本記事では木製の”すのこ板”は
・「ベッド」の部分品のHSコードに分類されるのか
・「ベッド」の部分品以外のHSコードに分類されるのか
を考察し、関税削減の為の戦略的HSコード分類手法を検討します。
事例:
EPA非締約国から「ベッド」の部分品である”すのこ板”を調達して
EPA締約国内にて「ベッド」を完成させ、更に当該産品を別のEPA締約国に輸出。
この場合、輸出先において関税削減の対象となるEPA締約国の原産品として
みなされるのか、当該”すのこ板”が「ベッド」の部分品のHSコードに分類
されるかどうかが問題になります。
※画像はイメージです(照会貨物画像ではありません)
目次
HSコード分類の際に検討する問題点
HSコード9403に分類される「ベッド」の場合、”すのこ板”が当該
「ベッド」の部分品と判断されれば、同じ項である9403に分類され
る可能性があります。
もし、対比表を作成するEPA担当者が当該”すのこ板”は製品である
「ベッド」に設置するように設計されたものであるという理由のみで、
深く考えずに「ベッド」の部分品として分類してしまうとHSコードの
項(4桁)が共通となってしまい、
HSコードの分類方法の誤りによって自ら関税削減の恩恵を手放す事態
も考えられます。
誤った分類をしてしまうと関税分類変更基準(CTC)において不利な分類
となってしまい、本来原産地規則を満たすものを満たさないと判断し、
関税削減の目的を達成できなくなる恐れがあります。
部分品のHSコード分類は非常に複雑である為、本事例の場合は当該
“すのこ板”が「ベッド」の部分品であるHSコード9403に分類されるか
どうかについて更に深く検討してみる必要があります。
税関によるHSコード判例
このような”すのこ板”の品目分類は日本税関の事前教示に判例があり、
当該判例ではHSコード442199「その他の木製品」に分類されました。
(※判例とは裁判所の判決ではなく税関による判断事例を指す)
HSコード判例①木材に分類された例
登録番号 108000567
税関 横浜
処理年月日 2008-03-25
一般的品名 テープでつないだすのこ状の板材
税番 442199
貨物概要
木材をテープでつないだすのこ状の板材で、ベッドに用いるもの
性状:まつの無垢材16本を等間隔に並べ、ポリエステル製バイ
アステープ2本を木材 に対し直角につなぎ、かすがいでとめたも
の 寸法:縦1970mm、横1200mm、厚さ18mm (無垢
材1本あたり:長さ1200mm、幅68mm、厚さ18mm)
(バイアステープ:幅1cm)
用途:ベッドの枠にはめ込み、その上にマットレスをのせて使用
する 機能:ベッドにのせるマットレスを支える底板の役割を担う
為であり、弾性効果を得る ためでない
分類理由
本品は、ベッドの枠にはめ込み、マットレスを下部から支えるもの
であるが、まつの無垢材をすのこ状に並べポリエステル製バイアス
テープでつないだものであり、その形状からベッドの部分品として
の性格を外形的に有していると認められないことから、関税率表第
94.03項には属しない。本品は、関税率表第44.07項の板
材に、テープをかすがいで打ち付けて留め、すのこ状の板材にした
ものであることから、関税率表第44.21項及び同表解説第44
.21項の規定により、その他の木製品として上記のとおり分類す
る。
結論:
本事例の”すのこ板”は「ベッド」の部分品として使用される事が明
らかでありましたが、「ベッド」の部分品としての性格を外形的に
有していないものであったため、HSコードの分類は「ベッド」の部
分品(HS:9403.90)ではなく”その他の木製品”(HS:4421.99)と判断。
HSコードを戦略的に分類
EPA締約国向けに完成品である「ベッド」を輸出する場合、輸出先で
課される関税削減の為に、EPA非締約から調達する原料等のHSコード
を戦略的に分類する事による関税削減対策も可能です。
例えば…
EPA非締約国から”ベッドの部分品(HS:9403.90)”を調達し、
EPA締約国Aにて「ベッド(HS:9403.50)」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は
HSコードの頭4桁が共通となる為、原産地規則を満たす事が難しく、
関税削減ができないケースを想定してみます。
この場合、EPA非締約国から調達する品目を”ベッドの部分品(HS:9403.90)”
に分類されるギリギリ手前まで加工度を下げ、{その他の木製品(HS:4421.
99)}に分類されるよう意識して製造工程を操作、変更した場合は
EPA締約国にて品目別原産地規則を満たす品目として関税削減の対象と
みなされる可能性が高くなります。
(但し、この場合はEPA締約国Aでの加工度が上がる為、関税削減によって
得られる利益と追加加工費用の両者を比較衡量する必要があります。)
このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPAの規
則に沿って製造工程を検討し、最も関税削減ができるHSコードへ分類
されるにはどのような工程でどのような品目をEPA非締約国から調達
するのかという部分を考慮する事により効率的な関税削減が実現でき
ます。
HSコード判例②ベッド部品に分類された例
スウェーデン税関では以下ような木材プレートを”ベッドの部分品”と
して分類しました。
用途は以下のように「ベッド」のヘッドボードとして使用する木材であり、
“ベッドの部分品”としての要素が強い為、{その他の木製品(HS:4421.99)}
には分類されず、”ベッドの部分品(HS:9403.90)”に分類されました。
HSコード判例③ベッドに分類された例
登録番号 115003215
税関 東京
処理年月日 2015-06-25
一般的品名 木製すのこ
税番 940350000
貨物概要
すのこ状のもの6枚を接続ベルトで結合し、折り畳み可能な木製品
を2枚1組にしたもの
材質:(すのこ本体)桐 (連結ベルト)ポリエステル
(裏面底部)EVA 性状:2種類の木製の板を格子状にしたすのこ
(横50cm×縦31cm×高さ2.6cm)6枚を、折り畳めるように、
連結ベルトでつなぎ合わせたもの
使用時は、つなぎ合わせたすのこ2枚を横に連結させ、裏面にある溝に、
同梱されている面ファスナーを通して固定する 寸法:横50cm×
縦31cm×高さ13cm(片側1枚、折りたたみ時)
横100cm×縦200cm×高さ2.6cm(シングルサイズ、2枚連
結時) 用途:床や畳の上に置き、その上に布団やマットレスを敷い
てすのこマットとして使用することにより湿気を軽減させる。使用時以
外には折り畳んで収納可能
分類理由
本品は、折り畳み可能なすのこ状の木製品である。 本品は、床又は
畳の上に置き、その上に布団等を敷いて使用される形状、サイズであり、
寝台として使用されるものと認められることから、関税率表第94.03
項及び同表解説第94.03項の規定により、寝室において使用する種類
の木製家具として上記のとおり分類する。
①の事例と似たタイプの品目ではありますが、布団を敷いて使用する
為の形状になっている事から本事例では「ベッド」に分類されました。
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