スライド資料による概要
日メキシコEPA日本語協定文
英語協定文(リンク先の英文PDFを参照)
日本側ステージング表
日本側譲許表
相手国側譲許表
品目別分類規則
協定注釈
世界のHSコード分類事例を用いた関税削減手法を紹介します。
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実質的変更基準の内の一つに付加価値基準があります。
何度かその理論を紹介させていただきましたが
なかなかイメージしづらい規則である事から、
もう少し具体的な説明をさせていただこうと思います。
税関セミナースライドでも付加価値基準に関しては多くの解説がありますが
特に詳しく、わかりやすく解説されたものがありましたので
こちらを中心に紹介していこうと思います。
※一般特恵関税原産地基準の税関セミナースライド32Pからの内容です。
産品の製造工程において付加される価値が、
要求される条件を満たした国を原産地とする という基準
例えば、「産品の価値のうち、全体の60%以上 の価値が
X国で付加されたら、X国を原産地と みなす」という考え方
上記の意味を実務的に解説すると以下のようになります。
1.A国で製造された車を輸入する
2.その車のエンジンはB国からの輸入品である
3.なので原産国はA国としても良いのかと疑問が出る
4.曖昧な国籍の車の原産国を判断する必要がある
5.A国からの車のHSコードを基に品目別分類規則を確認する
6.すると付加価値基準60%以上とあった(例)
7.完成品の車の価格と輸入品のエンジンの価格を比較
8.A国でのエンジン以外の付加価値が60%を超えている
9.この場合はA国の原産品として認められると判断する
という流れになります。
この流れを理解しつつ以下のスライドをご覧ください。
A国で完成した車が10,000ドル
B国で作られ、A国に輸入され、車に組み込まれたエンジンが3,000ドル
A国での付加価値基準の算出方法は以下になります。
10,000(車) - 3,000(エンジン) = 7,000(付加価値)
7,000(付加価値) ÷ 10,000(車) = 0.7
0.7 × 100 = 70%
これによりこの国籍の曖昧な車はA国産と認められます。
※付加価値基準の基準は一般特恵、FTA/EPAによって変わります
これが付加価値基準の原則ですが
もう少し様々な要件を考慮するパターンもあります
上記のグラフを見ると非原産材料とそれ以外の物が明確にわかります。
円グラフは産品の合計金額となり
1~5の部分はその産品の生産国で付加された価値
6は第三国から輸入した原料等である非原産材料の価格です。
一般特恵関税原産地規則では
「非原産材料の価額を直接用いる方法」が採用されておりますので
この非原産材料の価格がいくらなのかを判別する事が重要です。
非原産材料の価格の算出方法は
「積み上げ方式」と「非原産材料の価格を利用する方式」の
2つがあります。
※一般特恵関税原産地基準の税関セミナースライド36Pからの引用
積み上げ方式という考え方ですと
上記図の中にある1から5の費用は製造国にて付加された価値ですので
製品価格からこの部分を引けば非原産材料の価格が出てきます。
このような積み上げ方式は非原産材料が多くの国から来ていたり、
何かしらの理由で非原産材料の正確な情報が得られない時に有効です。
※一般特恵関税原産地基準の税関セミナースライド37Pからの引用
付加価値基準の考え方は一般特恵、FTA/EPAによって変わります。
以下にいくつかのFTA/EPAの付加価値基準の例を挙げます
福岡大学研究推進部 論文
EPA 原産地規則と日本企業の活用 :
日・ASEAN 包括的経済連携協定とECFA を中心としてから引用
国や協定内容によって基準が微妙に変わりますので
様々な計算方法に慣れておくと良いでしょう。
産品のインコタームズについて解説します。
付加価値基準の計算の基準に
完成品の価格、非原産材料の価格を基に計算する必要がありますが
この価格はどの時点の物なのか、
送料や保険は含むのかなどの判断に迷う事が多々あります。
これを間違えてしまうと計算が狂ってしまい
意図しない結果を招く可能性がありますので十分ご注意ください。
価格の原則 1.完成品の価格は原則FOB
付加価値基準総論1で紹介した計算式に完成品の価格があります。
この記事の例で紹介したのはA国で完成した車(10,000ドル)の事です。
この10,000ドルはFOB(特恵受益国の輸出港における本船甲板渡し価格)
となります。
価格の原則 2.非原産品の原料価格は原則CIF
第三国から調達した製品の原料は
貨物のFOB価格 + 運賃 + 保険 の合計額が
計算の基礎になります。
価格の原則 3.非原産品のCIFが不明なら仲介者利益込みの価格
第三国から調達した製品の原料価格は原則CIFですが
この調達を行った仲介者がいる場合、この仲介者が利益を乗せる為、
正確なCIF価格を知る事が出来ない場合があります。
その場合は残念ですがその仲介者の利益込みの金額をCIF価格として
算出する必要があります。
上記の例ではX国が特恵受益国で非原産材料を第三国から仕入れており、
仕入れと製造者の間に転売を行う仲介者がいるパターンです。
このケースでは仲介者に支払った価格をCIF価格としており、
仲介者が実際に支払った非原産材料への対価であるCIF価格は
不明となっております。
トレーシングについて解説します。
特恵受益国で生産された貨物であって、
その1次材料も同じく特恵受益国で生産されており、
その原料の2次材料が第三国から仕入れたものであっても
実質的変更基準を満たして1次材料になっていれば
特恵受益国の生産品として認められると前回の記事で説明しました。
では2次製品の原料が実質的変更基準を満たしていなかったら
完全に非原産材料としてカウントされるのでしょうか?
まずは以下の図をご覧ください。
上記図の左側下の赤点線で囲まれた部分にある
非原産材料価格80というのは2次製品で矢印の先(特恵受益国)に移動して
原産材料の価格10が付加され、更に生産コスト10が付加され、価格100の
1次製品となりました(大部分を非原産材料の2次製品で構成されている)
これによりトータル価格は100となりますが、100の内80は非原産材料で
20だけが特恵受益国での付加となりますので、
原産地資格割合(QVC)を計算すると20%しかありませんので
この1次製品は特恵受益国の原産品としては認められない事になります。
しかし、これに対する救済規定がトレーシングという物です。
この救済規定を使用すると1次製品に付加された
原産材料の10と生産コストの10だけを1次製品から切り離して
特恵受益国の生産品としての計算が可能となります。
僅かな違いではありますが
最終的な付加価値基準の計算に差が出てきます。
以下の例は最終製品のFOB価格が500として
非原産材料100と上記で説明した非原産材料100(トレーシングで80)を
使用した付加価値基準の計算式です。
トレーシング無しだと非原産材料の一部が100になっている部分が
トレーシング有りだと非原産材料の一部が80になっております。
それにより最終的な原産資格割合が60%か64%かで変わります。
トレーシングの使い方を知らないと僅かな差で
原産品として認められないケースなども出てしまうかもしれませんので
ご注意ください。
ロールアップについて解説します。
特恵受益国で生産された貨物であって、
その1次材料も同じく特恵受益国で生産されており、
その原料の2次材料が第三国から仕入れたものであっても
実質的変更基準を満たして1次材料になっていれば
特恵受益国の生産品として認められると前回の記事で説明しました。
以下の例を見ると赤い点線で囲まれた2次材料が価格80であり、
矢印の先の特恵受益国に移動し、
特恵受益国の原産材料100と生産コスト20と組み合わせ
青い点線内の価格200の「1次材料」が完成します。
1次材料の価格200に対し非原産材料の2次材料は80となり
QVC(原産資格割合)は60%となりますので、
この1次材料はロールアップの規定を使用し、
2次材料の80をも特恵受益国の原産品として認めるという事になります。
特恵受益国での原産品の製造の際に考えなければならないのは、
1次材料がその特恵受益国の原産であっても2次材料が
第三国の材料を使用しているのであればそちらも考慮して
計算しなければならないという事です。
2次材料の出どころを突き止めるというのはかなり難しいかもしれませんが
このような考え方があるという事をご理解頂ければと思います。
トレーシングとロールアップ2つをまとめた図を紹介します。
ごちゃごちゃしているのでこの図を見ただけでは理解に苦しむでしょう。
そこで過去の記事トレーシングについてとロールアップについての
2記事は上記の図を分解して解説しておりますので、
この2記事をまだご覧になっていない方はまずこれらをご覧ください。
この図が表している製造工程は以下のようになります。
1.黒枠部分が特恵受益国での生産過程である。
2.1次材料として第三国の原料を使用したものが$100(緑)
3.2次材料として第三国の原料を使用したものが$80と$80の2種類ある(青)
4.2次材料の一つは特恵受益国での付加価値が$10と$10で$100となる
5.2次材料の一つは特恵受益国での付加価値が$100と$20で$200となる
6.最後に特恵受益国でもう一度生産コスト$100が付加される
7.最終的な生産品の価格は$500となる(FOB)
上記の流れで4.の2次材料に関してはトレーシング有無によっては
$80として計算するか$100として計算するかによって合計の
非原産材料の価格が変わり、原産資格割合も60%か64%で変わります。
これを説明しているのが上記の図です。
ちょっとややこしいのですが是非マスターしてください。
僅かな差ではありますがこれによって非原産品が原産品と認められれば
結果の違いは果てしなく大きくなるでしょう。
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FTA/EPA締約国から特恵関税の適用を受けて貨物を輸入する場合
その貨物のHSコードの関税率と特恵関税を適用した場合の
関税率を調べる必要があります。
通常の関税率とFTA/EPA特恵関税率は税関HPの
実行関税率表で確認する事ができます。
上記の実行関税率表で特恵関税がゼロになっていれば
特に問題はないのですが、
この税率がゼロでない場合はFTA/EPA締約のルールによって
段階的に下がっていくケースもあります。
年を追うごとに関税率が下がっていき長い年月を経て最終的に
関税がゼロになるパターンもあります。
こういった変動型の特恵税率の場合、将来の特恵税率は
上記の税関HPの実行関税率表では調べる事ができません。
将来どの国に投資するのか、どの国に製造所を設置するのかで悩む際
このような将来の特恵関税率を知る事は非常に重要です。
A国からの関税率は10年後5%に下がるのに対し
B国からの関税率は10年後2%に下がるというのであれば
それに応じた経営、投資戦略が必要になります。
そこで輸入しようとする貨物の特恵税率は今後どうったスケジュールで
下がっていくのかを知るには譲許表を確認する必要があります。
譲許表とは各協定の付属書一と呼ばれるもので
以下のような表になっております。
見た目は品目別分類規則の一覧に似ておりまして
何やら記号が意味を持っていそうです。
これを読み解くのはなかなか難しいのですが
日本の税関は親切にこれを非常にわかりやすいように譲許表を
国別、HS別、期間別にステージング表一覧にまとめてくれています。
以下はその一例です。
一番上の行のHS2008.97-229の品目の税率を見ると
2017/1/1の時点では特恵関税率7.4%が2017/4/1からは6.4%に下がり
2018/4/1以降はずっと5.3%になるという事がわかります。
これを譲許表で確認するとなると非常に難解である為
この一覧を作ってくれた税関職員には敬服します。
上司にこの作業をやれと言われたと思うとゾッとします。
但しこのステージング表一覧で全て解決というわけではありません。
一万種類もあるHSコードのすべてのステージング表を100%完璧に
作成するのは不可能に近いので、やはり最終的には譲許表を読んで
確認する作業は必要です。
また、三国間貿易やグローバルサプライチェーンで
特恵関税を使う場合は日本を介さない事になるので
当然日本政府によって作られた上記のようなステージング表一覧は
使えなくなり、海外の譲許表を直接読むスキルも必要です。
譲許表は外務省のHPにPDF形式で記載されております。
今回は日マレーシアの例を見てみます。
上記のページに以下のリンクがあります。
譲許表は基本的に協定文の「附属書一」に該当します。
上記PDFを開くと基本的なルールの記述と以下のような表があります。
この表が譲許表となります。
1欄目はHSコード
2欄目は品名
3欄目は協定締結後の基準税率
4欄目は三欄目の協定税率から引き下げ、撤廃方式
5欄目は四欄目の注訳(補足)
となります。
譲許表の四欄目の区分については以下のスライドがわかりやすいです。
正確に譲許表を読みこなすには上記の4欄目の内容を
確実に理解する必要があります。
譲許表の4欄目の区分Aについて解説します。
4欄目にアルファベットのAが記載されているHSコードの税率は
そのFTA/EPAの協定発効日に即時撤廃という意味になります。
従って3欄目の基準税率は基本的にブランクとなります。
これは一番シンプルなのでそのまま覚えてくださいね。
譲許表の4欄目の区分Pについて解説します。
区分がPとなっている場合は
「協定の発効日から不均等な関税を引き下げ、または撤廃」となり、
区分Bとの違いは関税の引き下げスケジュールが不均等という事です。
どのように関税が下がっていくかはそのHSコードの種類によって異なります。
区分Pの場合は譲許表の5欄目(最下段)に(a)~(o)などの
アルファベットが記載されております。(日ベトナムFTA)
以下は日ベトナム譲許表の例です。
Pが段階的に関税を下げるという意味で
5欄目注釈の(a)~(o)がその下げ方の解説となります。
この(a)から(0)までのそれぞれの意味は各FTA/EPA協定文の
譲許表に記載されております。
以下引き続きベトナムの譲許表5欄目注釈の意味一覧です。
このような表にして頂けるとありがたいのですが
求める国の譲許表の5欄目の意味一覧がネット上に全てあるかというと
そうでもないと思いますので直接協定文を見る必要が出てくるかと思います。
ちなみに協定文自体に5欄目の注釈は以下のように記載されております。
日ベトナム譲許表の5pは以下の通りです。
また、日ベトナムの例では5欄目に(a)から(o)が入りますが
日マレーシアの場合は数字で1から10が入るようです。
譲許表の4欄目の区分Bについて解説します。
4欄目にアルファベットのBが記載されているHSコードの税率は
協定の発効日から段階的に毎年均等な関税の引下げという意味です。
上記の例では「ふぐ」の4欄目がBとなっております。
B5というのは複数回に分けて基本税率からゼロにする回数を表します。
B5とあればその数字の5に+1をした数字である6が引き下げ回数となり
協定発効日から6年目に関税がゼロになるという意味です。
もしここがB6とあれば数字の6に+1をした数字7が引き下げ回数で
協定発効日から7年目に関税がゼロになります。
段階的に関税が下がるイメージとして以下の図をご覧ください。
上記の例では枝豆の関税の撤廃スケジュールを表しています。
譲許表の4欄目はB5となっておりますので数字に+1をして
6年かけて6%の基準税率をゼロにするスケジュールです。
3年後の税率を知りたいと思ったら
基準税率 ÷ 引下げ回数(Bn) = X
基準税率 - 3(年後) × X
となり上記の例では3%と予測が立ちます。
(協定発効日から次の4/1まで間隔が短い場合はプラス一年と
考えた方が良い場合もあります。)
ちょっとややこしいですが小学生レベルの算数ですので
ご安心ください。
譲許表の4欄目の区分Rについて解説します。
Rの意味は協定の発効後も関税撤廃等に関して再交渉の余地が
ある品目という意味になります。
自由貿易協定締結時にどうすればよいのか決まらない時の措置
ということになりますので、調べたいHSの4欄目がRの場合
その時点で協定の締結から何年目なのかを確認してください。
上記の例でいうとジャガイモを粉状にした混合物を油で揚げるか
焼いたものに関しては特恵税率は再交渉の余地があるという事で
別表等を確認して現時点での関税率を確認する必要があります。
譲許表の4欄目の区分Qについて解説します。
Qの意味は関税割当該当貨物である事を表します。
輸出国管理方式と言い個々の輸出について輸出締約国が発給する
証明書に基づいて輸入締約国が一定の輸入数量に対して
関税の減免税を行います。
例えば日ベトナムFTA/EPAで天然はちみつを
日本側が輸入する場合はこの関税割当に該当します。
各年の合計割当数量:
1年目100トン、2年目105トン、3年目110トン、4年:115トン、5年 目120トン、
6年目125トン、7年目130トン、8年目135トン、9年目 140トン、10年目145トン、
11年目およびそれ以降各年150トン 枠内税率 12.8%
という流れです。
予め枠内に入るように割り当てを受けなければ
特恵関税の恩恵が受けられないので手間のかかる手続きになりますね。
譲許表の4欄目の区分Xについて解説します。
Xの意味は協定の発効後であっても特恵関税の恩恵はないという事です。
日ベトナム協定文には以下のように記載されております。
4欄目Xの場合は多くのFTA/EPAで関税撤廃から除外となりますので
ご注意下さい。
今まで紹介してきた譲許表の読み方は日本に輸入し、
日本の税関から徴収される関税の減免を行う方法でしたが、
これとは逆に輸出をするという場合は相手の国で発生する関税を
減らす形になります。
FTA/EPA締結時に各国はそれぞれお互いの関税率を協議によって
撤廃したり、減税したり、あるいは譲れない部分は据え置きしたりします。
これは各国の持つ各品目に対する生産力の強さや弱さが現れます。
それによって譲許表はFTA/EPAを締結する際
各国それぞれの譲許表が作られます。
その為、FTA/EPAの相手国に輸出をする場合は
相手国の譲許表(英語)を読む必要があります。
ではここで例として日ASEANのFTA/EPAの日本側の譲許表で
きのこ(HSコード0712.31)を見ますと以下のようになります。
日ACEANで日本側はきのこの輸入に対し慎重です
締結後関税率は9%で4欄目はB10なのでその後11年かけて撤廃という
スケジュールになっております。(B10の読み方はこちら)
それに対しACEAN側の譲許表で同じHSコードのきのこを見てみます。
COLUMN 4というのが日本の譲許表でいう4欄目です。
ここがAとなっているので関税はFTA/EPA締結後に即時撤廃となります。
(4欄目Aの読み方はこちら)
日ACEANのFTA/EPAを活用し、きのこを輸出入する場合
日本は11年かけて撤廃
ACEAN側は即時撤廃というスケジュールに違いがありますので
輸出と輸入で譲許表は別々に考えて頂くようお願いします。
以下に英語の譲許表の読み方を紹介します。
上記は日ベトナムFTA/EPAのベトナム側の譲許表を紹介しています。
どの国も基本的にはこのスタイルですのでこのパターンを覚えておいて
頂ければ殆どの国の譲許表に対応できるかと思います。
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中国製品を日本に輸入する際に税関で関税が課されますが、これを削減
できたら利益率を大幅に上昇できる可能性があります。
関税削減の方法は複数ありますが一般的には以下の2つがあります。
①EPA(経済連携協定)を適用して輸入
②GSP(一般特恵関税制度)を適用して輸入
このうち②の方法は2019年4月に廃止されましたので現在まで中国製品の
輸入時にかかる関税削減の方法はほぼ無しという状況ですが、2020年11月15日
RCEPという名称のEPA(上記で紹介した①の経済連携協定)に日本、中国を含む
15か国が署名しました。
これにより2021年内には中国産の品目の関税削減が再度別の形で実現する事に
なります。
以下の譲許表を確認すると中国製品のHSコード別に削減できる関税率を確認
する事ができます。
日本側譲許表(日本で発生する中国製品輸入に対する関税率)
例えばHSコード640340.012に分類される中国製品の靴の場合、関税は
「30%又は4,300円/足のうちいずれか高い税率」というように高関税が設定
されていますが、RCEPを適用する事により一律20.6%に関税削減が可能となり、
その後毎年関税率は19.5%,18.5%,17,5%と下がって行き、RCEP発動から21年後には
関税0になるという事が以下の譲許表からわかります。
輸入している中国製品のHSコードが判明していれば上記の譲許表から
どの位関税削減が可能なのかを確認する事をお勧めします。
※現時点ではまだ協定発効はしていないので上記関税率はあくまでも予定ですので
ご注意ください。
本記事執筆時点ではまだRCEPの運用は準備段階にあるため、まだ中国製品の
関税削減は行えませんが、制度が整い次第中国製品の関税削減法を本HPにて
詳しく紹介させて頂きますので宜しくお願い致します。
※以下2019年4月1日時点の記事「2019年4月から中国特恵関税が卒業」
税関HPより中国,メキシコ,タイ,マレーシア,ブラジルの5か国は2019年4月から
「平成31年度に卒業基準(※)により卒業した国」として発表されました。
特恵関税の趣旨は先進国が開発途上国の産品に対して、⼀般の税率より
低い関税率(特恵税率)を適⽤する制度ですので、該当の経済成長が
一定基準に到達すれば「卒業」となり、特恵関税制度の対象から外れます。
特恵関税卒業の基準は以下の2つです。
①3年連続で「⾼所得国」に該当した国
②3年連続で、「⾼中所得国」以上に該当し、世界の総輸出額に占める
当該国の輸出額の割合が1%以上である国
また、アルゼンチン産のグレーンソルガムについては
平成31年4月1日から平成34年3月31日まで、
特恵税率の適用対象から除外される事になります。
※税関資料より引用
※2018年12月16日現在での資料
上記5か国からの特恵関税制度が停止予定である事はわかったが
実際にご自身が扱っている貨物の関税率が今後どうなるのかわからないと
いう場合は普段通関をお願いしている通関業者様に聞くのが一番です。
また、ご自身で調べたい場合は普段通関業者からもらっている許可書を確認し、
各欄のHSコードの下部にある原産地の欄のコードを確認します。
原産地の項目に4桁のアルファベット「WK〇〇」とあれば
そもそも特恵関税を適用していない貨物なので今回の特恵卒業とは
関連しない事になります。
しかし、この「WK」の部分が「GS」であり、かつ中国、メキシコ、タイ、
マレーシア、ブラジル原産である場合は31年度から特恵関税適用対象外に
なる可能性がありますので注意が必要です。
※「WK」の意味は 国定・WTO協定
※「GS」は一般特恵 の意味
HSコードから一般特恵関税の対象かどうかを確認する方法は
税関HPの実行関税率表を確認します。
一覧の中から最上段にある最新の実行関税率表を選択すると
各品目の類ごとに分かれた一覧が出てきます。
第〇〇類というのはHSコードの頭2桁で(例:頭2桁が01であれば1類)
該当する類にある「税率」をクリックします。
「税率」のページでHSコード9桁レベルで同じ品名を見つけたら
「特恵GSP」の欄にある税率を確認します。
ここに記載されている税率が一般特恵の関税率となりますので
特恵卒業の対象となった場合は基本的にはその左側にある
WTO協定の税率に移行すると考えられます。
※但し、ここに特恵関税率が記載されていても特恵税率が適用できない
国もあるので詳細は当記事の続きをご覧ください。
上記の実行関税率表上で特恵関税が設定されていても
国別・品目別特恵適用除外措置の対象品目に記載されている国原産の品目は
特恵関税率が適用できない場合もありますのでご注意ください。
例えばカフスボタン(HS7117.11-010)を中国から輸入する場合、
実行関税率表を見ると特恵欄に無税とあるので中国の原産地証明書があれば
関税はゼロになると考えてしまいますが、、、
実際に国別・品目別特恵適用除外措置の対象品目を見ると
HS7117に属する品目は特恵関税率の設定はありますが
中国産の場合は適用できませんという事になります。
これはつまりHS7117から始まる品目全て(7117.11-010と7117.11-020)が
中国産の場合は特恵関税率の対象から外れるという事になります。
HSコードが判明していても特恵関税率適用可否の判断はこのように
非常にややこしいので、通関業者や税関に問い合わせする事をお勧めします。
※以下の記事は2018年4月12日に書いた内容です。
平成30年度特恵関税制度の見直しで中国産品目の特恵関税制度が
一部廃止となり、平成30年4月1日以降の申告では以下の
特恵適用除外措置リストに掲載されている貨物の特恵関税の適用が
受けられなくなりました。
中国はすでに発展途上国ではない事が明らかですので
中国産の特恵関税制度除外措置は今後どうなるのでしょうか?
結論から言いますと
中国、タイ、メキシコ、マレーシア、ブラジル
の5か国の特恵関税制度が平成31年度から除外対象になる可能性が
高いと考えられます。
平成31年度(2019年4月)の中国特恵関税に関する記事が
貿易と関税 (2018年4月号)第781号にありましたので
以下に引用させて頂きます。
今後の指針になるでしょう。
特恵関税適用除外措置に伴う個別品目の関税率の見直し
(資料5)特恵関税制度に関する改正について説明する。
内容は大きく二つに分かれている。1点目は、昨年度改正で行った特恵関税制度の見直しを受けて、
個別品目の税率変更を行うものである。
もう1点は、特恵税率適用の前提となる原産地確認を
徹底するための制度的な手当てである。まずl点目、資料5に示しているが、そもそも特恵関税綱度は、
途上国の開発支援のために、開発途上国からの輸入品に対して、
一般の税率より低い関税率である特恵税率を適用する制度である。
しかし現在、特恵税率が適用される品目の輸入状況を見ると
途上国の中でも比較的所得の高い高中所得の一部の国、
極端にいえば中国からの輸入品に適用が偏在している。これは、特恵関税制度の趣旨から鑑みて
いかがなものかということから、昨年度改正において、
特恵税率の適用除外となる要件の見直しを行ったところである。
〈参考1〉特恵関税の適用除外措置(新要件)(資料6)
具体的には資料6に示している。この表のうち、
朱書き部分が昨年度の改正で見直した条件になっている。
表の一番上の左側に「全面卒業」とあるが、こちらは従来、
高所得国からの産品であれば特恵税率は適用しない、
すなわち特恵制度から全面卒業するという条件になっていた。しかし、昨年度改正において、「高中所得国」かつ
「世界の総輸出額に占める当該国の輸出額の割合が1%以上である国」
すなわち、ある程度輸出競争力を持つ国を除く
という条件を新規に追加した。こうした国々からの産品も全面卒業させることに
したわけだが、この新しい件を適用することで、平成31年度から中国等の5カ国が適用除外となる見込みである。
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ミンクコートの原産地規則適用の可否を検討した実例を紹介します。
カンボジアの生産者がミンクのコートを製造。
その際に材料として韓国産の「なめしたミンク毛皮」を調達
この場合特恵関税を適用する場合
特別特恵税率(LDC) ※*印があるのがLCD受益国47か国で関税削減か
あるいは日アセアンEPAで関税削減が可能かどうかの検証をします。
上記の表はミンクのコートの帰属するHS4303の原産地規則です。
右の欄に「HS4302又はHS4303以外の物品からの製造」という
条件が記載されております。
このミンクのコートはなめしたミンク毛皮HS4302に属するので
一般特恵関税の品目別分類規則には沿わない形になります。
ではもう一方の日アセアンEPAではどうでしょう?
まず関税率は20%なのでWTO協定税率(通常の関税)と同じですので
EPAを使う意味は無いですが原産地規則の検証という意味で見てみましょう
一応同じ条件のミンクのコートを日アセアンEPAの品目別分類規則に
沿うかどうか確認してみます。
日アセアンEPAでも非締約国から調達したHS4302に属する原料から
製造されたHS4303の製品は原産地規則を満たさない事になります。
よって韓国産のなめしたミンク毛皮によってカンボジアで生産された
ミンクのコートはどうやっても関税20%が発生するという結論になります。
このように一般特恵関税(GSP)と特別特恵関税(FTA/EPA)の
両方が適用できる場合どちらを選ぶかは慎重になる必要があります。
例えばインドからの輸入貨物の場合
一般特恵関税も特別特恵関税も両方使える形になりますが
品目よってはこの選択を誤ると
原産地証明書自体使用不可になる危険性があります。
こちらを理解するにはまず関税の種類についての理解が必要です。
関税の種類には以下の5つがあります。
1.特別特恵税率(FTA/EPAで使用)
2.一般特恵税率(GSPで使用)
3.WTO協定税率(WTO加盟国で使用する税率)
4.暫定税率(政策等により一時的に決定された税率)
5.基本税率(基本ベースの税率)
この5つの税率の中で優先順位がありますので
その優先順位に従ってする必要があります。
但し、ここには重大な落とし穴があります。
EPAとGSPの両方に税率の設定がある場合注意が必要です。
原則:
EPA税率が優先されGSP税率は適用不可
例外:GSP税率の方がEPA税率より低い場合は両方適用可能
GSP税率 < EPA税率 = 両方適用可
GSP税率 > EPA税率 = EPA税率のみ適用可
関税暫定措置法施行令第二十五条4(3)
(関税基本通達3-2(2))
一般特恵、特別特恵、FTA/EPAなどの複数の特恵関税が適用される場合
品目によってどちらか一方の特恵しか使えないケースがありますので
ご注意下さい。