「清浄機用フィルター」のHSコード分類は構造や材質によって、
その「材質そのものに該当するHSコード」や、
「洗浄機自体の部分品のHSコード」など複数の分類先があります。
用途は同じであるにも関わらず、複数のHSコードに分類されてしまうと、
分類する側に混乱を生じさせてしまうという問題やサプライチェーン上
でのEPAを適用した関税削減への悪影響が考えられます。
そこで、本記事では「清浄機用フィルター」のHSコード分類事例を
種類別に紹介し、様々な事例を通じて「清浄機用フィルター」分類先の
手がかりになる情報をお伝えします。
目次
日本税関によるHSコード判例
「清浄機用フィルター」のHS分類判例の一部を紹介します。
(※本記事中の「判例」とは裁判所の判決ではなく税関による「判断事例」を指します。)
日本税関判例:空気清浄機用脱臭フィルター
登録番号 110005031
税関 東京
処理年月日 2010-11-08
一般的品名 空気清浄機用脱臭フィルター
税番 8421.99(分類当時のHSバージョン)
貨物概要:
空気清浄機に使用する脱臭フィルター
製 法:多数の三角形の格子からなる形状で、個々の格子の中にろ過材を
充填し、両面を網状シートで覆って四方に枠を取り付けたもの
材 質:格子及び枠-紙 網状シート-ポリプロピレン ろ過材-粒状活性炭
サイズ:縦36cm×横28cm×厚さ1.5cm
用 途:空気清浄機の交換用脱臭フィルター
包 装:1個ずつ小売用カートンに入れたものを30個まとめて1カートン
に入れて輸入する。
分類理由:
本品は、板紙製の枠が取付けられた多数の格子からなる物品であり、各格子
の中には粒状活性炭を充填し、両面はポリプロピレン製の網状シートからな
るもので、空気清浄機の交換用脱臭フィルターとして使用されるものである。
本品は、そのまま空気清浄機に取付けられるように製造されたフィルターで
あり、単なるろ過材とは認められないことから、構成する材料により該当す
る項には分類されない。 したがって、本品は、関税率表第16部注2(a)
、同表第84.21項及び同表解説第84.21項の規定により、空気清浄
機の部分品として、上記のとおり分類する。
出典:税関事前教示事例を一部加工して作成
見解:
上記事例を見ますとそのまま空気清浄機に取付けられるように製造されたフ
ィルターである事を根拠に「清浄機の部分品」に分類されているようです。
そのため、そのまま清浄機に取り付けられないフィルターの場合は部分品
としてではなく「材質そのものに該当するHSコード」に分類される可能性が
高くなると考えます。
諸外国税関によるHSコード判例
オランダ税関判例: 空気清浄機用フィルター
登録番号 NLRTD-2006-002851
税関 オランダ
処理年月日 2006-08-30
一般的品名 WITH FILTER,PAPERBOARD,OF SYNTHETIC FIBRE,OF POLYESTER,AIR,INFANT USE,
HSコード 8421.99(分類当時のHSバージョン)
防湿性を保つことも可能なビル用の空気清浄機用フィルター
不織布、ポリエステル製 (28.89 cmx59, 37cmx4, 45cm)
上記フィルターもそのまま空気清浄機に取付けられるように製造されたフ
ィルターである事を根拠に「清浄機の部分品」に分類されているようです。
ドイツ税関判例: 車用ギアオイルフィルター
登録番号 DE20262 / 16-1
税関 ドイツ
処理年月日 2017-5-8
一般的品名 車用ギアオイルフィルター
HSコード 5911.90(分類当時のHSバージョン)
本事例の品目は液体のろ過に使用する目的ではありますが、59類の注7の(b)
の定義「技術的用途に供する種類の紡織用繊維製品」に従いHSコード5911.90
に分類されました。
オランダ税関判例: 浄化フィルター
登録番号 NLRTD-2008-000291
税関 オランダ
処理年月日 2008-05-07
一般的品名 FILTERS FOR CLARIFYING
税番 5911.90(分類当時のHSバージョン)
本事例の品目は浄化装置用に使用するフィルターですが、59類の注7の(b)
の定義「技術的用途に供する種類の紡織用繊維製品」に従いHSコード
5911.90に分類されました。
HSコード分類最終見解
各種「清浄機用フィルター」「ろ過フィルター」の事例を確認すると
各フィルターがどれだけ該当機器に対する適合性があるかによって
HSコードの分類先が変わる事がわかります。
但し、この適合性という基準は各国によって異なる事もありますので
注意が必要です。
また、繊維製品の場合は59類の注7に該当するものかどうかをよく確認
する必要があります。
※本記事による各国の品目分類事例は参考のためのものであり、
一切の法的効果や税関の判断を拘束するものではありません。
関税削減の為の戦略的HSコード分類
EPA非締約国から”フィルター”を調達し、
EPA締約国Aにて「清浄機」を完成させ、
EPA締約国Bに輸出する場合は”フィルター”と「清浄機」のHSコードの
分類先によって関税削減の対象になるかどうかが決まります。
(※CTCの場合)
このようにしてEPA締約国である輸出先との間で締結しているEPAの規
則に沿って製造工程を検討し、かつ輸入国の税関がそれぞれの部分品と
最終製品のHSコード分類先をどう判断するか、交渉の余地はあるのか等
を考慮する事により、効率的な関税削減が実現できます。
一つの国の判断に縛られる事なく、世界の税関の判断事例を広く
把握する事がEPAを適用した関税削減に重要な考え方になります。
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