特恵関税率を適用した申告に対する事後調査によって判明した
違反事例を紹介します。
※ばれいしよの調製品(税関:原産地規則ポータル)から引用
上記違反事例はばれいしょ(じゃがいも)の調整食品です。
マレーシアからの輸入の為、日マレーシアEPAによる特恵関税を適用する形で
申告されたのですが特恵関税を適用ができない貨物と判断されました。
その経緯は税関による食品の製造工程、原料のチェックから
はじまります。(申告時の審査、検査、事後調査のどれかは不明)
調査ではその製品の製造工程や原料をチェックして原料の原産国を確認します。
上記の例では製品がばれいしょの調整品であり、原料がばれいしょそのものなので
ばれいしょをどこで収穫したのかがポイントになります。
上記違反事例を見ると特恵記号(原産地記号)は”A”となっておりますので
税関に提出した原産地証明書の5欄目には”A(完全生産品)”となっており、
ばれいしょはマレーシアで収穫されたものであると申告したものと考えます。
↓原産地証明書記載要領
↓今回の事例で申告した特恵符号
しかし、何らかの理由で
原料がマレーシアで収穫したものではないという事が明らかとなり、
原産地証明書にある特恵符号Aというのが誤りであると判断されます。
そこでマレーシア以外の国から調達した原料であれば
どの国で収穫したのかが焦点となります。
ここで原産地規則の品目別分類規則が登場して、
製品であるばれいしょ調整品のHSコードに対する規則を確認します。
↓HS2005.20に対する品目別分類規則
まず大原則としてばれいしょ調整品の原料はHSの頭2桁(類)が”20″以外のもの
である必要があります。
完成品であるばれいしょの調整品のHSは2005.20
原料であるばれいしょそのもののHSは0701.10
原料のHSは”07″なので頭2桁変更の大原則はクリアしていますので
一見原産地規則を満たして特恵関税の適用可能な貨物のように見えます。
しかしかっこ書きにある文言が全てをひっくり返します。
(第七類の非原産材料を使用する場合には、
当該非原産材料のそれぞれが
東南アジア諸国連合の加盟国である第三国において
収穫され、採取され、採集され、
又は完全に生産される場合に限る。)
これは原料のHS頭2桁が”20″以外であっても
“07”類の場合はちょっと例外がありますよという事で
“07”類の原料を使っている場合は特定の国のものしか認めませんよ
という意味になります。
特定の国とは東南アジア諸国連合の加盟国の中のどれかです。
今回の事例では東南アジア諸国連合の加盟国以外の国から収穫した
ばれいしょを調達したものであったという事です。
(例えば中国にて収穫したばれいしょであれば規則に反します)
そのそも原産地証明書の5欄目に完全生産品と記載されている時点で
アウトなわけですが、こういった場合でも原産地規則を満たすことを証明できれば
税関としては特恵関税の適用は認めてくれます。
とは言っても今回はそもそも東南アジア諸国連合国以外から収穫した原料の為
今回は特恵関税の適用が認められなかったという事例になります。