輸入申告前に関税率を確定させる為の手段に事前教示という制度があります。
予めHS分類を行い、関税率を確実に把握する便利な制度ですが
税関からの回答は税関HPにて原則公開されす。
照会者名、製品名は公開されませんが成分、製造工程など
公開したくない内容もHS分類の根拠になるのであれば基本的に公開され、
誰でもその照会内容と回答を閲覧する事ができてしまいます。
競争相手に情報を提供してしまう恐れや特許出願手続きにおいて
壊滅的なデメリットに結び付きそうですが、こういったケースの為に
機密事項については取り扱いの規定が存在します。
※以下税関HP「事前教示制度よくある質問と回答」より引用
文書回答の内容は、行政サービスの一環として一般の納税者の予測可能性を確保する観点から、回答後原則として、税関ホームページにおいて公開することとしています。公開にあたっては、照会者名や取引関係者名等は原則匿名にして公開します。
ただし、文書回答の内容が公開されることにより不利益を受けるおそれがある場合等、照会者が正当な理由を有する場合で、照会者から非公開期間(180日を超えない期間)の設定の要請があったものについては、当該要請に係る期間後に公開します。
また、非公開期間が経過した後は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に定める不開示情報に該当すると考えられる部分や守秘義務に抵触すると考えられる部分については、当該部分を伏せて公開することとなります。
どのようにして事前教示照会内容の秘密を保護してくれるのかは
「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)にて定める
「不開示情報」という定義に当てはまるものを伏せるという形になります。
不開示情報の定義を知るために情報公開法の条文を確認すると
以下の項目が特に該当する部分と考えられます。
第五条二
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、
競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの
であって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているもの
その他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして
合理的であると認められるもの
情報公開法というのは国が持つ情報を国民が開示請求する為の法律です。
もちろん何でも公開するというわけではなく、公開できない情報(不開示情報)
もありますので両者をどのように扱うかを定めております。
事前教示によって税関職員が得た企業の秘密は上記の情報公開法における
不開示情報として扱われる余地があるという事になります。
また、関税基本通達にはより具体的に不開示情報の取り扱い方法が
記載されておりますので、こちらもご参考までに。
(関税率表適用上の所属区分等又は原産地に係る事前照会に対する
文書回答の手続等)
7-18 (6) 公開
関税率表適用上の所属区分等の適用及び原産地認定の透明性の向上を図
っていく観点から、照会貨物の内容及び回答の内容は、回答後原則として公
開とし、税関ホームページ等を利用して輸入者等一般の閲覧に供するものと
する。ただし、次の要件に該当する場合で、照会者から一定期間内(180 日
を超えない期間内)につき公開しないことを求める申出があったものについ
ては、当該申出に係る期間後に公開することとする。ただし、行政機関の保
有する情報の公開に関する法律に定める不開示情報に該当すると考えられ
る部分や守秘義務に抵触すると考えられる部分については、当該部分を伏せ
て公開することに留意する。
イ 照会対象となった貨物が新規の輸入品であり、市場に流通する前に他
者に知られることにより照会者又はその関係者が不利益を受けるおそれ
がある場合
ロ 照会対象となった貨物の照会内容のうち成分割合に特徴があり、公開
によって競合する者に知られ照会者又はその関係者が不利益を受けるお
それがある場合
ハ 照会対象となった貨物の照会内容のうち製造方法に特徴があり、公開
によって競合する者に知られ照会者又はその関係者が不利益を受けるお
それがある場合
ニ 照会対象となった貨物がまだ計画段階であり、実際に貨物が輸入され
る前に他者に知られることにより照会者又はその関係者が不利益を受け
るおそれがある場合
ホ 照会対象となった貨物に係る情報が、照会に際して秘匿を条件として
照会者又はその関係者から提出された場合
ヘ その他非公開とすることにつき、正当な理由があると認められる場合
事前教示を申し込む際には何が公開可能で何が公開不可能なのかを
関税監査官等に詳しく説明する必要があります。
そうでないとHSの分類の根拠となればそのまま公開されてしまう危険があります。
税関側としてもHS分類の根拠を明確にする為に一定の情報は必要ですので
そこはお互い話し合って協力しあう事が必要となります。
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