「車用サンシェード」のHSコード分類は構造や材質によって、「繊維製品
に該当するHSコード」や、「自動車の部分品」など複数の分類先があります。
用途は同じであるにも関わらず、複数のHSコードに分類されてしまうと
分類する側に混乱を生じさせてしまうという問題やサプライチェーン上
でのEPAを適用した関税削減への悪影響が考えられます。
そこで、本記事では「車用サンシェード」のHSコード分類事例を種類別
に紹介し、様々な事例を通じてHSコード分類先の手がかりになる情報を
お伝えします。
目次
日本税関によるHSコード判例
「車用サンシェード」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)
日本税関判例:カーテンに分類された事例
登録番号 110005716
税関 名古屋
処理年月日 2010-12-17
サンシェード(自動車用ブラインド)
HSコード:6303.12(分類当時のHSバージョン)
貨物概要:
合成繊維製メリヤス編地からなる自動車の車内用ブラインド
性 状:樹脂とアルミニウム製のケーシング、芯材から成り、合成繊維製
編地のスクリーンを巻きつけて、手動で上げ下げするもの。
素 材:合成繊維製たてメリヤス編地、アルミニウム等
用 途:輸入後、自動車に取り付け、サンシェードとして使用する。
分類理由:
本品は、合成繊維製メリヤス編地からなる自動車のリアドアに使用される
室内用ブラインドである。 本品は、関税率表第87類の自動車専用の部分
品及び附属品として使用するものであるが、同表第63.03項の紡織用
繊維製の室内用ブラインドと認められるものであり、同表解説第17部総説
(III)(c)の条件を充足せず、同表第87類から除外される。 したがって、
本品は、同表第63.03項及び同表解説第63.03項(2)の規定によ
り合成繊維製メリヤス編みの室内用ブラインド(模様編みの組織を有するも
の)として上記のとおり分類する。
出典:税関事前教示事例を一部加工して作成
見解:
当該品目は自動車用のサンシェードとして使用されるものですが、17部総説
(III)(c)の条件を充足しないという理由で自動車部品のHSから外れる事に
なりました。17部総説(III)(c)とは「この表の他の類において、より特殊
な限定をして記載をしているものでないこと」と規定されており、「カーテン」
という分類の方がより特殊な限定であると判断された事例です。
日本税関判例:自動車部品に分類された事例
登録番号 112000267
税関 東京
処理年月日 2012-06-22
自動車用サンシェードシステム
HSコード:8708.29(分類当時のHSバージョン)
貨物概要:
乗用車向け手動式サンシェードシステム
性 状:サンシェード(模様編みの合成繊維製メリヤス編地)は自動車の車体に
恒久的に組み込まれドアトリムの一部を構成する。(使用されない状態では、
ドア内に収納)。ドアの窓枠下部のつまみを引き上げて窓上部のフックに取り付
けて固定する。使用後は、フックから外すとスプリング機構(内蔵されたゼン
マイ)によりシェードがドアパネル内に取り付けられたカセットのローラーシ
ャフトに巻き戻される。
素 材:卑金属(カセット部、ローラーシャフト、スプリングモーター)、プラ
スチック(カセット上部、エンドキャップ、エクステンションプロファイル、
つまみ)、紡織用繊維(サンシェード)
用 途:輸入後、自動車製造工場で自動車に取り付けサンシェードとして使用す
るための機能ユニット。
分類理由:
本品は、サンシェードの巻取・格納装置を構成する金属製のスプリングモータ
ー付ローラーシャフト、金属・プラスチック製カセット、プラスチック製のエ
ンドキャップ及びプラスチック製のエクステンションプロファイル、つまみ、
紡織用繊維製サンシェード等から成るもので、特定の車種に専用設計されてた
ものである。 当該巻取・格納装置は特定の車種のドアパネル内に組み込み、
取り付けられるものであること及び当該巻取・格納装置を構成するカセット
上部はドアトリムの一部を構成し、車の内装と調和するようデザインされて
いるものであることから、関税率表第63類総説で許容される少量の附属品
と認められないことから、同表第63.03項には該当しない。 したがって、
本品は、同表解説第17部総説(III)の(a)から(c)の条件を充足
することから、同表第87.08項及び同表解説第87.08項の規定によ
り、自動車用の部分品及び附属品として、上記のとおり分類する。
出典:税関事前教示事例を一部加工して作成
見解:
本事例は先ほどの登録番号 110005716の事例とは異なり、自動車部品のHS
コードに分類される事になりました。
その根拠としましては自動車の車体に恒久的に組み込まれドアトリムの一部
を構成するという点にあると考えられます。
サンシェードは紡織用繊維の製品であるという理由のみで繊維製品のHS
コードに分類されるわけではないという事が分かります。
諸外国税関によるHSコード判例
ドイツ税関判例: Sunblind
登録番号 DE22021/14-1
税関 ドイツ
処理年月日 2015-01-21
一般的品名 Sunblind
HSコード 6303.12(分類当時のHSバージョン)
自動車用サンシェードとして使用される品目(高さ 45 cm 幅 50 cm 厚さ 0.3 mm)
当該品目はカーテンに分類されています。
フランス税関判例: CURTAINS FOR MOTOR VEHICLES
登録番号 FR-PRO-2007-000391-02
税関 フランス
処理年月日 2008-09-25
一般的品名 CURTAINS FOR MOTOR VEHICLES
HSコード:6303.12(分類当時のHSバージョン)
画像は収納した状態ですが、広げると高さ74CMになります。
こちらもカーテンに分類されました。
ドイツ税関判例: Sun protection
登録番号 DEB/775/08-1
税関 ドイツ
処理年月日 2008-04-07
一般的品名 Sun protection
HSコード 8708.29(分類当時のHSバージョン)
当該品目は自動車用のポリエステル製サンシェード(38 x 65 cm)と
なりますが、リアサイドウィンドウサイズに適合するように設計されている
という事で自動車用部品のHSコードに分類されました。
スペイン税関判例: Sunshade
登録番号 ES-2013-000327-0127/13
税関 スペイン
処理年月日 2013-05-17
一般的品名 Sunshade
HSコード 8708.99(分類当時のHSバージョン)
当該品目はアルミと紙製ボードからなるサンシェード(110CM X 60 CM)です。
こちらは繊維製品ではありませんのでそもそもカーテンへの分類を検討する
必要は無く、自動車用部品及び付属品として分類されました。
※車体の部品(HS:8708.29)ではなく、その他の自動車付属品(HS:8708.99)に分類。
HSコード分類最終見解
自動車用サンシェードの分類事例はこの他にも多数ありますが、材質分類で
あったり自動車部品への分類であったり非常に様々なケースがあります。
各国の税関による見解も様々で、意見が衝突する部分も多いと考えられる分野
かと考えますので慎重な検討が必要です。
関税削減の為の戦略的HSコード分類
EPA非締約国から”繊維”を調達し、
EPA締約国Aにて「サンシェード」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”繊維”と「サンシェード」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合、原料と製品のHSが離れていればいるほど有利になる為)
このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPA規則
に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。
一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。
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