HSコードの分類法は通常、世界共通であると考えられますが実際矛盾する部分も
多くあります。
特に機械、自動車等の部分品の分類に関しては非常に混乱する事があります。
よくあるケースでは同じ品目を輸出しているにも関わらず、輸出先国の税関に
よってHSコードが異なるという現象があります。
今回紹介する事例は同一国に輸出した同一の品目であっても対象国の税関審査官に
よってHSコードの分類先が異なるという事例です。
目次
ドイツ税関の場合
以下の品目は自動車内部機関に使用されるケーブルを束ねるためのホルダーです。
2017年にHSコード:3926.30(プラスチック製自動車部品)に分類されています。
画像 | |
---|---|
発行国 | ドイツ 出典:EU Customs Union |
ID | DE239/17-1 |
日付 | 2017-05-26 |
品名 | CABLE HOLDER |
HSコード | 3926.30 |
以下の事例は同じくドイツ税関によるHSコード分類事例です。
上記の事例と同じ品目で自動車内部機関に使用されるケーブルを束ねるための
プラスチック製ホルダーですが2018年通関時には税関審査官が異なるせいか
HSコード8707.99(自動車部品)に分類されています。
画像 | |
---|---|
発行国 | ドイツ 出典:EU Customs Union |
ID | DEBTI5248/18-1 |
日付 | 2018-09-06 |
品名 | CABLE HOLDER |
HSコード | 8708.99 |
HSコード:3926.30(プラスチック製自動車部品)と8707.99(自動車部品)は
境界のはっきりしない部分ですので税関審査官によって意見のばらつきが発生し
やすく注意が必要です。
アメリカ税関(CBP)の場合
アメリカ税関審査官の意見とアメリカの裁判所(CIT 米国国際貿易裁判所)の
HSコードの分類意見が異なるという事例もあります。
以下の品目は「プライヤー」(HSコード:8203)でもあり、
「レンチ」(HSコード:8204)でもあるという両方の機能を備えた工具です。
プライヤーとしての特徴である人の手で握りしめて対象物を傷つけながら
締め付け、レンチのような調節機能により締め付けたまま固定する事が可能
であるため、「プライヤー」(HS:8203)なのか「レンチ」(HS:8204)なのかで
判断に迷う部分ではあります。
裁判所はアメリカ税関(CBP)が主張するHSコード分類「レンチ」(HS:8204)の判断を
退け、輸入者が主張するHSコード分類「プライヤー」(HS:8203)の判断を認容するに
至りました。
裁判所の意見としては当該品目は用途的には米国税関が主張するレンチに該当
するがHSコード分類の規定におけるレンチの定義に用途に関する規定が無いとして
用途よりも外見的特徴から「プライヤー」(HS:8203)に分類する事になりました。
アメリカ税関はこの判断を不服とし、今後同種の品目が輸入されてもHSコードは
初回の判断を貫き、8204での通関を続けると主張しているため、同種品目をアメリカに
輸出する方は混乱するかもしれません。
インド税関の場合
インド税関を悪く言うつもりは無いのですがインド税関でのHSコード分類基準は
一体どうなっているのか甚だ疑問に思います。
税関審査官によって意見がコロコロ変わるだけでなく、輸入地、時期によっても
分類基準が異なる場合があるためインド向けに輸出している方はHSコードの分類
基準で悩むことが多いのではないかと考えます。
実際インドでのHSコード意見相違についての相談を受ける事がよくありますので
インド税関での事前教示をお勧めする事もありますが、回答を得るまでに1年近く
もかかるという実情があるようでインド税関では事前教示制度は事実上の運用に
過ぎないと評価せざるを得ません。
HSコード分類意見相違への対処法
上記のような問題を解決する方法として最も有効な手段は事前教示制度の活用と
いう事になりますが、対象品目が多い、通関を急いでいる、相手国税関との取次
をどうするかなど事前教示制度の活用はまだまだ困難であると考えます。
そのため、代替案として各国税関の事前教示回答データベースを参照する事を
お勧めします。対象品目が過去にどのHSコードで分類されているかを調査し、
分類根拠を関税率表解説(Explanatory Notes)から引用し、通関審査時に先に
輸入者側から税関に提出し、税関側に疑問を持たせないように誘導するという
方法です。
どの国でも税関職員は非常にプライドが高いため、一度HSコードの分類に対する
疑義を発したらよほどの事がない限り撤回する事はありません。
その為、分類に至った根拠を税関職員から質問される前にしっかりと提示する事が
スムーズに通関する為に重要なポイントになる事があります。
コメントを残す