液晶プロジェクターを製造する際に当該プロジェクターの光学部品
として使用する光学ガラスをEPA非締約国から調達する場合に、
完成品が輸出先において関税削減の対象となる締約国の原産品として
みなされるかどうかという点について当該光学ガラスのHSコードが
プロジェクターの部分品になるかどうかを検討してみます。
目次
HSコード分類の際に検討する問題点
プロジェクターのHSコードは8528となり、当該品目の部分品となれば
HS8529に分類される可能性があります。
当該光学ガラスは製品であるプロジェクター内部に設置するように
設計されたものであるため、プロジェクターの部分品として分類する
と考えられるケースもあるかもしれませんが、そのように分類すると
HSコードの頭2桁が共通となる為関税分類変更基準においては不利な
分類と言える為、本当に部分品に分類されるのかどうかについて更に
深く検討してみる必要があります。
出典:プロジェクターの技術と応用
通則と部注の規定からHSコードを特定
当該光学ガラスがプロジェクターの部分品になるかどうかは
プロジェクターのHSの属する16部の注規定を確認します。
16部の注1(m)には90類の物品が16部(85類)から除外されるという規定
となっている為、プロジェクターの部分品であっても16部(85類)から
除外される為、通則1の規定の部の規定に従う事によりHSコード8529の
プロジェクターの部分品には分類されません。
※上記のように規定されているとしても「90類=光学ガラス」と
即座に判断する事は非常に困難であるため、入念な調査によって
初めてこのような判断が可能になります。
関税監査官による事前教示
このような光学ガラスは日本税関の事前教示に照会事例があり、
プロジェクターの部分品には分類されず、HSコード9001.90の
「プリズム、鏡その他の光学用品」に分類される事になりました。
登録番号 116005487
税関 東京
処理年月日 20161124
税番 9001.90-000
一般的品名 光学材料部品
貨物概要 :偏光性を有する直方体状の光学材料部品
製法:光学用特殊プラスチックフィルムの両面にガラス製の三角プリズム
を接着してカットしたもの
形状:直方体 材 質:光学ガラス(99%以上)、特殊光学フィルム及び
アクリル系化合物(1%未満) サイズ:(縦×横)約5~15mm、
(長さ)約5mm~30mm
機能:直線偏光で入射された照明光を透過し反射させ、組み合わせて使用
する液晶パネルの偏光方向変換機能により照明光入射方向に対し90℃
向きを変えて出射させる
用途:小型液晶プロジェクター用光学部品として使用する
EPA関税削減の為の関税分類変更基準
関税分類変更基準においては非原産材料のHSコードと製品のHSコードは
できるだけ離れている方が原産地規則を満たしやすくなります。
本事例の場合、締約国での加工によって90類から85類にHSコードの頭2桁
が変更となる為、特恵関税率を適用するための関税分類変更基準を満たし
やすいと考えますが、光学ガラスをプロジェクターの部分品として分類し
てしまうとHSの頭2桁は共通となってしまうため、関税分類変更基準にお
いて不利になる可能性があるので本当に部分品のHSコードに分類されるの
かどうか、他の類への分類される余地の有無を検討する事は関税削減にお
いて非常に重要です。
※日本が締結しているEPAにおけるHS8528に対する品目別原産地規則は
CTH(HS4桁変更)で満たす事ができる為、2桁変更が必須という訳ではありません。
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