アルミニウム製の”消火器の管用継手”のHSコードが「消火器」の
部分品に分類されるかどうかを考察します。
EPA非締約国から「消火器」の部分品である”消火器の管用継手”を調達
してEPA締約国内にて「消火器」を完成させ、更に当該産品をEPA締約国
に輸出する際に、輸出先においてEPA関税削減の対象となる「締約国の
原産品」としてみなされるかどうかという点について当該”管用継手”の
HSコードが「消火器」の部分品になるかどうかが問題になります。
目次
HSコード分類の際に検討する問題点
HSコード8424.10に分類される「消火器」の場合、”管用継手”が当該
「消火器」の部分品と判断されれば、同じ項である8424に分類され
る可能性があります。
もし、対比表を作成するEPA担当者が当該”管用継手”は製品である
「消火器」に設置するように設計されたものであるという理由のみで、
深く考えずに「消火器」の部分品として分類してしまうとHSコードの
項(4桁)が共通となってしまい、
HSコードの分類方法の誤りによって自ら関税削減の恩恵を手放す事態
も考えられます。
誤った分類をしてしまうと関税分類変更基準(CTC)において不利な分類
となってしまい、本来原産地規則を満たすものを満たさないと判断し、
関税削減の目的を達成できなくなる恐れがあります。
HSコードの分類において部分品の分類は非常に複雑である為、本事例の
場合は当該”管用継手”が「消火器」の部分品であるHSコード8424に分類
されるかどうかについて更に深く検討してみる必要があります。
税関によるHSコード判例
このような”消火器の管用継手”の品目分類は日本税関の事前教示に判断
事例があり、本判例ではHSコード7609.00「アルミニウム製の管用継手」
に分類されました。(※判例とは裁判所の判決ではなく税関による判断事例を指す)
登録番号 110002942
税関 名古屋
処理年月日 2010-08-05
一般的品名 アルミニウム製の管用継手
税番 7609.00-000
貨物概要
アルミニウム製の管用継手(ねじ込み式)材質:アルミニウム(97.93%)構造:1)中空の管状で、一端はノズル取付用のねじ切りがされ、もう一端は消火用ホース取付用の溝加工がされている。2)中空の管状で、一端は消火栓接続用のねじ切りがされ、もう一端は消火用ホース取付用の溝加工がされている。3)中空の管状で、一端はホース継手接続用のねじ切りがされ、もう一端は消火用ホース取付用の溝加工がされている。サイズ:1)長さ66.5mm(口径約25mm)2)長さ54mm(口径約25mm)、長さ68 .5mm(口径約30mm)の2種類3)長さ74mm(口径約40mm)、長さ91mm(口径約50mm)、117mm(口径約65mm)の3種類用途:1)消火用ホースとノズルの結合2)消火栓と消火用ホー スの結合3)消火用ホース継手と消火用ホースの結合その他:ねじ部分が特殊構造(消防ねじ)となっていて、消防法による型式承認を受けている。
分類理由
本品は、消火栓、消火用ホース及びノズルに使用するねじ込み式の管用継手であり、関税率表第76.09項及び同表解説第76.09項の規定により、上記のとおり分類する。なお、本品は、同表第15部注2(a)(非鉄卑金属製の)はん用性の部分品に該当することから、同表第16部注1(g)の規定により、同表第84.24項には分類されない。※本回答書に記載された協定及び特恵の関税率は、一定の条件のもとでのみ適用されるものである。
EPA関税削減の為の関税分類変更基準
関税分類変更基準においては非原産材料のHSコードと製品のHSコードは
できるだけ離れている方が原産地規則を満たしやすくなります。
本事例の場合、{アルミニウム製の管用継手}として認められれば締約国での
加工によって76類から84類にHSコードの頭2桁が変更となる為、特恵関税率
を適用するための関税分類変更基準を満たしやすいと考えますが、”消火器
の管用継手”を「消火器」の部分品としてHS8424.90に分類してしまうとHSの
項(頭4桁)は共通となってしまうため、関税分類変更基準において不利になる
可能性があります。
その為、最終製品の部分品のHSコードに分類されるのかどうか、他の類
への分類される余地の有無を検討する事は関税削減において非常に重要です。
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