEM(HS) & ASEAN HARMONIZED TARIFF NOMENCLATURE(AHTN)
上記のように輸送の目的で梱包材を使用する事は一般的ですので税関審査
にて「通則5(b)適用により~」などの考慮すらされない事ではありますが、
この梱包材が反復使用する物の場合は(例:圧縮空気用ドラム容器)
通則5(b)の適用ができないことになります。
通則5(b)の解説
(Ⅳ)この通則は、物品を包装するために通常使用される包装材料
及び包装容器の所属を規定している。ただし、この規定は、明らか
に反復使用に適するような包装材料及び包装容器には適用しない
(例えば、圧縮ガス用又は液化ガス用の金属製のドラム又は鉄鋼製
容器)。
(Ⅴ)通則5(a)はこの通則に優先する。したがって、通則5
(a)に記載されているようなケース、箱及びこれらに類する容
器の所属は、通則5(a)を適用して決定する。
通則6
通則6を要約すると「号(HS6桁レベル)の決定は、通則1~5までを
準用し、段落ちの水準の比較に注意する。」という意味になります。
例えばハイブリッド自動車を分類する場合、通則1を適用して
HS8703の乗用自動車に分類される事になります。
そして(8703)以降のHSを求める際は通則6に沿って決定します。
この際、HS8703からの細分(号)での分類候補は以下の2つが考えられます。
■8703.22 その他の車両(ピストン式火花点火内燃機関を搭載したもの)
■8703.90 その他のもの
上記のように6桁レベルのHSコード(上記事例ではHS8703.22とHS8703.90の2つ)
を検討する際に、通則6の規定の通り通則1~5を準用して決定します。
本事例の場合は通則3(b)を準用し、重要な特性を与えている部分は
内燃機関という事になるのでHS8703.22に分類される事になります。
通則6の解説
(Ⅰ)上記通則1から5までは、同一項中の号レベルでの所属の決定
についても準用する。
(Ⅱ)通則6の適用に当たっては、次の用語の意義は、それぞれ次に
定めるところによる。
(a)「同一の水準にある号」とは、号の規定中の1段落ちの号
(水準1)又は2段落ちの号(水準2)をいう。したがって、通
則3(a)の文脈上、単一の項の中の二以上の1段落ちの号のう
ち、いずれの号に該当するかを検討する場合は、問題となる物品
についての特性又は類似性は、競合する1段落ちの号の記載のみ
に基づき判断する。最も特殊な限定をしている1段落ちの号を選
択し、かつ当該号自体に細分が設けられている場合、この場合に
おいてのみ、2段落ちの号のうちいずれの号に属するかを決定す
るため、2段落ちの号間の記載を考慮するものとする。
(b)「文脈により別に解釈される場合を除くほか」とは、部又
は類の注が号の記載又は号の注と矛盾する場合以外の場合を指す。
例えば、71 類にこの事例がみられる。すなわち 71 類注4(B)
に規定する「白金」の範囲は、号注2の「白金」の範囲と異なる。
したがって、7110.11 号と 7110.19 号を解釈する上で、号注2が適
用され、類注4(B)の適用は排除される。
(Ⅲ)2段落ちの号の範囲は、2段落ちの号の属する1段落ちの
号の範囲を超えて拡大してはならない。また1段落ちの号の範囲
は、1段落ちの号の属する号の範囲を超えて拡大してはならない。