昨今のEPAにおいては自己証明制度が主流となりつつあり、輸出入
企業自身が作成する原産品申告書を税関に提出し、関税削減の恩恵
を受けることになりますが、もし原産品申告書以外に原産性を主張
する証明が存在しない場合はどのように扱われるのでしょうか。
原産品申告書は輸出入企業が望むままに記入、作成する事ができる為
申告書の内容の信憑性を証明できない場合の取り扱いが問題になります。
本記事ではチョコレートを輸入する企業が自己証明制度を利用して
関税削減の恩恵を受けて輸入するものの、原産品申告書にて主張した
内容の証拠を一切提示できなかった場合の事例を紹介します。
輸入者Aは複数種類のチョコレートを輸入する企業で、自己証明制度
を活用して特恵関税の適用を受けておりました。
適用するEPAにおいて定められたチョコレート(HSコード:1704.90)の
品目別原産地規則はCTHとなり、かつ4類及び17類の非原産材料を使用
した場合はその価額が産品の工場渡し価額の45%を超えないことが条件
となっていますが税関の審査部門がこの点について疑義がを持った事か
ら輸入者に対し成分の詳細と価格情報を要求する事になりました。
しかし、輸入者は十分な情報を税関に提出できませんでした。
そこで税関は更に輸入者を通じて輸出者から直接情報を入手するように
働きかけましたがそれでも詳細情報の入手は実現できませんでした。
そこで日本税関は輸出国税関に検認を要請し、当該チョコレートの
原産性関する情報を得ようと試みましたが、検認においても原産性を
立証する為の十分な情報は得られませんでした。
その為、本事例においては税関の質問に対する原産性の立証ができない
という理由で特恵関税の適用を否認されるという結論に至りました。
自己証明制度であるからといって原産品申告書から原産性を主張するだけ
では不十分であり、原産品申告書の内容を証明する情報をいつでも税関に提出
できるよう準備しておくことが重要であるということがわかります。
自己証明制度においては根拠なき主張をしたくなる誘惑が目の前に
たくさん転がっていますが検認や事後調査はいつ行われても不思議では
ありませんので、日々情報の整理を心掛ける事が重要です。
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